何にもしたくないとき
『ねえ、カナ。何もしたくないときってどうしたらいいと思う?』
『ん?何もしなければいいんじゃない?』
ここは学校帰りにふたりで寄る馴染みの喫茶店。ミホはいつも、私にいろんな発見を教えてくれるんだ。でも今日はちょっぴり様子がちがうみたい。
『だってさ。そういうわけにはいかないよね。宿題もあるし、家の手伝いもあるし、毎日お風呂入んなきゃいけないし、いや、そんなことより他にもやることいっぱいあるはずなのに、何にもしたくないときあるよね』
『あー、あるある。そんなとき、どうしようもないよねー。周りからいろいろ言われも、やる気出ないし、好きな音楽聞いたり、好きな本を読んでも、ぜんぜん冴えないことってあるよね』
『そうそう。なんかいい方法ないのかなー』
今日のミホは、いつもとちがって、ちょっと元気がないみたい。でもこんなときって、私は見えない力を感じるのよね。
『たぶんね。そんなときって、ジタバタしても仕方ないのかもしれないよね。その何にもしたくない気持ちを否定しないで味わうっていうのかな、そうよ、ミホならわかってるんじゃない?』
『え?私が?』
『うん。だって、ミホなんだから』
『なにそれー。・・・でも、ありがとう。何もしたくない自分の気持ちを、優しく・・・優しく包んであげるってのが第一歩だね』
『そうだよ。絶対、大丈夫。この世界は完璧で、無駄なことなんて何もない。ミホが教えてくれたことだよ』
『だね。カナ、ほんとありがとう』
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