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まつろわぬものたちよ

明日は節分。
(わざわざ言うまでもないかもですが、正確には春の節分ですね)

余談ですが、2月3日はぼくら夫婦の結婚記念日、だったりもします。

余談ついでに、来年2021年の節分は2月2日だそうで。
(節分は立春の次の日、その立春が暦によって日が前後するから)


さて、ぼくが初めてつくった歌『まつろわぬもの』。
前回書いたように、「ひっくり返す」をテーマにしています。

2015年12月20日に三井寺で開催された、プチアースデイしが2015。
京大の藤原辰史先生を囲んでのトークセッションがありました。
ぼくは司会進行役として参加させていただきました。

そのトークセッションの最後に、藤原先生が仰ったことが「ひっくり返す」ということでした。

  ぼくの理想は、〈ひっくり返す〉ことです。
  大学の中にある食堂、学食があるんですけど。
  いつの日か、〈大学付属食堂〉ではなくて、〈食堂付属大学〉という
  のができるんじゃないか。
  そう考えると、〈マーケット付属大学〉という形で、今ここは〈大学〉
  だったんじゃないか。

書き起こしてみると、こんな感じのお話でした。
ぼくはそれに呼応して、「大学の発祥といわれるボローニャではまさに〈ひっくり返ってる〉んですよね、最初」と。
(その辺は井上ひさしさんの『ボローニャ紀行』に詳しく書かれています)

その後、ぼくが喋ったことも書き起こしてみます。

  「何かが決定して、納得させられる」という形が今の流れ。
  (それに対して)「自分も相手も納得する」、それには〈隙間=なじま
  せる時間〉が必要で。
  お互いが納得して決定事項ができる、それが本当の民主主義なんだろう
  な、と思います。
  そういう意味で、こういうトークセッションにしても、これが日常に
  なって、これが政治になって、これが暮らしになっていけば。
  それがきっと、ぼくらが望む〈未来のヴィジョン〉につながっていく。

ざっくりまとめると、こんな感じのことを話しました。

トークセッション全体は1時間くらい、だったかな。
〈隙間〉や〈間〉、〈遊び〉などのキーワードが出て、とてもおもしろかったです。
もうひとつ補足すると、プチアースデイ2015のメインテーマが〈未来のヴィジョンを集めて〉でした。


『まつろわぬもの』という曲の歌詞は、このときのトークセッションで感じたことや考えたことが、きっかけやインスピレーションになっていて。
それともうひとつ、実は節分のことも大きく関係してるのです。

正確には、節分の〈鬼やらい〉に関すること。
節分の豆まきなど、邪氣を祓う行事のことです。

ぼくは昔から、〈妖怪〉に興味があって。
元々は怖いものが苦手で、だからこそ「知ってしまえば怖くないはず」という動機から、だったように思います。
でも結局、知ってみても怖いものは怖い、のですけど。

ただ、怖い怖いと思っていたものが、実はそうではなかった、ということもたくさん出てきました。

時の権力者にとって、敵対する勢力や目障りな存在は消してしまいたい。
けれど、それには〈大義〉が必要。

だから、悪さをするものは〈妖怪〉であり、それを討伐するのだ、と。

土蜘蛛はその代表的な例、「まつろわぬ(従わない)もの」。
(タイトルはここに由来します)

鬼もまた同様に、「まつろわぬもの」の代表格。
ちゃんと読んだことはないのですが、芥川龍之介の『桃太郎』は、まさに〈ひっくり返した〉話ではないでしょうか。

実際、桃太郎伝説のルーツといわれる「温羅伝説」を調べてみると、よく知られている勧善懲悪な物語とはだいぶ違うようです。
温羅(うら/おんら)は悪者ではなかった、としたら?

〈ひっくり返す〉と思っても、実は〈元に戻して〉いるだけかもしれない。


さて、もうひとつこじれているのが節分の〈鬼やらい〉話。

京都で節分行事と言えば、吉田神社の追儺(ついな)式。
ぼくは滋賀に移住して次の年、この追儺式(鬼やらい神事)を見に行きました。

吉田神社で鬼を追い払うのは「方相氏(ほうそうし)」。
矛と盾をもち、金色の4つ目の面をかぶっています。
鬼を〈追う側〉なので、鬼よりも強そうな出で立ちをしていて。

けれど、それが9世紀頃からは鬼と同一視され、方相氏は〈追われる側〉になってしまったんだそう。
(吉田神社では今も〈追う側〉です)

すごく皮肉な話、だけどこういうことって案外身近な人間関係でもあるような氣がして。

昨日の敵は今日の友、みたいなことですかね、違うかもだけど。

そんなことをどこまで盛り込めたかはわかりませんが。
あれこれ考えていたことが、〈ひっくり返す〉というワードに刺激されてできたのが『まつろわぬもの』です。


だいぶ長くなってしまいましたが、最後にもうひとつだけ。
冒頭の写真は節分ではなく、滋賀県の石山寺の青鬼まつりのもの。

石山寺屈指の学僧朗澄律師が死後に鬼となり、降魔招福を誓ったんだそう。
その遺徳を偲ぶお祭りが、毎年5月の第3日曜日に開催されています。
(写真は2016年5月15日)

青鬼うちわが無料配布されるのですが、何と青鬼が手渡してくれるのです。

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