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統合政府の利払い負担

 昨日の金利上限限界に関する説明は、民間企業への悪影響の観点からでした。
今日は、別方向からの視点として、政府や民間金融機関の視点に軽く触れておきます。

今から5年前の記事ですが・・・
国債を無制限に買い入れていった先の予測記事を紹介しておきます。

記事の中でも触れられていますが、金融緩和による低金利政策は、出口戦略が繊細になります。

なぜなら、金利上昇局面に入ると国家予算における利払い負担の増加が大きくなってしまい、これを賄うために大増税を必要としてしまうからです。
(もちろん、日銀の金利収入が政府へ還元される分だけ相殺はされます)
他にも、しわ寄せとして民間金融機関にもダメージが及ぶことになります。
こうなると貸し渋りや貸しはがしが発生しやすくなりますので、多くの民間企業が倒産の憂き目に遭うことでしょう。

以上のことから、国も金融機関も企業も今の低金利でないと存続が厳しいのです。

これを解決するには・・・

経済成長をし好景気な状態で利上げする。

という方法しかないわけです。

ここ最近の円安は、企業の国内回帰、海外企業からの投資、海外観光客の誘致に最適です。

この場面では、

円安を利用して好景気を目指す。

のが、日本にとって理想的なプランになるわけです。

今必要なのは 国内総需要の喚起です。
となると、打ち手としては、 財政出動 と 大型減税 です。
そして、企業に対し設備投資を促進させていくことです。

アベノミクスが失敗したのは、黒田バズーカを度重なる消費増税で帳消しにしてきたことと、成長投資や国土強靭化投資に大胆な財政出動をしてこなかったからです。

もし、安倍元首相が財務省のプライマリーバランス信仰に押し切られることが無ければ・・・
不世出の大宰相として名を遺したかもしれませんね。

もちろん、現状の経済構造上、円安は痛みの大きなものとなります。

でも、今は構造改革へ向けて絶好の追い風でして、米国が景気後退から金利引き下げに動く前に着手しておくべき時期です。

メディアによる円安苦境論は、ここ1年程度の目先の苦しみです。
この圧力に負け、好景気ではないのに金利上昇に舵を切り出したなら、日本経済は破局的な状況に転げ落ちます。

でも世論は、またもメディアに踊らされていくのでしょう。
かつての小泉旋風の時と同じように。
今回もそうなるんだろうなあ、とため息をつきながら、

それでも・・・

書き綴っておかないといけないんだろうなあと思い、記述しておきます。

ハッキリしているのは、現在の景気状態で金利を上げれば、日本経済がガタガタになってしまうということです。

よくゾンビ企業を退場させて~という意見を聞きますが、ゾンビ企業は最低でも16万社はあります。(帝国データバンクが把握している数のみでは)
1社平均5名の雇用として、80万人の雇用が吹っ飛ぶわけです。

ちなみに、帝国データバンクの定義だと

ICR=(営業利益+受取利息+受取配当金)÷支払利息・割引料
3年以上にわたってICRが1倍未満、かつ設立10年以上

こうなります。
出典は、

なお、帝国データバンクに決算データを提供していない企業は多数ありますので、実数は、もっと多いでしょう。
(業績が悪いほど、隠したがると思われるので・・・)

日本の中小企業数360万社中、11.3%がゾンビ企業だとすると40万社強。
200万人もの雇用が消滅する計算です。

現状の求人数が月250万人 求職者数が200万人。
再就職が決定するのが、月10万人。
ここに求職者数が200万人プラスされることになりますので、有効求人倍率が、1.25から0.63へ急降下することになります。

また、月間で10万人ぐらいの転職が決まるという統計数字が出ていますので、上記のゾンビ失業組が転職完了するまで20カ月はかかる計算です。
通常の転職組も含めると失業率は跳ね上がりますので、現在の売り手市場から買い手市場になるでしょう。
そうなると、賃金の上昇は厳しくなります。

もう一つ懸念はあります。
上記の帝国データバンクにおける計算式は、単年度の数字です。

単純に営業利益が支払利息を上回ればよいだけになると、経営者としては、相当に甘い数値設定だと受け止められます。
この水準で3年以上も不合格になるということは、たしかに経営上の問題が大きいといえます。

また、この計算式では債務超過企業でもゾンビにならない企業が出てきます。
過去に大きな赤字が蓄積していたとしても、直近3年の営業利益が支払利息を上回ってしまえば、ゾンビ判定を回避できるわけです。

この債務超過企業数は、中小企業庁の統計で約33%

中小企業360万社の1/3。
実に120万社となります。
ゾンビ企業との重複がある場合と無い場合があるので、何とも言えませんが、完全重複として600万人、重複していない場合は800万人の雇用が失われることになります。

正直なところ・・・
債務超過&ゾンビ企業を切り捨てたら、日本経済は大崩壊するしかないです。

統合政府(政府+日銀)にしても、金利上昇でダメージを受けますし、民間企業も相当なダメージを受けます。
昨日の説明で株式市場のダメージをお話しましたが、それだけでは済まないんですね。

これらを解決するには、好景気にしていくしかないわけです。

円安は現在の経済構造では問題ですが、円安に適応出来るように政府主導で取り組み、好景気を生み出す。
債務整理を進めつつ、金利を引き上げていく。
様々な事をしていかないと収拾がつかない。
それぐらい日本の状況は悪いです。

金利を引き上げれば円高方向に振れると思いますが、その後の大増税局面、株価下落局面、倒産企業増加局面をどう処置していくか?

円高で輸入負担は減るものの、それは一過性です。
日本経済が棄損されれば金利を上げても円安に向かいます。

金利を上げると、稼ぐ力が減り、大増税になり、しかも円安は是正されない。

マスコミの扇動(円安悪玉論)がいかに危険な未来へ誘導しているか?

冷静に考えれば、多くの方が気づくと願っております。

しがないオッサンにサポートが頂けるとは、思ってはおりませんが、万が一、サポートして頂くようなことがあれば、研究用書籍の購入費に充当させて頂きます。