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偉い人にはわからんのです

子どもの頃…筋緊張が強くて関節が硬く、リハビリで少し歩くだけで脚が痛み、また長く歩くと疲れてしまう。

というのがとても嫌でした。
平行棒に捕まったり、腕で杖をついたりするのも、やはり疲れる上に、1歩踏み出すだけでもとてもしんどく…何より、少しでも集中を乱せば、即、転倒。
手で頭を庇う受け身も、時には間に合わないことがあります。
歩行が日常である人でも『転ぶ』あるいは『滑る』というのはとても怖いものでしょうが…私のように…歩行困難な身障者が、それでも歩こうとする場合、『滑る』『転ぶ』という確率がずっと高くなるわけです。
関節を無理やり動かす苦痛と転倒の恐怖…これは、体験している私にしかわからないものでありましょう。
ましてや、子どものころのことでしたから…怖くて痛いものは、大人の何倍も怖く、何倍も痛く感じるものです。
大人になった今ならば、同じように痛くて怖いことに直面しても…少なくとも、人前では極力、弱音を隠し、腹の括り方もそれなりに考えるでしょうが…
ただでさえリハビリが大嫌いだった私が一番嫌いだったのが、立位と歩行の練習でした。
それはもう、逃げたくて逃げたくて、仕方がなかったのでありました。
そんなわけで…ある時

『脚なんて飾りです!リハビリの先生にはそれがわからんのです!』
と…好きだったロボットアニメ『ガンダム』のセリフをもじって訴えてみたのです。
正面から痛いだの怖いだのと言ってみても仕方ないので、多少なりとも洒落に紛らわせて自分の気持ちを訴えたつもりでした。
私としては
「何言ってやがる笑」
という、リハビリの先生のソフトな反応を期待していたのですが…
時代はまだまだ…『これが医療だろうか?
科学だろうか?』と疑いたくなるような…
『努力至上主義』『患者根性論』が病院中に巣食っている時期でした。
確かに、硬くなった関節をほぐし、柔軟性を保つことは、歩行動作そのものが実用的でなかったとしても、全身の体力維持と健康維持には必要な事なのですが…
『科学的アプローチ』『医療的アプローチ』というなら…
『小児医療のメンタルケア』の観点から、
『和やかなコミュニケーション』
というのも、必要だったのではないでしょうか?
こうした、私のささやかな訴えは…
『何言ってやがる!真面目にやれ!』という一喝で、脆くも粉砕されてしまったのでした。

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