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The musician to the musician vol.2 TAKASHI GOMI (T-BOLAN)

 皆さん、普段よく聴くお気に入りの音楽やミュージシャンがあると思いますが、ミュージシャン自身は一体どんな音楽を聴き、どんなプレイに憧れ、プロの音楽家への道に繋がっていったのか、興味ありませんか? このコーナーでは、新たなアーティストはもとより、過去にmusic freak magazineが取材した記事なども掘り起こしながら、ミュージシャン自身の音楽ルーツを紹介していきます♪
 第2回目は、1996年12月号で取材したT-BOLANのギタリスト・五味孝氏さんをピックアップ!  現在は、electlo 53としても活動する五味さん。このインタビューは約25年前のものになりますが、五味さんの音楽ルーツや音楽的嗜好など、今にも通づる興味深い内容になっていると思います!!

 ー 今日持ってきていただいたCDは、今気に入っているモノが多いんですか?

五味:新旧織り交ぜてって感じですね。

ー ここに並んでいる中で、五味さんがギターにハマっていくキッカケとなったCDは?

五味:この中だと、ジェフ・ベックですね。

ー これには、どんな逸話があるんですか?

五味:中1の頃だったと思うんですけど、ギターに詳しい奴がいて、「ジェフ・ベックっていうのはギターの神様なんだ」って聞かされたんですね。それでジェフ・ベックの『LIVE WIRE』を勧められて、聴いてみたらギターが喋っているように聴こえる曲があって、「これはやっぱり神様だ」と思って(笑)

ー 単純に驚いたっていう感じですか?

五味:そうそう。くだらないことなんですけど、当時はトーキング・モジュレーターっていうエフェクターの存在を知らないで、神様だと思い込んで聴きまくっていたアルバムなんです。しばらく本当にどうやって弾いているんだろうって。

ー 初めの頃はそういう勘違いってありますよね。

五味:やっぱり最初に神様だって聞かされていたのがいけなかったのかな(笑)

ー 神様だから何でもない出来るんだって。

五味:いや、何でも出来るんだっていうより、何でこんな音が出せるんだって。それでベックは好きになったんですけど、そんな単純なことですよね、好きになるって。

ー じゃあジェフ・ベックは結構コピーしたんじゃないですか?

五味:コピーしたのは「悲しみの恋人達」一曲だけで、それもだいぶ後になってからでした。普通はギタリストを好きになったらコピーするじゃないですか。でもしなかったんですよね。だからどこかに''神様''っていうのがあったんじゃないかな。なんか手を出しちゃいけないっていう・・。

ー ジェフ・ベックは五味さんにとって''聖域''って気持ちがあったんですかね?

五味:あったんじゃないかな。

ー 他のギタリストとはちょっと違う所にいるんですね。

五味:いるっていうより実際そうだと思いますしね。口で言うのは難しいけど、この人のフレーズって明らかにおかしいんですよ。なんか笑いがあるんですよね。

ー たとえば、フランク・ザッパなんか変じゃないですか。

五味:それとは違う。ザッパは意図的にそうしてるけど、ベックは意図的じゃないんですよ。ギターのことをよく分かってるんだろうけど、もしかしたら知らないのかなって思わせるような。そういう変さを感じる。そこが魅力ですね。

■『LIVE WIRE』/ JEFF BECK WITH THE JAN HAMMER GROUP
エリック・クラプトン、ジミー・ペイジと並びロック界の3大ギタリストと呼ばれるギタリスト。ヤードバーズでの活動に始まり、第一期ジェフ・ベック・グループ→第ニ期ジェフ・ベック・グループ→ベック・ボガード&アピスを経て、1975年ソロアルバム『BLOW BY BLOW』をリリース。このオール・インストゥルメンタルのギターアルバムが大ヒットし、以後『WIRED』、そしてこの『LIVE WIRE』(1977年)とロックフュージョン界を股にかけて活躍。その様々なギター奏法やプレイからギタリストなら一度は知っておくべき存在。特に1970年中期〜後期が最も注目すべきプレイをしていたので、ジェフ・ベック初心者はその時代の演奏がおすすめ。

ー メン・アット・ワークが入ってたのは意外でした。これはどういう理由で?

五味:管楽器が効果的に使われていたのと、不思議なメロディ。なんだこれって感じるんだけど、でも頭に残ってしまうところですね。

ー 管楽器が好きなんですか?

五味:サックスって好きなんですよ。魅力を感じるっていうか。だからサックス・リードのバンドもやったことあるんです。

ー 本当ですか!それは意外な一面かもしれないですね。

五味:今まで一回も言ったことないんじゃないかな。かといってサックスのように弾こうとは思わないですけど。

ー そうなんですか。じゃむしろ五味さんのギター・スタイルのルーツという点では、このヴォーン・ブラザーズの方ですか?

五味:レイボーンは好きなギタリストなんだけど、俺は「ブルーズ好きだぜ」ってところまで行かないですからね。でもこのアルバムは違うんですよ。やっぱりナイル・ロジャースの力が大きいと思うです。ファンク的な要素も入ってるし。

ー 五味さんはブルージーなフレーズが得意なんじゃないかと思うんですけど、だからと言ってブルーズに心酔しているわけでもないんですか?

五味:全然そういうことではないです。コピーもしてないし。

ー これも意外でした。てっきりレイボーンあたりはかなりコピーをしてるんじゃないかと思ってました(笑)。でもブルーズに惹かれるところはあるんじゃないですか?

五味:ブルーズのスタイル自体そんなに変わらないじゃないですか。その中でみんな同じようなプレイしてるわけだけど、それでもその人らしさを感じるっていうか。この人はこれしかやらないとかね。

ー なるほど。逆にこのミーターズなんですけど、五味さんがミーターズを挙げた理由って分かる気がするんですけど。

五味:どうしてですか?

ー 別にフレーズの速弾きがスゴイとか、プレイにその人を感じるとかではなくて、ミーターズってバッキング・ギターがスゴイじゃないですか。単純なことを繰り返してるんだけど、すごくグルーブ感に溢れていると思うんですよ。

五味:もう、それに尽きます(笑)。あと、上手くないんですよ。そこがいい。

ー もしかしたら下手なんですか?

五味:(笑)。アート・ネヴィルは上手いけど、後の3人はね。ミストーンもいっぱい入ってるし。でもそれが妙にグルーブしていていいんですよね。年代的に一発録りだと思うから、それもしょうがないんでしょうけど、下手だなって感じ。でもいい意味で下手なんですよ。

ー 下手ウマって感じですか。

五味:そうですね。

■『BUSINESS AS USUAL』/ MEN AT WORK
オーストラリア出身のロックバンド。メン・アット・ワークの1stアルバム(1982年)。M-1「ノックは夜中に」と、M-3「DOWN UNDER」は英米でNo.1大ヒット。その後のオーストラリアン・ロック・ムーブメントの火付け役となる。開放的なサウンドにキャッチーなメロディライン、ユーモアたっぷりの歌詞と優れたポピュラーソングを作り上げたが、短命にも1986年には解散している。サックスやフルートのイントロなど管楽器の使用法が非常に巧みなバンドだった。
■『FAMILY STYKE』/ THE VAUGHAN BROTHERS
ナイル・ロジャースがプロデュースしたボーガン・ブラザーズ1990年の作は、シンプルなアメリカンロックサウンドが全編にわたって繰り広げられている。スティーヴィー・レイボーンの乾いたアメリカンギターサウンドはR&R、ブルーズ、カントリー、ファンクと、様々なサウンドのブレンドがもたらした独特のグルーブを持ち、スティーヴィーならではの存在感を放っている。
■『STRUTTIN'』/ THE METERS
R&B界では珍しい4人組のオール・インストゥルメンタルバンド。1987年度の作品。五味が指摘しているようにこのグループ、演奏がそれほど上手いわけでもないが、全編に漂うグルーブ・フィーリングが時代を象徴していて興味深い。

ー アンディー・サマーズも下手ウマですよね。

五味:ポリスが解散してからなんですけど、ビデオでスティングのライブにアンディー・サマーズが飛び入りするっていうのがあったんですよ。それでソロを弾いたんだけど、えっ?って感じだった(笑)。でもアンディー・サマーズは物凄くアイデアがあると思います。マジックコードを探してるっていうか、変な響きのコードを。

ー これはポリスのファーストですが、デビュー当時から好きだったんですか?

五味:最初はあまり興味なかったんですよ。「ドゥドゥドゥ・デ・ダダダ」の頃知ったんですけど、その時は良さが分からなかった。なんでこの人''チャーン''しかやらないのとか(笑)。でも後になって良さが分かったっていうか、バンドの中で一番好きなバンドなんです。別にギターが好きだとかじゃなくて、ポリスっていうバンドがいい。今ポリスのコピーバンドを本気でやってるんですけどね(笑)

ー 音数が少ないですよね。

五味:そう。必要以上の音は何も入ってないし、しかも入れたかったのに入れなかったんじゃなくて、最小限の音で完全に計算し尽くされてるんですよね。

ー 五味さんもアンディー・サマーズの感覚に近いと思うんですけど、そういうことを考えてるんですか?

五味:全然考えてないです。

ー (笑)。じゃむしろ勢いで弾く方ですか?

五味:そうですね。レコーディングでも家に持って帰って考えることがないから。スタジオで終わらせるから、考えるってことあまりないんですよね。

ー このダニエル・ラノワもアンディー・サマーズと感じは似てると思うんですが?

五味:そう。初めてこの人を知ったのは、ネビル・ブラザーズのセッション・ビデオがあって、ネヴィルの友達がセッションに来るという設定なんだけど、その中にダニエル・ラノワがいたんですよね。別に派手なことはしていないんだけど、彼がライブに出てた時に妙に存在感があったんです。

ー 今までの話を伺ったところ、五味さんはテクニックを重視したギタリストよりも、むしろ雰囲気のあるものに惹かれてると思うんですけど?

五味:今思うとそうですね。闇雲に練習している時はどうしてもテクニック的なものを求めがちだけど、今は違います。

■『OUTLANDOS D'AMOUR』/ THE POLICE
1970年代英国のパンクニューウェーブムーブメントの中からデビューした3人組。デビュー当時はレゲエを取り入れたパンク・バンドだと思われていたが、その自由な発想から生まれる高度な音楽性はジャンルを超えてポピュラリティーを獲得。1980年代初頭には世界的なポピュラーバンドとなる。1983年のアルバム『シンクロニシティ』以後、バンドとしての活動を停止。この1stアルバムはデビュー作にしてポリスの魅力が全て凝縮された傑作。
■『FOR THE BEAUTY OF WYNONA』/ DANIEL LANOIS
ダニエル・ラノワというギタリスト&ボーカリストの1993年度リリースのソロアルバム。1990年代のアメリカの匂いを発酵させながら、グランジでもなくただのギタリストのテクニック至上のアルバムではない歌物アルバムは、良い音楽とは何か?ということを考えさせるに十分な隠れた名盤と言える。セールスだけでは見えてこないアメリカのミュージックシーンの良心が垣間見える。

ー このSMAPのアルバムなんですけど・・・。

五味:これ聴きました? これはいいですよ。

ー 参加メンバーがスゴイですよね。

五味:昔から海外のミュージシャンとやるっていうのは、多かれ少なかれあったじゃないですか。TOTOのメンバーとやったりとか。でもここまで垣根を取り払うっていうのはなかったですよね。

ー これだけのメンバーを集めれば、自ずと完成度は高いと思いますけど。

五味:でもあんまりいい加減な感じじゃないんですよね。曲もいいし、それプラス演奏がいいから。サックスソロがマイケルブレッカーで…。

ー ベースがウィル・リー。

五味:ウィル・リー好きなんですよ。あと意外なのがワー・ワー・ワトソン。あとデビッド・Tウォーカーも入ってるし。それに、ハイラム・ブロックが「あっ、こいつ手を抜いてるな」っていうのがいいんですよね(笑)。

ー 単純にスゴイということで。まさかずっと聴いているわけじゃないですよね?

五味:ずっと聴いてます(笑)

ー なんだか五味さんがよく分からなくなってきました(笑)

■『SMAP 008 TACOMAX』/ SMAP
SMAPの8thアルバム。以前から音楽通の間で密かに囁かれていた「ジャニーズ系のアイドルの音はスゴイらしい」という噂を決定づける強力なアルバム。参加メンバーにスティーブ・ガットはいるわ、オマー・ハキムいるわ、マイケル・ブレッカーはいるわ、とにかく超ベリー・スペシャルなミュージシャンが惜しげもなくプレイを展開。メジャーのスゴさを極限まで追求すると素晴らしい作品が完成するというのもこれまた一つの事実。

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<INFORMATION>

◆映画「T-BOLAN THE MOVIE あの頃、みんなt-bolanを聴いていた そして 今も・・・ずっと」10月29日(金)より【バーチャルシネマ】で公開!

昨年上映された映画「T-BOLAN THE MOVIE あの頃、みんなT-BOLANを聴いていた そして 今も…ずっと」のバーチャルシネマでの公開が決定。

2014年公開のオリジナル版では、約1700万枚CDセールスを記録したT-BOLANの挫折、そして奇跡の復活をメンバー、著名人等のインタビューにより記録。バンドを核としたメンバー4人の繋がりと、T-BOLANの音楽を聴いていた人々を繋ぐそれぞれの思いが語られた。昨年公開の再上映版では、更なる秘蔵コンサート映像を加え、2014年以降に起きた出来事をヴォーカル森友嵐士が、新たに撮影されたインタビューで思いを語っている。
その再上映版を今回、イオンシネマ【バーチャルシネマ】での上映が決定!
新たな試みでの作品の広がりに大いに期待が寄せられる。

 ★「バーチャルシネマ」は、ユーザーがネット上のシネコンに入場し、そのスクリーンで鑑賞するという 新しい「体験」です。
チケット購入URL:https://www.aevc.aeoncinema.com/
詳細説明URL:https://www.aevc.aeoncinema.com/about

詳しくは T-BOLANオフィシャルHP. ▶ http://www.beinggiza.com/zain/t-bolan/

五味さんのTiwwerもチェックを!!



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