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ブランド・リノベーション #7 緊急SP:旧社名に戻すという決断

飛び込んできたニュース記事から

 昨日(4月12日)、ネットニュースの中に「サイバーグラフィックスが社名を変更、創業時の『オリエンタル写真工業』に」というタイトルの記事があり、とても興味を惹かれました。
 実は私、不勉強ながら[サイバーグラフィックス]と[オリエンタル写真工業]という両企業名を知ったのは、この記事でのことです。フィルムなど写真関連素材のメーカー/商社ですので、広告制作に関わっていればそれほど遠い世界ではないはずなのですが、これまで知る機会がありませんでした。
 しかし、興味を持ったのはこの会社の業務内容ではなく、「旧社名に戻した」という点です。このご時世において、なぜそうしたのか、その背景を知っりたくなったためです。そこで、少しだけ調べさせていただきました。

企業名から受け取るイメージ

 業務内容を知らない人が、[サイバーグラフィックス株式会社]というネーミングを聞いて、普通はどんな企業だとイメージするでしょうか? 比較的出てきそうなのは「CG屋さん」「ゲーム屋さん」「3Dアート屋さん」あたりかと思います。 
 一方の[オリエント写真工業株式会社]はどうでしょうか? 多くの人は、写真は写真でも「フィルム写真系の何かを作っているメーカーさん」というイメージが浮かぶのではないでしょうか? それとともに、大変失礼ながら、昭和の(しかも初期の昭和の)香りがあるように、私は受け取りました。ただ、それはけっして悪い意味ではなく、後述するように良いことなのではないかと感じているのです。

ネーミングに込められる思いと背景

 [サイバーグラフィックス]の[サイバー]は、今では古典になってしまった(かもしれない)有名なSF小説で使われた言葉が元になっているものと思われます。Z世代あたりにはもう古いのかもしれませんが、それでも21世紀の匂いはします。そして、先端的で尖った感じはまだ残っているようにも思います。
 ここで、同社の歴史を少し調べてみました。オリエンタル写真工業株式会社の創立は1919年。なんと大正8年です。同社のサイトによりますと「日本最初の本格的な総合写真感光材料メーカー」として誕生したということです。その後、本業で発展を続けるかたわら、[フォトタイムス]という写真雑誌を発行したり、写真学校を開設して「写真界に幾多の人材を輩出したり」と、おそらく大正から昭和期にかけて写真業界全体をリードするようなポジションにあった会社だったと想像されます。
 そういった歴史ある企業が、サイバーグラフィックス株式会社へと社名変更したのが、2000年(平成12年)のこと。フィルムから転じて印画紙類などの扱いが多くなったことあたりに、変更の背景があったものと思われます。フィルムや印画紙等を扱うイギリスのHARMAN technology社などと販売契約を結ぶ(2008年)といったことも、何か影響があったのかもしれません。

旧社名に戻すという勇気と決断

 というのも、旧社名に戻すのと同じタイミングで、上記のHARMAN technology社との販売契約を解消しているからです。そういった大口取引先との提携解消などを機会に、経営を立て直す目的もあって社名変更をするケースは少なくないからです。
 以下は、あくまで私個人の推測でしかありませんが、同社が、海外のブランド(製品)から自社製品(または国産製品)中心の取り扱いに戻すにあたって、歴史と伝統のある旧社名を復活させるという選択をされたように思います。もちろんその過程では、社内外において様々な葛藤があったものと、勝手ながら推察させていただきました。
 ただ、今後市場規模が縮小していく傾向があるマーケットにおいて、例えば Made in Japan製品を中心に扱って行くような場合、昔のブランドを見直して、今後のビジネスの延長線上に再構築するという選択は、あってしかるべきだと思います。
 会社設立時において決められた社名には、創業者の熱い思いが込められているはずです。そして、様々な努力の積み重ねによって信頼を得、確立されていったブランドは、けっして「ただの旧いモノ」ではないからです。
 同社のサイトを拝見する限り、新しい[オリエンタル写真工業]の社名ロゴはまだ見あたりませんが、製品に記されている[ORIENTAL]のブランド・ロゴは、モノクロームということもあって力強く、特にプロフェッショナルなユーザーにはある種の安心感を与えてくれる気がします。
 最後に、下に[サイバーグラフィックス]時代のシンボルと、[オリエンタル写真工業]の製品写真を並べさせていただきますが、今回の社名変更はきっと成功するのではないかと思います。そして、同社が飛翔・発展されることを祈念したいと思います。

Cyber Graphics から ORIENTAL へ


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