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【結局強い者が勝つ】

今年のUCLは予想通りレアル・マドリードが優勝した。そして散々すったもんだしていたキリアン・ムバッペのレアルへの加入もようやく決まった。今のレアルのメンバーを見ると、恐ろしい程強力な補強を成し遂げ、また新たな銀河系軍団発足のスタートラインに立った様に見える。

FIFAはW杯やクラブW杯などの大会に参加するチームの数を増やし続け、それらを開催する国や大陸も広げ続け、失敗には終わったがレアルの会長であるフィオレンティーノ・ペレスは以前にヨーロッパのスーパーリーグとか言う訳の分からない強者だけを集めたリーグまで作ろうとしていた。それらのせいで選手達は年間を通して更なる過密日程を強いられる。すべてはカネ儲けの為だ。サッカーに限らず現代のスポーツはオリンピックも含めすべてカネ儲けの道具と化してしまった。

地位も名誉もカネも人気も、何もかもを独り占め。「結果がすべて」という言葉の裏にはそういった含みがある。勝った者が正義であり、勝った者がすべてを手に入れ、負けた者は何も残らない。現代では何かとスポーツが美化される。サッカーは美しいゲームだと言われているらしいが、僕にはこれのどこが美しいのかサッパリ分からない。人間の欲望をこれでもかと言う程に表した、とても卑しくて醜いモノに見えてならない時がある。そして、その欲にまみれた勝利至上主義を子供達にまで押し付ける大人が悪い。



マンチェスター・シティは一昔前から現在まで続いている流行りのカウンターを敢えて仕掛けない。身体能力やスピードを活かしたカウンターアタックは一度ボールを奪取したら相手が戻って守備陣が整う前に一気にゴールまで突き進むのがセオリーだが、シティはボールを奪っても急がずに一旦落ち着かせ、敢えて相手を自陣に戻らせ、そして敢えて意味のない様に見えるパスを一本繋ぐ事から攻撃をスタートさせている。そうする事で味方が全員自分達に有利なポジショニングを取る時間が出来て、計画通りの攻撃を仕掛ける準備が整う。

カウンターは成立しないが、自陣に戻った相手の守備ブロックを萎縮した1つの塊とさせ、そこから相手チームをペナルティーエリア付近に囲い込む様にゆっくりと時間を掛けてジワジワと敵陣へ押し込む。両サイドのウインガーも無理にドリブルで相手を抜こうとはせず、ゆっくり少しづつ前にボールを運ぶ。当たり前の事だが、シティのポゼッションはそれ自体が目的ではなく、あくまでもゴールに繋げる為のものだ。どこからでも誰でも常にシュートを狙っていて、相手陣内に深く押し込めば押し込むほどシュートを打つ射程距離は近くなる。

勿論シティだってミスはする。逆に押し込んでいるシティが相手のカウンターを喰らいそうだが、どういう訳か相手がボールを奪って速攻を仕掛けようとしてもことごとく打ち消されてしまう。カイル・ウォーカーやストーンズが待ち構えていたかの様に高い位置で危険なパスコースを予め切っている。近くの選手が瞬時に相手のボールホルダーに寄せてすぐ様奪い返す。カウンターを仕掛けられたら一旦ボールを外に蹴り出してプレーを中断させて、その間にシティの守備陣は整う。相手はやっとの事でボールを奪っても、自陣の深いところからカウンターをスタートさせる事になるのでゴールまでが物凄く遠い。その長い距離を相手よりも速く走るのはキリアン・ムバッペぐらいの足の速い選手でなければ難しい。結果的に相手は殆どボールに触れず、自分達のゴール前から脱出出来ず、手も足も出ない防戦一方の状態になってしまう。

相手も何とかボールを奪ってから、カウンターではなく自陣で繋ごうとすればそれこそシティの思う壺で、既に全員が押し上げていて敵味方が密集している中では、攻守が切り替わった瞬間にシティにハイプレスを仕掛けられる。そこでボールをまたシティに奪い返されたら即刻失点に繋がる。相手はカウンターを仕掛けているのではない。分が悪いカウンターを仕掛けざるを得ないのだ。

カウンターは近代サッカーでは有効な手段ではあるが、一種の賭けでもある。相手の守備も整っていないが、自分達も整っていない、何が起こるか分からない戦法でもある。そんな一か八かの戦い方は捨て、より確実に勝つ方法をシティは見つけたのだろう。急がず、焦らず、ゆっくりと、ジワジワとフィールドを支配して、確実に勝利に繋げる。相手が抗えない、覆せない、観ているこっちが諦めてしまう様な一方的な試合展開になる。直接目には見えないが確実に存在する秩序がフィールド上に形成される。それが現代の格差社会の象徴であるかの様に僕には見えて、とても薄気味悪く感じる。



「サッカーは強い者が勝つのではない。勝った者が強いのだ。」理論上はそうなのかもしれないし、ベッケンバウアーの時代はそうだったのかもしれない。だが、近代化した今ではそれは逆転した。近代サッカーは結局強い者が勝つ。近年のUCL優勝チームや歴代W杯優勝国を見ればそれは一目瞭然だ。優勝するのは結局いつもレアル・マドリードであり、小さな町クラブではない。W杯を優勝するのは日本ではなく、いつもヨーロッパと南米だけだ。

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