Open Seminar Series''DRDRDR'' 01 振り返りレポート

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THEME
 地球、気候、サステナビリティ
GUEST
 海法圭さん ___建築家
 川崎和也さん___ファッションデザイナー
YOUTUBE
 https://youtu.be/HOxXnpJKgak
DATE
 2022.06.17 18:00~20:00

2022年6月17日、明治大学生田キャンパスで、連研究室で初めてのオープンゼミが開催されました。
第一回目のゲストは、建築家の海法圭さんと、ファッションデザイナーの川崎和也さんです。2時間にわたって行われたこのゼミでは、前半の1時間でゲストのお二人によるレクチャーがあり、後半ではその内容を踏まえて、参加者全員でディスカッションを行いました。このnoteは、その時のディスカッションと、後日の自主ゼミで議論した内容を振り返り、アーカイブとして記録することを目的としています。

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議事録

連さんオープニング

・90年以降のデザイン学の体系から、リサーチとデザインの直線的な関係ではなく、循環が始まった。しかし、デザインの可能性・対象範囲が拡大してきたが、建築分野ではデザインの幅が拡大していない。

・建築学が独自の知の体系を構築していくデザインリサーチをやってみよう。
社会変化の実空間への実装は建築学を生かしていくことができるポテンシャルがある。

・一つの成果物を目指すのではなく。プロセスの中でできた複数のプロトタイプの変遷も含めて成果物として扱う。わからないことを楽しむ。
・講演会などでは、思いついた質問ではなく、考え出した質問をぶつける

海法 圭さん
 地球規模の思考実験そして日常的で生活まわりでのアンヴィルド
川崎和也さん
 スペキュラティブ・ファッションデザイナー
 水野大二郎研究室出身

海法圭さん レクチャー

・「地球規模の人知を超えた循環」(環境問題など)と「ある生き物、ある空間の循環」の重なり

・「東京に雪が降った日」は遅刻してもいい。人知を超えた大きな出来事によって、人々が助け合う。人の本来の力を知る。
雪国の人々にとって雪とは除雪しなければいけない邪魔なものだが、雪解けすると春の訪れに生命を感じさせてくれるもの。

上越市雪中貯蔵施設 ユキノハコ 2021
・ユキムロとは、天然の雪をためて、天然冷房、天然冷蔵庫にする雪国の伝統。断熱のために外へ閉じるからそれを逆手にとり、回廊をめぐらし外の景色を切り取るギャラリーにした。
・雪国では、一億円かけて雪を廃棄する。雪をユキムロによって活用する事で、棚田の農家さんの所得を向上させる事ができる。
・夏は雪をウッドチップ(余っている)を保管するシステムを開発。

Melting Landscape
・断熱された屋内空間にユキムロは使えるのか??の実験をヴェネチアビエンナーレ(この年のテーマは”How will living together?”)で行なった。(予想通りに溶けた)
・雪と人の共生・関係性→人間と地球のあり方の1テーマである。

水上のかもしかみち
・オリンピックへの新しい提案
・ベイエリアは都市の余白空間であるが、そこを選手村として都市開発的なものにしていくことに対する抵抗があった。
・いかだを湾に敷き詰めていかだの大地に(林業の問題解決へ)
     +
世界中の豪華客船集まり船の城に(選手村)
・ドローイングでやっていることが伝わる

タカオネ
・チーミング=団体旅行を対象に登山で終わらない高尾山の楽しみを
・航空写真で敷地をチェックする
  →森と町のせめぎあいがおきた境界線がわかる
・落ち葉で型取り・コンクリのがらをUPサイクル
・ミット工場の残糸でカーテンを作る・枝払い材
  →余っているもの、捨てるものを使う
   制約、課題をポジティブに捉え直してデザインしていく

川崎和也さんレクチャー

・川崎さんの考えるデザインリサーチとは
 とりあえず作るデザインと,とりあえず作るリサーチの繰り返し
 分かったら反省して次のフェーズへ

<Biological Tailor-Made>
・培養された菌でつくったジャケット

<Algorithmic Couture>
・布の廃棄(型紙から作ると余り布が多く出る)を減らすために,曲線で洋服を作る
・もっと社会に実装していきたい

<Algorithmic Couture Chimera>
・アルゴリズムに鳥っぽい画像を提案させるが,人間が思うような鳥っぽいは出てこないが 面白いものを作れるのは人間だけではない

<WORTH-Diegetic Collection-With-Drawing β>
・モーションスーツで現実世界の人間の動きを3Dモデルのアバターで再現
・バーチャルな表現を実験中
・情報環境でも自然環境でも同じものができる

・はじめは”製品でもなく,作品でもないもの”を作りたかったが,今は”製品でもあり,作品でもあるもの”を作りたい
 →自身が置かれている環境の変化(会社を設立)によって
  より持続可能な活動をしていきたいと問題意識を持つように  

ディスカッション

Q,発表,展示,対話の場などで自分の思いをどうやって乗せているのか
A,(海法さん)
  人によって説明の仕方を変える(スタッフ,施主,,)
  ひとつだけの表現の仕方ではない
   (川崎さん)
  見る人はわからないと思わないで巻き込む
  使う,作るの分断線をなくす
  引き込まれる,素直なファーストインプレッションを面白がる
   (連さん)
       アウトプットのクオリティが大切,議論を生むクオリティが求められる
  プロセスが開かれていることも大切

Q,どんな反応をもらえたか
A,(海法さん)
       自分自身が面白がっている状態が重要
  リサーチは面白いものを選び取っているだけで,面白そうという反応をもらえる
    (川崎さん)
  真面目な理論だけではなく,ユーモアや驚きで反応を得る

Q,楽しむコツ,探究するコツは
A,(海法さん)
  凄まじい制約(設計条件)を,いいものを作るためのネタだと思う
  人間の想像力を補うために現実の力を借りる
  人間の造形力を信じていないからリサーチを徹底的に
    (川崎さん)
  対話,学習の場を設計できるか
  何それ,と学ぶことが楽しい

Q,個の感情が問題意識とどう結びつくか
A,(海法さん)
  直感は直感だけではない
  その直感に理由と隠れたプロセスがあるのでは
    (川崎さん)
  外部の人からのフィードバックができるとよい
    (連さん)
  自分自身はこの社会に生きているのだから自分が反応することには意味がある

Q,新しくものを生み出すことに疑問がある
A,(海法さん)
  異常な150年,近代をどう捉えるか
  この感覚は50年前場違いだったが50年後は当たり前になるかもしれない
  ティモシーモートンのダークエコロジー
  人間と自然は切り離すことはできない,全ての自然に人間の影響がある
  作ることの何に疑問を感じているのか(枠組み,環境,目的など)を明       らかにすると作ることが尊いとわかるのではないか
 (川崎さん)
  人間中心主義に疑問を持っているのは共通だが,みんなポジショニング       
に迷っている
  人間が自然に危害を与えているという感覚がそもそも近代的,自然と人間の二項対立
  例えば松茸は人間がいないと存在できないから,この関係は二項対立ではない
  環境の中に我々がいるだけ
 (連さん)
  俗人的なレベルで考えると,これはシステムの問題
  資本主義がつくった制度による
  ものを作ること自体は尊い行為である,今の資本主義のシステムの中でものを作ることに問題がある
  人間は環境を構成するひとつのアクターであるだけ
  




感想

Open Seminar Series''DRDRDR'' 01 地球、気候、サステナビリティを振り返ってみる。

ゲストとして「建築家」の海法さん、「ファッションデザイナー」の川崎さんをお招きして行われたオープンゼミ。

まずはじめに注目したいのは、建築家は他の専門家から「まじめできれいだ」という印象を持たれていること。

川崎さんが海法さんや私たち研究室のメンバーの様子を見て、「きれいだなあ」という印象を受けたとおっしゃっていた点が個人的に一番印象に残っている。安全性を担保する法規制や制約が大きいためだろうか、建築家は、論理が分かりやすく、かつ法規制に対する柔軟性を持たせるような印象を与えるのが得意なのかもしれない。一方で、誰かに良いと思ってもらう事を追い求める「まじめちゃん」になりすぎているという見方もできなくはない。

次に注目したいのは、ゲストであるお二人の共通点である、「不完全な現実をヒントにしている」こと。

自然やAIなど、不完全で私たち人間にはコントロール外のものを面白がってデザインのヒントにしている姿勢が共通していた。現実にある制約や不完全なところをポジティブに捉えなおすことがデザインだと思わされた。

最後に、「結果的にサステイナビリティ」というテーマで今回の記事を締めくくる。

海法さんも川崎さんもエコやサステイナビリティをゴールに設定していない。うまくいっていて、うまくいっていない。どちらも含んでいる現実そのものを直視し、面白がってやる。この現実を楽しんでやる。という態度がある。面白がるための工夫が結果的に持続可能性なのかもしれない。

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