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【WRC2023年シーズンレビュー🚗💨】

1月のモンテカルロから始まり、11ヶ月に及んだWRC 2023年シーズン。
長い1年は本当に様々なドラマがありました。そんな今シーズンを少し振り返っていきたいと思います。


WRC

まずはランキングを見てみましょう。

1 : カッレ・ロバンペラ🇫🇮(TGR) 250pt
2 : エルフィン・エヴァンス🇬🇧(TGR) 216pt
3 : ティエリー・ヌービル🇧🇪(ヒョンデ) 189pt
4 : オィット・タナック🇪🇪(Mスポーツフォード) 174pt
5 : セバスチャン・オジェ🇫🇷(TGR) 133pt (※8戦のみ)
6 : エサペカ・ラッピ🇫🇮(ヒョンデ) 113pt
7 : 勝田貴元🇯🇵(TGR) 101pt
8 : ダニエル・ソルド🇪🇸(ヒョンデ) 63pt (※7戦のみ)
9 : テーム・スニネン🇫🇮(ヒョンデ) 42pt (※6戦のみ)
12 : ピエール-ルイ・ルーベ🇫🇷(Mスポーツフォード) 29pt
14 : クレイグ・ブリーン🇮🇪(ヒョンデ) 19pt (※1戦のみ)
チャンピオン争いは第12戦セントラルヨーロピアンラリー🇪🇺で決しましたが今季はロバンペラとエヴァンスのチームメイト対決になりましたね。

ロバンペラは2022年が255ptだったのでポイント上はあまり変化がありませんが、違いはそのポイントの内訳。2022年は13戦6勝を挙げ速さを示しましたがデイリタイアによる後退が3戦ありました(※ラリージャパン以外はパワーステージでポイントは獲ってます)。反面今季は勝ち星は13戦3勝と去年より少ないものの、リタイアは第9戦ラリーフィンランド🇫🇮のみ。それ以外は全てのラリーで4位以上でフィニッシュし、8戦で表彰台に登りました。
反面、今季初優勝は第5戦ラリーポルトガル🇵🇹と少し遅めでしたね。それまでは開幕戦ラリーモンテカルロ🇲🇨で2位、第2~4戦は連続して4位と低調なシーズンの出だしでした。しかしその後はリタイアしたラリーフィンランド🇫🇮とラリーチリ🇨🇱以外は全て表彰台に登り、順調にポイントを重ねました。
速さだけでなく安定感を身につけたロバンペラ、来季は一息つくためにシェアシートでの参戦のためチャンピオンの可能性は低いですが、これから更に強いドライバーになっていきそうですね。

ランキング2位に入ったエヴァンスも非常にハイレベルな走りを披露してくれました。13戦中ノーポイントは完全リタイアを喫した第5戦ポルトガル🇵🇹のみ、セントラルヨーロピアンラリー🇪🇺もデイリタイアで後退しましたがパワーステージでステージウィンを飾り5ptを獲得。ロバンペラと同じく3勝を挙げており、2022年と比べてもかなり速さと安定感が改善されました。ポイントだけ見ているとチャンピオンを逃したのは紙一重だったようにも思えます。あと少し、何かが足りていればロバンペラに迫れたでしょうね。
来季ロバンペラが半分しか走らないことから、エヴァンスは筆頭チャンピオン候補だと思います。
来季も安定して、ステアリングにかじり付きそうなあのドライビングスタイルで速さを見せてほしいですね。

世界最速のセバスチャンの一角を担うセバスチャン・オジェ🇫🇷も今季の驚きの一つでした。シェアシートで8戦しか出走してないにも関わらず、勝ち星はロバンペラ、エヴァンスと並ぶ3勝。第4戦を終えるまではランキングトップに君臨してました。流石に5戦走ってないのでチャンピオンには届きませんが、今でも非常に高いレベルで走れることを証明してくれました。

ヌービル🇧🇪(ヒョンデ)やタナック🇪🇪(Mスポーツフォード)も、荒さはありながらも気迫溢れる力強い走りを披露してくれました。荒さが理由でデイリタイアやリタイア未遂のコースオフもいくつかありましたが、彼らの走りには鬼気迫る、ある意味殺気のようなものを感じ、時にはロバンペラをも凌ぐとんでもないタイムを刻んでくれることもありました。エヴァンスが来季のタイトル筆頭候補ではありますが、ヌービルやタナックも見逃せない存在ですね。

こういった強力な名前の中で、勝田貴元はなかなか思うような走りが出来ませんでした。どのラリー、どのステージを観てもヌービルやタナックに感じたような気迫があまり感じられず、オンボード映像を見てもなんだか「ヌルッ」とした感じがありました。ステージ後のインタビューでも「プッシュできない」「何が起きてるのか分からない」といった声が多く、あまりポジティブなコメントを聞くことは出来ませんでした。

そんな中で今までと明らかな違いを感じたのは最終戦ラリージャパンではないでしょうか?雨のSS2でとんでもないタイムを刻み勢いがありましたが残念ながらクラッシュ。しかしDay2午前を終えサービスで修復をしてからは怒涛の走りを披露。最終的に22ステージ中10ステージでステージウィンを飾るダントツの速さを見せてくれました。残念ながら表彰台に登ることは出来ませんでしたが今年一の走りだったのではないでしょうか。

また、ラリーフィンランド🇫🇮では堅実にステディドライビングで見事3位フィニッシュし今年も表彰台に登ることが出来ました。シーズンを通して表彰台が1度でもあるかないかは、次の契約の話をするときに非常に重要な要素の一つになるのではないかと思います。

また今年はグラベルラリーでのビッグジャンプ、通称「タカ・エアライン」が話題になりましたね。やはりジャンプは車体への負担も大きく、なるべくなら避けたいところですがパワーステージなど多少負担を掛けてもいいようなステージで勝田は非常に大きなジャンプを見せてくれました。飛距離も評価に入れてほしいところです笑

来季はロバンペラがオジェとのシェアシートでのエントリーになることから勝田も今季のシェアシートからフルエントリーへステップアップ。来季は勝田も優勝争い、欲を言うならチャンピオン争いに少しでも加わってきてほしいところですね。ラリージャパンのような走りを他でも出来れば、初優勝は十分にあり得ると思います。

一方で、今年は非常に悲しい出来事もありました。ヒョンデ所属のクレイグ・ブリーン🇮🇪が第4戦クロアチアラリー🇭🇷を前に行っていたテスト走行でクラッシュを喫し、それが原因で亡くなってしまいました。
第2戦ラリースウェーデン🇸🇪では2位に入り、一時は初優勝も見えてました。彼はステージ後のインタビューでいつも陽気に話し本当にラリーを心の底から楽しんでる無邪気な姿を見せてくれてました。その笑顔には誰もが惹きつけられたのではないでしょうか?僕もその1人でした。

ブリーンは亡くなりましたが、先日ヒョンデ、FIA、アイルランドモータースポーツ協会などが協力し、若手育成を主な目的として「クレイグ・ブリーン財団」が設立されました。

彼の名前が今後もこのような形でモータースポーツに残るのは非常に喜ばしい話ですし、ここから次世代のラリーストがどんどん生まれてきてほしいですね。
Pray for you Craig, Rally In Peace.

WRC2

続いてWRC2クラスのランキングを見てみましょう

1 : アンドレアス・ミケルセン🇳🇴(Toksport / シュコダ) 134pt
2 : ガス・グリーンスミス🇬🇧(Toksport / シュコダ) 111pt
3 : ヨハン・ロッセル🇫🇷(PH Sport / シトロエン) 104pt
4 : ニコライ・グリアジン🇷🇺(Toksport / シュコダ) 96pt
5 : カエタン・カエタノビッチ🇵🇱(シュコダ) 95pt
6 : オリバー・ソルベルグ🇸🇪(シュコダ) 91pt
7 : サミ・パヤリ🇫🇮(Toksport / シュコダ) 86pt
8 : アドリアン・フルモー🇫🇷(Mスポーツフォード) 67pt
9 : エミル・リンドホルム🇫🇮(Toksport / シュコダ➡️ヒョンデ) 62pt
10 : ミコ・マクジッキ🇵🇱(シュコダ) 41pt

WRC2は全13戦中7戦に登録でき、6戦の有効ポイント制で行われるためタイトル争いが少し複雑。どの自分の得意な路面やラリーでの参加を優先する、あえてエントリーの少ないラリーを狙って上位フィニッシュでポイント獲得を目指す、どのイベントで参戦登録をするのかは考えものです。

その中で今季タイトルを奪ったのはミケルセン🇳🇴。今季初戦は第5戦ラリーポルトガル🇵🇹と遅めでしたが、7戦中4戦で優勝し圧倒。
しかし2位グリーンスミス🇬🇧も2勝、2位2回と食らいつきました。

シュコダ・ファビア勢がシリーズを席巻する中、シトロエンを駆るロッセル🇫🇷も健闘したのではないでしょうか。ロッセルも2勝を挙げ、完全リタイアを喫したセントラルヨーロピアンラリー🇪🇺以外は全て4位以上でフィニッシュ。見事な走りだったと思います。

グリーンスミス、ロッセルと同じく2勝を挙げながらも6位に沈んでしまったのはWRC界の人気者オリバー・ソルベルグ🇸🇪。父親の血を引いたのかラリー界きってのエンターテイナー。ラリーポルトガルではSSSフィニッシュ後にファンの前でドーナツターンをしたところ競技規則違反となりなんとタイムペナルティ。そこから怒涛の追い上げで2位まで挽回しましたが、最後は1.2秒届かず優勝を逃してしまいました。大人しくしてれば余裕の優勝だったものを…(笑)。ソルベルグはそれ以上に3戦ノーポイントとなったのがチャンピオン争いにとって痛かったですね。速さはあるだけに、安定感さえ身につければ大化けするドライバーの1人だと思います。

優勝はないものの常に上位に名を連ね我々日本人を沸かせたのは4位に入ったグリアジン🇷🇺。車体には「藤原とうふ店(自家用)」のデカールを貼り、日本愛を見せてくれました。そんなグリアジンは4度表彰台に登り、ノーポイントは僅か1戦のみ。非常に安定感の高い走りを見せてくれました。

まとめ

改めてこうやってシーズンを見直していると、本当にドラマの多い1年だったなと感じます。
僕自身、実はラリーを見始めたのはこの2年の話で、WRCを年間通して観たのは今年が初めてでした。全SSを余すことなく観たのですが、ラリーの魅力は本当に様々。
ドライバーたちの走りもそうですが、コ・ドライバーのサポート、メカニックやチームスタッフのサポート、妖精さんたちのサポート、映像を通して見る世界中の様々な景色、SNSで上がってくる迫力のある写真。F1やMotoGPのようなサーキットレースでは観られないような世界がそこには広がっています。少し前までは本当に興味のなかったラリー、今ではすっかり虜になってしまいました。

2024年シーズンは1月末の恒例ラリー・モンテカルロ🇲🇨から開幕。来年は今年とはまた異なるカレンダーとなり、本当に開幕が待ち遠しいです。
2023年、WRCを楽しまれた皆様、お疲れ様でした。来年も楽しんでいきましょう!


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