マガジンのカバー画像

アーヴィングvsリップシュタット裁判資料

21
デヴィッド・アーヴィングvsデボラ・E・リップシュタット裁判資料の翻訳集です。
運営しているクリエイター

#ヒトラー

アーヴィングvsリップシュタット裁判資料(20):ホロコーストとヒトラー(1)

ホロコースト否定の議論において、ヒトラーに関する議論はあまりないと言っていいかと思います。強いて言えば、否定派が一つのテーゼのようにして主張する「ヒトラーの命令書がない」がある程度です。他には過去にnoteで起こしてきたヒトラーに関する記事として、以下のものがあります。 ヒトラーに関する議論があまりないのは、一つはヒトラーの命令書が存在しないことは定説側も同意している事項であり、また、ホロコーストの否定論自体に関する議論は、ヒトラー以外の部分で、あまりにも多岐にわたるため、

アーヴィングvsリップシュタット裁判資料(21):ホロコーストとヒトラー(2)

前回: それでは2回目の翻訳です。 ▼翻訳開始▼ 6.ヒトラーと1937年末以降のユダヤ人迫害の急進化6.1 1937年末までに、拡大主義的な対外政策への移行と同時に、ユダヤ人迫害の新たな、より急進的な段階が始まった。ユダヤ人をドイツから追放するという目標が優先され、これは特に、さらなる差別、直接的暴力の行使、より大きな経済的圧力によって達成されることになった。 6.2 このより急進的な路線は、1937年の帝国党大会でヒトラーが行った強い反ユダヤ主義的演説によって実際

アーヴィングvsリップシュタット裁判資料(22):ホロコーストとヒトラー(3)

ロンゲリヒによる資料の翻訳紹介のラストです。ヴァンペルト報告書の翻訳は19個の記事となっていましたが、今回は3つで済んでホッとしています。 確かに、ヒトラーがユダヤ人絶滅を命じた命令書は存在せず、明確に口頭で命令したことを示す確定的な証拠もありません。しかし、前回までのロンゲリヒ論文の内容を読めば、ヒトラーはユダヤ人問題の解決に強い関心を持ち続けていることがわかりますし、彼自身がたとえユダヤ人の絶滅を命令したわけではなくとも、少なくともそれに反対したことはあり得ないとは言い