Django Unchained 視聴記録

普段は映画を視聴した際にfilmarksの方に映画の感想とすら言えない程の拙い文章を残しているが、今回は完全に気まぐれでこちらの方に記録として残してみようと思う。

今回観た映画はクエンティン・タランティーノ監督作「ジャンゴ 繋がれざる者」である。誠に恥ずかしい限りであるが自分は映画好きを吹聴して回っているにも関わらず、本監督作品を当作品を含めても未だに2作品しか見ていない。もう一つの作品というのは「Once Upon A Time In Hollywood」である。言わずもがな最近の作品である。

ジャンゴについての記述を始める前に以前見た方の作品について少し触れておく。感想として「Once Upon A Time In Hollywood」は見終わったときのメントールのような爽快感とそれを覆い包み、そのまま心を締めあげるほどの苦しさが残る初めての感覚を味わえた作品であった。実際に起こった悲劇をベースにし、それを改変することで生まれた作品であるので不思議なわけではないが、たった数時間であれほどまでに人・自分の心というのは複雑に、解くことのできなくなった紐のようになってしまうのかと驚きがあふれ出てきた。

話を戻して「ジャンゴ 繋がれざる者」の話に戻そうと思う。本作品は先ほど感想を述べた作品の7年前に公開された作品である。実に公開から約10年たってから視聴したわけだ、怠惰な自分よ恥を知れ。見たいみたいと口にしていたくせにこの愚者はろくに作品について調べようともせず、挙句の果てには主演をレオナルド・ディカプリオだと思っていたのだ。どこまで恥を重ねるつもりなのか...また話が逸れてしまった。

まず、映像表現のすばらしさ。なんといっても冒頭から衝撃を与えたあの古臭い演出の数々。何が恐ろしいかってまともに西部劇をまともに履修していない自分のような人間でも関わらず古臭い、懐かしいと思わせることのできる制作陣の技量だ。あの独特の雰囲気を醸し出すカメラ割り、今見るとどうしてもダサく見えるテロップ、キャラクター達のくさくてキザなセリフの数々、見え透いた伏線.. 途中で自分が見ていないはずの記憶が勝手に作られていた事実に気が付いて鳥肌がたった。

しかし。一番驚いたのは今までに見たことのない脚本と主役だった。西部劇=賞金稼ぎというのは容易に想像ができるが、そこに「黒人」を混ぜたというのがスターウォーズ ep.7、ストームトルーパーからフィン(ジョン・ボイエガ)が出てきた時のような新鮮さを感じた。どうしてもその時代のアメリカを想像して思い描いて浮かびあがるのは白人であった。当時のアメリカの「カオ」は白粉が塗ってあったのだから当然ではあるのだが、それをヒーローとして、賞金稼ぎとして、ドイツ人と共に旅をするというのは魅力的に映るのみであった。

作品の折り返し地点で主人公が奴隷商人の役を役を演じることになる。作中でも触れていたが「黒い奴隷商人」というのは実際に存在して、アフリカで諸外国に奴隷を売りさばき、その利益で武器を買い新たな村を襲い奴隷を売るという循環ができていたという記録があるほどなので奴隷として「黒い奴隷商人」がただ単に「黒人(同胞)を売りさばく悪人」ではなくもう少し重い意味を持っていた。それに対して今まで以上に反発するのは半ば当たり前のことであると思う。その辺りの脚本というのもとてもこだわりがあったのだと思う。

それだけではなく、主人公のこの状況というのは奴隷:黒い奴隷商人という構図を生み出す。それも相まってか周りの奴隷たちの表情描写がとても多く、とても細かに描写していたと思う。そしてみな尊敬や羨望の眼差しではなく、怒りや侮蔑のような表情で見ていた事に驚いた。というよりその指示が出せる監督に驚いたといった方が正しい。このような主人公が周りの奴隷たちとは違う身分にいてその時の状況というのは主人公目線で語られる場合が多く、奴隷側の表情・感情を描く作品というのは数が少ない。作品というのは主人公の物語であるため、周りのキャラクター(俗にいう名無し・モブである)の感情というのは無視されがちである。描かれる場合は大抵主人公に、もしは視聴者に説明をしている場合が多い。しかし当作品の場合は違い、言ってしまえば無くても物語の進行にさほど影響のないシーンであったと思う。そんなシーンをとても丁寧に描いていて...まるでこの作品の世界から出てきて実際に見てきたものを描いていとすら思った。

最後に、近年の作品はどうしてもストーリーベースの作品より映像ベースの作品が増えてきて、低燃費・大量消費をしているように感じる。映像技術が進歩し、数も増えてきたのだから仕方のないことだと思う。が、このような作品が増え、映画だけではなく様々な作品について考える時間が増える社会を少しだけ望む。


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