2016年6月3日

アンデルセン「即興詩人」(森鴎外訳)より:

朱(あけ)の唇に触れよ,誰か汝の明日なお在(あ)るを知らん.恋せよ,汝の心のなお若く,汝の血のなお熱き間に.白髮は死の花にして,その咲くや心の火は消え,血は氷とならんとす.来たれ、かの軽舸(けいか)の中に.二人はその蓋(おお)いの下に隠れて,窓を塞(ふさ)ぎ戸を閉じ,人の来たり覗(うかが)うことを許さざらん.少女(おとめ)よ,人は二人の恋の幸を覗わざるべし.二人は波の上に漂い,波は相推(あいお)し相就(あいつ)き,二人もまた相推し相就くことその波の如くならん.恋せよ,汝の心のなお若く,汝の血のなお熱き間に.汝の幸を知るものは,ただ不言の夜あるのみ,ただ起伏の波あるのみ.老は至らんとす,氷と雪ともて汝の心汝の血を殺さんために.

ゴンドラの唄 - YouTube


黒澤明監督の「生きる」は名作でした.

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