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売れる飲食店の秘訣 #2「マーケット(商圏)を考える」

どんな「立地」にお店を出すかを考える

 いま店舗を持っている皆さん、お店の場所は何を基準に選ばれたのでしょうか?
 おそらく、いろいろな条件を勘案して決められたと思いますが、なかでも「本当にこの場所が良いのかどうか」について、一番考えられた(悩まれた)のではないでしょうか?
 お店を出す時に、場所選びが大切なのは当たり前のことですが、「場所」という空間的な要素だけでなく、「立地が良いかどうか」という考え方をすることが大切です。「立地」とは、場所のことを指すだけでなく、周りにはどんなマーケット(=商圏)があるのか、どんなお客さん候補(=ターゲット)がいるのか、などの要素を含んだ総合的な判断基準となるものです。
 ここで、「あれ?マーケットって『市場』のことだって言わなかったっけ?」と気づかれた方もいるかと思います。
 確かに前回、マーケットとは「市場」のことだとお伝えしました。ただ、マーケティングの世界では一般的に「市場」という言葉を使いますが、こと店舗のマーケティングを論じる場合は「商圏」すなわち「商売になるエリア」と言った方がピンとくるかと思います。要は、「どの範囲までのお客さんが来てくれるのか?」ということです。

 この「商圏」は、出店する場所と業態、ターゲットなどによって変わってきます。
 例えば、郊外のロードサイド店の場合は、車で来るお客さんがメインとなりますので、商圏自体はかなり広がります。極端な話をすれば、大都市をつなぐ幹線道路沿いの定食屋の場合、長距離トラックの運転手をメイン・ターゲットと考えるならば、そのお店の商圏は何百キロにも及ぶエリアということになるのです。
 一方、あまり大きくない街の駅前に出店する場合、ほとんどのお客さんは徒歩や自転車での来店が考えられます。近くに駐車場スペースがない場合は特にそうです。そしてこの場合は、お店から歩いて15分くらいまでの半径1kmエリアが商圏のひとつの目安になります。(駅からバスの発着があれば別ですが…)

その場所にどんなお客様がいるのかを調べる

 マーケット(商圏)とともに大切なのが、これまでもたびたび登場してきたように「ターゲットをどうするか」ということです。
 ターゲットとは、もともと「標的」を意味する英語ですが、マーケティングの世界では簡単に言うと「お客さんになって欲しい人々」のことです。そして、その候補となる人々のことを「見込客」とか「潜在顧客」といった呼び方で表現します。
 さて、例えば本格的なフレンチ・レストランを開店しようとするとき、ターゲットはどのような人々になるでしょうか? 業態が本格フレンチですから、客単価もそれなりの金額になりますし、その価値をわかってもらえる人々ですから、ある程度の所得がある大人層がターゲットということになります。
 お店を出す場合、普通このくらいは皆さん考えられると思いますが、問題はその先です。そういったターゲットになりそうな人が「どこにいるのか」を考え、そういった人々がいそうな場所に店舗を出すことが大切になります。そこでまた、「商圏」が登場するのです。
 なにか堂々巡りをしているようですが、実は「マーケット(商圏)」と「ターゲット」は、コインの表裏の関係のように一体でなければならず、片方だけがあれば良いというものではありません。
 商圏を広げてみても、そこに見込客が少ししかいなければ、効率的な集客は望めませんし、逆に見込客が周囲にたくさんいるにもかかわらず、商圏を狭く設定してしまえば、利用してもらえるはずのお客さんの来店チャンスをロスする(失う)ことにつながるからです。

 そういったことを防ぐためにも、店舗を出す場所に「どんなお客さんがいるのかを調べる」ことは、とても重要になります。
 調べ方にはさまざまな方法がありますが、まずは商圏として設定できそうなエリアを隈なく見て回ることです。徒歩で来店されるお客さんをターゲットに考えるのならば、5分・10分・15分と決めた時間内に自分の足で歩いてみて、そこまでの間にどんな街があり、どんな人が住んでいそうなのかを知ることです。
 もうひとつは、店舗の候補予定地の前を、どんな人がどれだけ通るのかを調べることです。いわゆる「店舗前通行量調査」ですが、これは曜日によっても当然違いますし、時間帯も重要になりますので、ぜひオススメします。 この調査によって、当初考えていたターゲットとは別の種類の人々をターゲットに再設定する、といったことも起こりうるからです。

商圏によっては、別のマーケティング展開も考えてみる

 さらに、「競合店」を調べることも大切です。商圏として考えたエリアの中に、競合店があるのかどうか? もしある場合には、重なる商圏はどこなのか? 取り合いになりそうなターゲットはどういった人たちなのか? など、どういった要素で「競合」するのかを調べ、考える必要があります。
 そして、できればそのお店に行って、どんなメニューがあるのか? お客さんはどんな人たちが来ているのか? お店のスタッフや接客態度はどうなのか? などを自身の目で見て、体験することです。そして、そのお店が持つ「強み」がどこにあり、逆に「弱み」は何かを捉まえるのです。
 「競合店の何をチェックすればよいか、忘れてしまいそう…」という人には、前回お話しした「マーケティングの4P」を使うことをおすすめします。  
 【Product(プロダクト)】
   どんなメニューがあるのか、料理以外の「売り」はあるのか?
 【Place(プレイス)】
   立地はどうなのか? どのあたりの商圏やターゲットがかぶるのか?
 【Price(プライス)】
   料金・価格はどうなのか? コスパは良いのか? 周辺のお店と比べて
   どうなのか?
 【Promotion(プロモーション)】
   集客のためにどんなことをやっているのか?
少なくともこの4つを把握できれば、先に言った競合店の「強み」と「弱み」が見えてくるはずです。

 ただ、そういった競合店の状況がわかったからといって、ガムシャラに「そこに勝とう!」とか「絶対、お客さんを取ってやる!」とだけ考えるのは早計です。
 競合店といえども、その全てが皆さんのお店とバッティングすることはありえないですし、相手が持っていないところ(いわゆる「弱み」の部分ですね)を、自店の「売り」にするという方法もあるからです。また、違う種類の人々をターゲットに設定してみるという手もありますし、そのターゲットに合わせたメニューを用意する方法もあるからです。
 そして大事なことは、そういった取り組みを「競合に勝つ」ためだけで終わらせてはいけないということです。
 「商圏」の特徴をしっかり捉えた上で、商品やお店自体、価格設定や集客方法を考え直し、臨機応変に対応することが重要なのです。そして、まさにそれこそが「マーケティングをすること」に他ならないのです。

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