実験文章ラボ

実験文章『擬偉人法』

どうもMr_noiseです。
noteに何を書くかに頭を悩ませる人が多い中、ただただどう書くかにだけ焦点を当てた企画、それが実験文章ラボです。
変なレトリックを考案し、ガンガン詰め込んで文章書いたら、添加物と油でぎっとぎとでケミカルなカップ麺みたいにそれはそれで美味しくいただけるんじゃないかとやっている不定期企画なのです。

 今回のテーマは擬偉人法です。擬人法は広辞苑によると「人でないものを人に擬して表現すること。」だそうな。でも少し……この風……泣いています、みたいなやつです。擬人法は物を普遍的な人に擬しますが、物を特定の偉人にして表現しても、別に伝わるし、面白いんじゃないかという思い付きです。ももたろうがきびだんごをあげるみたいに著名な人物にはその人らしい行動がつきものです。蝶野正洋が年末にビンタするとかね。今回は擬偉人法を使いまくるので、誰のことを指して言っているのか、なぜその人なのかを考えながら読んでいただけると幸いです。

それでは実験文章を始めます。

『擬偉人法』

 昨夜の僕の心臓首ヘルニアになっても演奏続けているドラマーだった。要するに高鳴っていたわけだが、今はさざ波の様に静かだ。穏やかというより疲れた。そして僕はかなり落ち込んでいた。

 12月8日に彼女に渡すはずだった指輪は、12月9日になってもまだ僕のコートの内ポケットに入っている。指輪にはまったダイヤも昨日はあんなに輝いて見えたのに、今は『明暗』を書き上げることができずに終わったことを後悔しているようだ。僕の決死のプロポーズは「少し考えさせてください」と保留にされてしまった。「月が綺麗ですね」とでも言えばよかったのか?雨だったけどな。

 昨日、彼女と別れたあと、自前の旧車でどこを走ったか覚えていない。呆然自失となり、暴雨の中、知らない道を走り回った挙句、道の駅で車中泊。今朝になり眼を醒まし、エンジンをかけると、車は英語で「想像してごらん。全ての人が平和に暮らす世界を日々を」と歌った。つけっぱなしだったカーラジオの電源を切る。どんな優しい歌声さえも今日は嫌味に聞こえる。自分の想像力が足りなかったと言われているように思えてしまうのだ。何にせよ今は『ウェディング・アルバム』を出すような奴の声なんて聴きたくない。こんなことならあの雨にやられてエンジンいかれた方がまだマシな気分だ。とりあえずカーナビを起動し、家路へと向かう。到着時刻はおよそ4時間後。今日の有給がつぶれそうだ。1週間が8日だったらいいのに。

  せっかく予約していた昨日のフレンチは喉を通らなかった。夜景とフレンチとダイヤさえあればプロポーズは成功するとか言ったやつはどこのどいつだ。9割成功の賭けじゃなかったのか?助手席で乾いたハムのサンドイッチ俺を食って次の賭けを始めようぜと言ってくる。昨日の夜、どこかのコンビニで買って結局食えなかったやつだ。封を破り、運転しながら片手でむしゃむしゃと頬張る。あの女、「結婚したら、その冗長で意味不明な言い回しに毎日付き合うことになるかと思うとちょっと」だと。出会ったばかりのころは、そこが面白いって言ってくれたじゃないか。好き。

 信号待ちをしているとスマホが鳴った。運転中の厳罰化を知らないのかと。今僕が受け付けるメッセージは「昨日はごめん、私と結婚してください」の11文字だけだ。それが駄目なら、「結婚しよう」の5文字か、「指輪くれ」の4文字でもぎりぎり構わない。乾いたサンドイッチを食ったばかりだから他のものは喉を通りそうにないのだ。それでもスマホは多くのアプリの通知をしてくる、LSDでもやってインドに行って禅の考えを取り入れて静かにすることでも学べ。音楽もネットも通話もいらない。今持ち運べそうなのは彼女の言葉くらいだ。信号は青へ変わり、車はまた走り出した。

 軽快に車を走らせていると、校庭の隅でおとなしく立ってそうなタイプランドセル本を読んだまま車道へと歩いてくる。信号が赤なのに気づいていないようだ。ブレーキをかけたが間に合いそうにない。急いで右へとハンドルを切る。右側の歩道をそのまま突き抜け、目の前には桃園と壁高名な軍師の支えで手を結んだように立ちむかってくる。車は次々と枝葉にぶつかり、視界が枯れ枝に染まり、先ほどまでアンブレイカブルに見えたガラス94回ほど折れて割れて、顔に指に小さな傷をつけていく。こんな古い車にエアバッグの類はない。整備されつくしたフロントガラスも製造42年目にして派手にブレイクするとは思わなかったことだろう。枝、ガラス、巻き上げられた砂利、すべてが僕の身体に叩きつけられ、刺さり、体を紅に染めていく。車も見る影もなく大破して、今すぐ「HELP!」と叫び出しそうだ。惨状を見て、登校中の小学生が必殺技を唱える声が聞こえた。ハワイを統一しそうな技だ。少その技が少なくとも僕にとどめを刺したことは間違いない。もう何も聞こえないもの。何も見えないもの。

 今日まで走り続けた心音が最後に「三日とろろ美味しゅうございました」と唱えた。

所感

 立派な電波文ができました。文章として伝わらなさそうだと思うけど、誰か文章上手な人に擬偉人法で書いて欲しいとも思います。人が書いたのを読んでみたいと思ってしまったのです。他の問題点として、そもそも擬人法ばかり使っていると人物か物なのか紛らわしくて、登場人物が多い文にしにくかった。それを擬偉人法にしたらなおさらだ。ただパズルとかクイズを作るみたいで書いていて楽しくはありました。

 ではでは読みにくい文に最後までお付き合いいただきありがとうございました。

#雑記 #実験文章ラボ #擬人法 #擬偉人法

他の実験文章

https://note.com/mr_noise/m/m24df06105a17

 

 

 

 

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