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【ライブ配信②】

【ライブ配信①】

 ダラダラと音楽をかけながらピザアクロバットの練習風景を垂れ流して、水分補給ついでにリスナーと交流したりしてまた練習。ガチの練習をしてたから集中するとリスナーほったらかしなんてこともよくあった。
 「すごいですね!」とかってそんなコメントはちょっと嬉しかったし、「それなんですか?」ってコメントにはピザアクロバットの説明をしたりして。
 フォロワーが増えないとリスナーもなかなか増えない。だからどのくらいの期間だろう、1週間〜2週間ぐらいだったかな、その頃はリスナー数が表示されていて、そのカウンターの数字は常に0〜5人ぐらいが当たり前だった。たまに2桁になるとちょっと緊張するみたいな、そんな日々。
 喋るだけの配信だったり歌を歌う配信だったりなら、そのあたりで心折れて挫折していたと思う。良い意味でやる気がなかったのが幸い。どこに向かってるのか何をしているのか分からなさすぎて意気込みとか全くなかったからね、でもやっぱりもちろん寂しさはあったけど。

 そしてあれはそうだな、少しだけ毎回見に来てくれるリスナーが増えてきて、リスナーとの交流にも慣れ、瞬間視聴数がやっと2桁に届いて喜んでたぐらいの頃。
 『ラッキー袋』って特殊なギフトがあって、確かそんな名前だったと思う。それをリスナーがライバー(配信者)に投げると全リスナーに通知が飛ぶってシステム。画面上にも『ラッキー袋がなげられました』って通知が流れるから、それをタップすると他の人たちも配信者の部屋に飛び、早い者勝ちで賞金をゲットするイベントに参加できるってやつ。サイズも小中大ってあって大だと1万ポイントとかゲット出来るんじゃなかったかな。
 ある日ある時あるタイミングで、ライブ配信に誘ってくれた先輩が応援のためか悪ふざけか予算が余っていたのか、その全てか、小の『ラッキー袋』を連投した、しやがった。もちろん事前の打ち合わせとか何もなくだ。おかげでどうなったって?急に1000人だよ、日本人と台湾人が入り乱れて1000人もいっきに配信に集まってきたもんだから、過疎地は大パニックであれは起きて見る悪夢だった。
 コメント欄が滝みたいになってるのに気がついた瞬間、一度唖然としてから、理解して慌てたよね。スマホの前で立ち尽くすって経験は後にも先にもあの時だけだった。そしたら誰かの『ピザ回せ!』ってコメントが見えて、ロックンロールな気分でどうにでもなれと、ありがとうは放棄して大会本番さながらのテンションでパフォーマンスをぶちかました。しかも1時間ぐらい。
 それが思いの外、台湾人に刺さった。言葉が通じない分、分かりやすかったんだろうね。やべー日本人いるぞって。フォロワーも一気に増えたし。注目ランキングも上位に表示されてしばらくはずっと視聴者が何百人って状態。
 配信を終了して、なんだかすごい1日だったなって汗だくになってどっと疲れたけど、まさかそれから連日それがつづくとはその時はまだ想像してもいなかった。
 あのハゲめ!

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