鳩の首の色いきなり変わりすぎ問題

 鳩が好き。

 衛生的なことを考えると触ったりはしたくないんだけど、なんとなく好き。でっかいオカリナみたいなフォルムとか、首をクッ、クッ、てやる歩き方とか、よく見ると目が血走ってて怖いとか、なんとものんびりしてる鳴き方とか。
 すき、なんだけど、私には昔から鳩についてズーーッと気になっている問題がある。

 そう、それは「鳩(ドバト)の首の色いきなり変わりすぎ問題」である。あいつの胸毛は変なのだ。

 まず大前提として我々が街中で見る鳩にはだいたい二種類いる。

 全体として地味で茶色っぽく、ギザギザっぽい模様の入ってるキジバト。(ででっぽーって鳴くやつ)

 基本的な体色がグレーで首のところがキラキラしているドバト(カワラバト)。

 実はドバトといいつつドバト(カワラバト)の方が外来種だという。入って来たのは物凄く古いので最近の「外来種」のイメージとは違うかもしれんけど。

 私が気になっているのはグレーのドバトの方。彼らの首毛~胸毛の辺りの色である。よくみるとキラキラのラメラメなのだ。しかもこのキラキラのラメラメ、緑&ピンクっぽい紫という派手派手カラーであり、見る角度によって周りの体毛と同じ色に見えたり、胸毛ゾーン全体が紫に見えたり、緑に切り替わったりする。さながら2色ミラーボールだ。

 この世にキラキラのラメラメの生き物は案外いっぱいいるし、そこらへんにも結構いる。例えばニホントカゲのアカチャンのしっぽ。前に住宅街の道路で発見したけれど、見事なメタリックブルーの尻尾をしている。それからトンボ。名前はなんていうのか知らないけれど、奈良県の田舎にいったときにメタリックカラーのボールペンみたいな青緑の体のトンボを見たことがある。

 しかし、鳩のキラキラのラメラメは毛なのだ。なんとなくツヤツヤしてて然るべき爬虫類のウロコとか、虫の体表とかとは、質感が違う。ああいうモファ…とした毛でもキラキラのラメラメってできるのだろうか? しかも、鳩のキラキラのラメラメは色の切り替わりがなんだか「変」なのだ。個人の感覚的な物なのかもしれないが、プリズムとかでも青のお隣は緑、緑のお隣は…みたいに、似た色に切り替わっていくのあるし、角度で見え方が違うのであれば隣接した色に変わっていくのが普通、みたいな先入観があって、緑⇔紫、はその先入観からするとなんだか「変」。いくらなんでも遠いし、不自然に感じる。

 その謎を調べるべく私はインターネットの奥地へと分け入っていった……ら、別に奥地に行かなくても結構すぐに解った。鳩の胸毛の謎については、研究したり解説してくれたりしている人がいっぱいいるのだ。サンキューインターネット&世界の叡智&それをわかりやすく教えてくれる心ある人たち。

 太古の義務教育で習ったことをなんとなく思い出すと、色は光の波長であり、自然光のたくさんのうちどの色の波長の光を反射するかによって見える色が決まる、というようなことだった気がする(うろ覚え)。が、世には「構造色」というものがあり、物質の構造によりこの反射する光がお互いに干渉しあって、それにより見える色が変わる、つまり角度によって見える色が変わってきたり、金属のような光沢に見えたりするらしい。美しい熱帯魚や鮮やかなトカゲのしっぽ、モルフォ蝶の羽、CDやDVDなどの記録媒体の裏っ側、孔雀の羽からキラキラのサンマまで、みなこの「構造色」により美しい色合いを生み出しているのだ。すごい~~

 でも待って、鳩の胸毛のキラキラのラメラメが角度によって見える色合いが変わる問題については、これにて解決したけれど、一つ疑問が残っている。緑⇔紫の色合いの切り替えが「変」というか「唐突」だという問題だ。やっぱりあいつの胸毛は変なのだ。

 これについてもインターネットを検索したらあっさり答えが出てきた。すばらしきインターネット&人類の英知&共有してくれる人。興味のある人は「鳩 構造色」で検索してみてください。

 ざっくりいうとあいつの胸毛が変なのは、あいつの胸毛の構造色と、人の色覚の感知能力が関係しているらしい。人間にとっての光の三原色はRGB(赤緑青)だ。あいつの胸毛はある波長においては赤と青の光を反射し、ある波長においては緑の光を反射する。つまり見ている側からすると赤+青(紫)から緑に急に色が「切り替わった」ように見える、ということらしい。

 なんというテクノロジー、あいつの胸毛はすごいのだ。

 ちなみに鳩の胸毛のことを調べていたら、

 錐体細胞の記事に当たったんだけど、我々の色覚は4→2→3という増減の経緯をたどって現在の3色覚に落ち着いたそうだ。初期の哺乳類は夜行性だったのでたくさんいらないから2に減ったが、昼間自然の中で木の実とかを取るのに赤緑の識別がついた方が生存に有利なので3つめの色覚、赤緑が復活したという。しかし人類は狩猟採集から離れた暮らしをし続けた結果、赤緑を識別する必要性が低くなったのではないか…とのこと。たしかに「色覚異常」の話をするとき、「赤と緑の識別ができない」人の話が圧倒的に多いような気がする。

 日常生活で「そういえば」って思うことが、意外と調べてみるとちゃんと科学的に解明されてることもあるんだなぁ~~~~ありがとうインターネット&世界の叡智&それを公開してくれる人。ありがとう気づきを与えてくれた鳩の胸毛。



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