労働基準法の労働者とは?(ねっとwork11月号抜粋)

キャバクラ女性従業員の労働者性を認める!

埼玉県内のキャバクラに勤務していた女性従業員が、在職期間中の残業代や「送り」「厚生費」などの名目で控除された費用など1,100万円の支払いを求めた裁判で、今年4月に裁判官から労働者性に関する肯定的な心証が示され、和解に向けた協議の結果、両者間の契約が労働契約であったと認め、会社が解決金を支払うことで和解が成立しました。

そもそも労働者とは?

何故、労働者性が争点となるのでしょうか。そもそも労働者とは、どういった人のことを指すのでしょうか。労働基準法第9条には、次のように定められています。
この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。
この条文に基づくと、「使用される者」で、かつ「賃金を支払われている者」が労働者ということになります。「使用される」とは、「指揮監督下の労働」と「報酬の労務に対する対償性」によって決まり、この二つの要素を「使用従属関係」と呼んでいます。
具体的には、次の項目を総合的に見て「労働者」に当たるかが否か判断されます。

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※その他、機械・器具の負担関係、報酬の額、他社業務への従事の制限の有無、報酬の生活保障的性格の有無等の要素により総合的に判断されます。

何故、労働者性や労働契約が争点となるのか

労働者に当たると判断される場合、労働基準法や労働契約法、最低賃金法等の多くの法令が適用されることになります。例えば、労働時間、休日、賃金、契約解除、年次有給休暇など多くの従業員を保護するための条文が適用されます。また、一定の条件を満たすと社会保険、労働保険の加入義務があります。
先のキャバクラ女性従業員のように、未払いの残業代や違法に控除されていた賃金の請求を求めて、トラブルとなることがあるので注意が必要です。

最後に

働き方改革に伴い、国は「多様な働き方」を求めています。この多様性のなかには、雇用契約から業務委託契約に切り替え、自社の業務を委託することで、時間や場所に拘束されない働き方を実現することも含まれます。
会社は業務委託契約のつもりでも、実態は労働契約であったり、契約当事者間で認識の齟齬があると知らないうちに法令違反してしまいます。
また、2020年民法改正によって、業務委託契約を解除するために債務者の帰責性が不要となり、履行の割合に応じた報酬を支払うことが定められたことによって、より雇用契約との違いが曖昧になったのではないでしょうか。

これからは一層、労使間の意思疎通が求められ、自社に関わるスタッフが「労働者」に当たるのか、個々の実態に注意する必要があると言えます。

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