親ばかパワー 2001.11.15

親ばかパワーは計り知れない。
ばか高い子ども服が売れるのも、赤ちゃんモデルに登録する親が後をたたないのも、子どもの写真で年賀状を作るのも、運動会に早朝から席とりで並ぶのも、すべて親ばかパワーのなせる技である。

学生時代、子ども好きの友人は、電車の中で赤ちゃんを見つけたりすると、「わぁかわいい!」と目を合わせたりあやしたり、いつまでも「かわいいかわいい」と目が釘漬けになっていた。 私はそんなとき、確かにかわいいとは思うけれど、それ以上どうかわいいと思ったらいいのか、なんでそんなにいつまでも見ていられるのか不思議だった。

私は元来子ども好きではないのだ。
あとあまりにもそういう経験がなかったので、赤ちゃんイコールどう扱ったらいいかわからない存在で、かわいいより恐いほうが先に立っていたのだと思う。

ひばりが生まれた時、私は赤ちゃんというのはこんなにもかわいいものだったのか!と本当に毎日感動の連続であった。
なんてかわいいんだろう。こんなにかわいい赤ちゃんって見たことないよ。

他の赤ちゃんはみんなぼーっとして見えるのに、ひばりだけはぴりっとしているように思えた。
こんなに表情が豊かな赤ちゃんはほかにはいないんじゃないだろうか、そう思っていた。

友人や知人はもちろん「うわ。たいしてかわいくない赤ちゃんだねえ」なんて言えるはずもないので、みんな「かわいい」と言ってくれる。
自分はもう愛で目が曇ってしまって、どう見てもかわいくしか見えない。

でも実際はどうよどう?
冷静に見てこの子は結構かわいい赤ちゃんなの?それとも結構いけないルックスの赤ちゃん?

私はひばりが赤ちゃんの頃、旦那によく尋ねた。
「ねえ、でもさあ、冷静に見てどう?ひばちゃんってかわいい?それとも不細工?」 旦那は、「ううん…。冷静に見ろって言われても…かわいいと思うけど。」と答えていた。

今思えば、私と同じくらい、いや私以上に愛で目が曇っているやつに、冷静な判断を仰いでいたとは、なんとまぬけな…。
いや多分私はあの時、「冷静に見てかわいいか」ということを知りたかったわけではなかったのだろう。

本当に冷静な声を聞きたかったのであれば、会社の口の悪い独身のSくんやIさんに尋ねればよかったのだ。多分、「鼻が上向いてますね」なんて言われて、激怒したのがおちだろう…。

しかしそんな親ばか全開の私たち夫婦だったが、保育園の面接に二人で行った時、のちに同じクラスになるTくんを見たとき、「ああ、世の中にはこんなにかわいい赤ちゃんがいるんだ。冷静に見てもかわいい赤ちゃんっていうのは、こういう子を言うんだな」と認めざるをえなかった。

Tくんのお母さんはすれ違ったら思わず振り向いてしまうほど、はっとするような美人。 その美貌を受け継いだTくんは、こぼれおちそうな目のまさにどこから見てもかわいい赤ちゃんだった。

旦那と帰り道に、「いやぁ、私たちって井の中の蛙だったねえ。」としみじみ語りながら帰ったことを、今も思い出す…。

そんな私だが、二人目がうまれて、またしても、「すみれって冷静に見てどうよどう?」と相変わらず旦那に尋ねているのであった。

でもさ、親ばかにでもならないと、赤ん坊なんて育てていられないんでございますのよ…

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