星空を指す道具
星空案内では「空にある星を指し示す」ということがしばしば必要になる. 自分の手をいっぱいに伸ばして, あの星が〜〜と言っても, 隣にいる人から見て私の指先にある星は, 私の見ている星にはならない.
それで, 道具を使わないで案内する場合には, 何か遠くの目標物や各人の手の大きさなどを使って, 「あそこにある鉄塔の真上, 鉄塔の先からこぶし3つくらい上の星」などと言って指し示すことになる. この説明だと, 要領の分かった観客には伝わるが, 子供たちには難しかったりする. できるなら直接指し示すことができればもっと簡単.
星空指示ビーム
いままで見てきた星空案内人の方々の説明では, 緑色の高出力レーザーポインターや, 比較的ビームの狭いLEDライト(懐中電灯)が使われていた. 細い光のビームが空中のチリで散乱されて光の筋が見えるので, それで星を指すのだ. どこを指しているのかよく分かるし, あまり見かけない光景なので観客にも「おーっ」と受けが良い.
レーザーポインターについては, 安全性の問題があって, もう推奨はできないと思っている. レーザーポインターで夜空を指し示す場合, 普通のプレゼンに使われる赤色の低出力のものでは, 空中にできる光の筋はとても暗く見えにくいので使い物にならない. そこで, 緑色レーザーの高出力のものが使われることになる. これだと細く鋭いビームでひとつひとつの星を指し示すことができる. ところが, そういうものは車のドライバーや航空機のパイロットへの妨害行為に使われた事件もあり, 国内では(自主規制で?)販売されなくなった. 輸入品を買えなくはないが, 誤って人の目に照射されたりするととても危険だ.
一方, LEDライト(懐中電灯)で指向性の強いものを使えば, レーザーのような危険はなく, 誤って事件になるようなこともない. しかし, 狭いビームといっても角度は10度くらいはあって, ひとつの星を指し示すのは無理がある. だいたいどこらへんを指しているのかは分かるが, 正確にどの星のことを言っているのかは伝わってない, という状況になってしまう.
そこで, これだ!↓ 通称「ライト・セイバー」(笑)
LEDライトの問題点は, 先端のレンズを何とかすれば解決できる. これは, 「PEETPEN L45」というLEDライトに, 3cm 6xファインダーの鏡筒と対物レンズ(ジャンク)をくっつけたモノ. 元々LEDライトについていた集光レンズは外してある. このLEDライトの先端は少し太く広がっていて, 外形32mmのファインダーの鏡筒がちょうど差し込めるくらい. エポキシ接着剤を塗って差し込むと, 簡単に固定できる. (白い鏡筒についているアルカスイス・プレートの切れ端は, 以前ファインダを雲台に取り付けるために使ってたもの, 取れないのでそのまま. 細いビームで何かを照らしておきたいときに固定するのにも使える.)
ファインダーの筒をライトの先端に差し込んで固定する時, 数十m先に投影されるLED光源の像(四角いチップの形が映る)が十分小さくなるように差し込み長さを調整するのだが, モノによってはファインダー鏡筒を切り詰める加工も必要になるかも.
たぶん焦点距離120mmくらいのアクロマート3cm対物レンズの集光はなかなか良い感じで, 拡がり1°以下の細いビームになった. ↓
レーザーほど細くはないが, ビームに適当な太さがあることで, 空中のチリや霧滴が照らされて光る範囲に太さができて視認しやすい. レーザーの危険を排除しつつ視認性と指向性は十分ということで, これはスグレモノと自負している. この方式, 近くの科学館の先生や星空案内人の先輩に見せたら採用されたみたい(笑).
星空指示棒
「ライト・セイバー」はとても良いのだが, 天体写真を撮ってる人がいたりする場所では, むやみに空に光の筋を向けるのは大ひんしゅく. そういうときのために, ずーっと控えめな灯りの「指示棒」も作ってみた. 手を伸ばすよりはずっと長い指し棒ということで, 1mくらいの長さで先端が光る棒である. 作りはライト・セイバーよりこっちの方がかなり凝っている.
100均のLEDライトのレンズに穴を空け, 光源の近くまでアルミパイプ(外形約7mm)を通す. そのパイプに6mm径のアクリル棒を挿し込んである. アルミパイプから突き出たアクリル棒の先端はサンドペーパーでくもりガラス状にして光を拡散させている. アクリル棒を光ファイバーとして使っている感じ. 光がオレンジ色なのは, LEDライトに差し込んだ側のアクリル棒の断面に色セロファンを入れているから.
これを使って星を指して話が通じるのは, すぐ傍らで話ができる3〜4人の観客の場合だろう. 天体写真の穴場みたいなところで星空ガイドをしたことは未だ無いので, この道具はまだ出番を迎えていないが, これを使ったガイドを聴く人はきっと, 星が多すぎて星座の形が分からない本当の満天の星に感激しながら, このオレンジ色の光の先の星を探すことだろう...と想像したりする(笑)
製品化とか?
「ライト・セーバー」は下手に普及すると「観測地での光害」になるんじゃないかという怖れがあるので, その注意は不可欠だと思うが, 普通のLEDライトを向けてもどの星を指しているのか伝わってない問題とか, 高出力のレーザーを使う危険に対するソリューションとしては最高かも.
「星空指示棒」もありそうで無いツールである. (普通のプレゼンならレーザーポインターで済むから) 観測地での光害を出さずに星空ガイドするには必須ツール?
星空案内人の市場はニッチ過ぎるかもしれないが, もしも製品化したい方いたらノウハウお伝えしますのでコメントまたはInstagram @hoshizora.moriyama へDMを.
【了】
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