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【七転び八起きの六転び目④】
ラスベガスでは散々な結果を残したが、すぐにイタリア(パルマ大会)が控えていたから気持ちを切り替えた、切り替えるしかなかった。
毎年ラスベガスは3月、パルマは4月に大会が開催されるのだが、ラスベガスで優勝したチャンピオンがイタリアでは予選を通過できないこともある……そのくらいレベルに差があるという話だった。
まぁ、ラスベガスで最下位だった自分にとってみればハードルの高さはさして変わらないわけだが、どっちが高かろうとね、むしろ今は小石に躓いてんだから。
ラスベガス大会でタクちゃんはフリースタイル部門だけではなく、料理部門にもチャレンジしていて、それを観覧していたらだんだんと自分も出場してみたくなってきた。
今まではフリースタイル部門に集中したいってのもあって気になりつつもスルーしてきたけど、やっぱり実際この大会の花形は料理部門だからね。
その想いはイタリア大会に出場することでさらに強くなる。
初めてのイタリア大会、会場の雰囲気はラスベガスと全く違った。ラスベガスはエンターテイメント色の強いお祭り的な雰囲気なのに対して、イタリア大会はピザオタクたちが集い技術を競い合う感じ、どちらも集まってるのは陽気なビザ職人たちなんだけど、こうも違うものかと思うほどに。
自分の番が何番目だったかとか、どんな曲でパフォーマンスしたかとかも全く覚えていない。
気がついたら3枚の生地を持っていて、その1秒後には何も持っていなかった。
他の出場者たちのパフォーマンスを観ていて、このままじゃただ順位がついて良かったねで終わると感じたんだ、だから全く練習したこともない、その瞬間に思いついた技に挑戦してみた、ファイナルに進みたくて。初めてのイタリア大会で、事前に練習していたことを全て忘れて挑むとか本当に頭がおかしいとは思うけど、そうしないとファイナルに進める可能性はもともとゼロだったから仕方ない。
失笑の入り混じった拍手を全身に浴びたのは人生でもあれが初めてだったと思う。いや、小学校4年生の学芸会の『ごんぎつね』以来か、あれもあれで酷かったけど、まだほんの少しの優しさが混じっていた気がする。
3枚の生地を投げて全部キャッチできなくて何も持たずに立ち尽くしたフィニッシュなどきっと誰も見たことがなかったと思う。
もしかしたら誰かの記憶には残ったかもしれない。
結果は最下位だった。
ラスベガス大会最下位、パルマ大会最下位。世界2大選手権両方での最下位はおそらく史上初だと思う。誇る要素は全くないが。実際は棄権がひとりいたので下から2番目ではあったが、そこは胸を張って最下位と言いたい。
これがどん底、完璧な底辺だ。
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