電験3種 2021年度 理論 問9 共振

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コイルとコンデンサによる共振状態についての問題です。

(前提)共振とは?

共振とは、コイルLとコンデンサCの間で電荷が行ったり来たりをくりかえす現象です。

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⓵上側に正の電荷がたまっているコンデンサをコイルとつなぐと,
②コイルを通って上から下に電流が流れます。
③さらに電流が流れるとコンデンサにたまっていた正負の電荷が打ち消しあって0になります。
④⑤しかしコイルは電流を流し続けるので下側に正の電荷がたまってきます。
⑥下側に正の電荷がたまると,
⑦今度は下から上に電流が流れ,
⑧コンデンサの電荷は0になり,
⑨⑩コイルの力で上側に正の電荷がたまります。
この繰り返しにより,LとCの大きさに応じた周波数(共振周波数といいます,蛇足3参照)で電流が流れ続けます。

実際の回路には抵抗があるので徐々に電流は小さくなってしまいますが,共振周波数の交流電源をつなぐと,共振状態を維持することができます。

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電源のつなぎ方によって直列と並列がありますが,共振周波数はLとCで決まるのでどちらも同じです。
共振状態のとき外部からはLとCを無視することができます(蛇足参照)。直列回路で無視するということは導線で置き換えること,並列回路で無視するとは取り外してなにもつながないということです。
電源とLとCだけだとショートしたような状態になったりして具合が悪いので,抵抗Rもつないだりします。

(a) (b)

共振では、LとCの間で電荷が行ったり来たりしているので、LにもCにも電流が流れています。電荷が行ったり来たりということはLに流れる電流も変化しているということなので、Lの端子間には電流の変化に応じた電圧が発生します。Cに電荷がたまったときはCの端子間に電圧が発生します。したがって、(a) (b)とも誤りです。

(c)

LとCが共振しているとき、外部からは無視することができます。

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したがって、どちらも交流電圧源とRのみがつながった回路と同じと考えることができ、(c)は正しいです。よって答えは(1)です。

(蛇足1)共振時のリアクタンス

LとCが共振しているとき外部から見ると無視できるということを確認してみましょう。

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インダクタンスL[H]のコイルに,電圧V[V],角周波数ω[rad/s]の電源をつなぐと,電圧よりπ/2[rad](90°)遅れた電流が流れ,電流の大きさIは,
 I=V/ωL
で表せます。この式はオームの法則と同様であり,オームの法則の抵抗にあたるωLをコイルのリアクタンスといいます。ωLの単位は抵抗と同じくΩです。

一方,静電容量C[F]のコンデンサに,電圧V[V],角周波数ω[rad/s]の電源をつなぐと,電圧よりπ/2[rad](90°)進んだ電流が流れ,電流の大きさIは,
 I=V /(1/ωC)
で表せます。コンデンサのリアクタンスは-1/ωC [Ω]となります。なお,リアクタンスのマイナスは,電流が電圧に対して進むということを表します。

共振が起こるのは,コイルによって電流を遅らせるリアクタンスの大きさとコンデンサによって電流を進ませるリアクタンスの大きさが等しいときです。式でいうと,
 ωL=1/ωC……①
です。

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コイルとコンデンサを直列につないだ時の合成リアクタンスは,抵抗の直列接続と同様に考えて,
 ωL-1/ωC
ωLに⓵を代入して,
 1/ωC-1/ωC=0
より,合成リアクタンスは0Ωとなり,ただの導線がつながっているのと同じになります。

コイルとコンデンサを並列につないだ時は,抵抗の並列接続と同様に考え,合成リアクタンスをXとすると,
 1/X=1/ωL+1/(-1/ωC)= 1/ωL-ωC
ωLに⓵を代入して,
 1/X=1/(1/ωC)-ωC=ωC-ωC=0
両辺を逆数にして,
 X=1/0=∞
となり,合成リアクタンスは∞Ω,すなわち電流は流れず,回路がつながっていないのと同じになります。

(蛇足2)抵抗とリアクタンス

(蛇足1)では,コイルやコンデンサのリアクタンスを抵抗と同様に扱いました。コイルとコンデンサだけの回路だとこれでもいいのですが,抵抗も入った時はどうしたらいいでしょうか?
リアクタンス1Ωのコイルと,抵抗1Ωの抵抗が違う性質を持つことは言うまでもないと思います。そこで,抵抗とリアクタンスを区別しつつまとめて扱うため,抵抗を実部,リアクタンスを虚部とした複素数で表すことにします。
つまり1Ωの抵抗とリアクタンス1Ωのコイルの直列回路であれば1+1×j [Ω],2オームの抵抗とリアクタンス3オームのコンデンサの直列回路であれば2-3×j [Ω]という具合です(虚数単位は数学ではiを使いますが,電気では電流と紛らわしいのでjを使います)
このようにして抵抗(レジスタンスともいいます)とリアクタンスを合わせたものをインピーダンスといいます。インピーダンスが複素数であることを強調して複素インピーダンスともいいます。

(蛇足3)共振周波数

LとCで決まる共振周波数は,何Hzでしょうか?
「共振が起こるのは,コイルによって電流を遅らせるリアクタンスの大きさとコンデンサによって電流を進ませるリアクタンスの大きさが等しいとき」という条件から求めてみます。式でいうと(蛇足1)⓵の
 ωL=1/ωC
です。LとCを使ってωを求める形に変形すると,
 ω^2=1/LC
 ω=√(1/LC)=1/√LC
したがって,共振しているときの角周波数ωは1/√LC [rad/s]であり,角周波数ω=2πfなので,
 f=ω/2π=(1/√LC) / 2π=1 / 2π√LC
というわけで,共振周波数f=1 / 2π√LC [Hz]となります。

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