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造影検査 Gd-EOB DTPA

最頻出のGd-EOB DTPA(プリモビスト)を中心に造影剤の対策問題です。

★過去問Check★
第16回(49)造影一般
第15回(5)造影一般(29)造影一般
第14回(43)EOB
第13回(18)造影一般
第12回(47)EOB
第11回(19)EOB
第10回(18)EOB
第9回(18)EOB
第8回(18)EOB
第6回(6)EOB
第5回(28)EOB

過去問は日本磁気共鳴専門技術者認定機構のホームページにPDFデータが公開されておりますのでそちらをご活用ください★


【例題1】 Gd-EOB DTPAのMRI検査に関する正しい記述はどれか.

1.腎機能低下の被検者には原則禁忌である.
2.成人には本剤0.2mL/kgを静脈内投与する.
3.血漿中においてGd-DTPAより高い緩和度を示す.
4.細胞外液と肝細胞相に分布する.
5.投与後1分程度より肝臓の細網内皮系細胞に取り込まれ始める.
6.主として胆汁に排泄される.
7.造影効果は腎機能の程度によって変化する.
8.肝細胞相は造影剤投与後約15分から撮像可能である.
9.投与後,肝臓の信号増強効果は少なくとも2時間以上持続する.
10.NSF(腎性全身性繊維症)に対してGd-DTPA造影剤と同様の取り扱いを行う必要がある.

【解答】
1.X 慎重投与である.
2.X 0.1ml/kg
3.O 
4.O
5.X 肝細胞に取り込まれ始める.
6.X 胆汁に排泄されるのは約39%である.
7.X 肝機能の程度によって変化する.
8.X 肝細胞相は造影剤投与20分後から可能である.
9.O
10.O


【解説】
1.EOBでは「重篤な腎障害のある患者」について「原則禁忌」ではなく「慎重投与」と位置付けている.従来のGd造影剤との一番大きな違いである.これはEOBが尿中のみだけでなく胆汁を介して糞中にも排泄されることによる.

2.EOBの対象は肝臓で,投与量は細胞外液性Gd造影剤の半分の0.1ml/kgである.
類似問題として,第11回(19),第9回(18),第8回(18),第10回(18)では「臨床における通常投与量は0.1mmol/kgである.」という設問が頻出であったがこれは間違い.単位の引っかけに要注意である.

3.T1緩和度(r1)はGd-DTPAに比べて約1.5倍と高い.

類似問題として,第11回(19),第9回(18),第8回(18),第10回(18)では「血漿中のr1はGd-DTPA造影剤の約1/2倍である.」という設問があったがこれは間違い.正しくは「約1.5倍」.

また, 第15回(29)では「Gd-EOB-DTPAの血漿中のr1値,r2値はGd-DTPAより高い値を示す.」という設問があったがこれは正しい.r1値だけでなくr2値もEOBの方が高い.

また,第6回(6)では「動脈相で濃染する結節と肝臓のコントラストは,一般的にGd-DTPAより高く描出される.」という設問があったがこれは間違い.EOBの緩和度は大きいが, 造影効果のみに着目すると効果は薄れる.そのため肝血管腫の評価など,血流評価を目的とした検査においてはEOBよりも通常の細胞外液性Gd造影剤を用いたほうが良いとされている.

4.EOBは静脈内投与後,通常の細胞外液性Gd造影剤と同様に血管内及び細胞間隙に分布する.その後肝細胞へ特異的に取り込まれる.

5.EOBは肝細胞に特異的に集積する造影剤である.細網内皮系細胞とはクッパー細胞のことであり,この設問はEOBではなくSPIOの説明となっている.

類似問題として第6回(6)では「投与後,約20分で肝臓のKupffer細胞に取り込まれT1強調像で肝実質は高信号を呈する.」という設問があったがこれも間違い. Kupffer細胞が肝細胞と記載されていればEOBとして正しい.

また第12回(47)では「造影剤はトランスポータによって肝細胞に取り込まれる.」という設問があったがこれは正しい.肝細胞へ到達した造影剤は有機アニオン輸送担体であるOATP1というトランスポータを介して肝細胞へ取り込まれる.

6.肝細胞へ取り込まれたEOBは毛細血管を経て胆汁へ移行する.EOBの排泄は正常成人では約57%が尿中,約39%が糞中であるため,「主として胆汁に排泄」という表現は間違い.

類似問題として,第11回(19), 第10回(18),第9回(18),第8回(18)では「健常人は造影剤の約4割は糞中から排泄される.」という設問があったがこれは正しい.
また第6回(6)では「健常人に投与した場合,50%以上が尿中から排泄される.」という設問があったがこれも正しい.
強いて言うなら「主として胆汁に排泄される」のはSPIOである.(投与量の80%が肝細胞内皮系,その他脾臓・骨髄に取り込み)

7.EOBの対象は肝臓なので,肝機能の程度によって造影効果は異なる.

8.添付文書には肝細胞造影相は投与20分後からとされている.静脈投与後の肝実質の信号上昇に基づく有効率に起因する.

9.EOBの造影効果は投与後少なくとも120分は持続するとされている.

10.EOBでは「重篤な腎障害のある患者」について「慎重投与」と位置付けているが,従来のGd-DTPA造影剤と同様に投与量などには注意するべきである.

【参考文献】
磯辺智範 編集,新津守 監修,MR・超音波・眼底 基礎知識図解ノート第2版,金原出版株式会社,2018,165-170


【例題2】 Gd-EOB DTPAの臨床所見に関する正しい記述はどれか.


1.ほとんどの血管腫はwash outが遅延するので,投与後20分の相は高信号として描出される.
2.血管腫は動脈相でperipheral globular enhancement,肝細胞相では造影剤の取り込みはない.
3.肝嚢胞は動脈相で増強効果なし,肝細胞相では造影剤の取り込みはない.
4.限局性結節性過形成(FNH)は動脈相で増強効果あり,肝細胞相では造影剤の取り込みはない.
5.古典的肝細胞癌は動脈相で増強効果あり,肝細胞相では造影剤の取り込みはない.
6.肝細胞がん組織内に胆汁を産生するgreen hepatomaは動脈相で増強効果あり,肝細胞相では造影剤の取り込みはない.
7.肝細胞相で造影剤を取り込まない病変として異型結節がある.

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