【成長と課題】第22節 大宮アルディージャ戦【備忘録】
例によって時間が作れなかったので試合は見直してません。記憶を頼りに備忘録を書き残しておきます。
①スタメン
長崎はいつものスタメン。この試合から平和祈念ユニフォーム着用。
②試合の流れ
霜田監督が途中就任した大宮。前回指揮を執った山口でもそうであったように、大宮でも前線から積極的にプレスを掛けたい意向のようだった。対する長崎はこの日も富澤がビルドアップ隊に加わって丁寧にプレスを外していく。磐田、京都と続いたプレス志向のチームと比べると大宮のプレスは取り組みやすく、比較的再現性を持って圧力を交わすことが出来た。
ボールを握れた長崎だが攻撃は今一つ噛み合わない。前節で松田監督や都倉が語ったようにチームは上積みのフェーズに差し掛かっているが、最後の局面(ファイナルサード)での崩しを上手く共有できない。特に得点が欲しいウェリントンハットは大外を駆け上がってくる毎熊を囮にしてカットインする形が多く、それは大宮の守備陣にもバレている様子だった。
前半を通してシュート数9対3と、数字上では圧倒したように見えるがピッチ上の動きは両チームとも鈍かった。大宮はショートカウンターを狙いつつ、ボールを握れば馬渡が自在のポジショニングで局所的に数的優位を確保する狙いだったが、(原則では)相手の立ち位置に惑わされない松田式ゾーンディフェンスが機能したことで大宮の攻撃は次第に手詰まりになる。一方で長崎もスピードの上がらない大宮に同調するようにいつもより出足が遅いような、まったりしたプレーが続くこともあった。前半43分に雷雲が近づいたため試合が中断、両チームとも方向性を再セットしたことで後半から試合が動く。
後半開始早々、長崎は先制点をあげる。大宮がボールに喰いついてくる習性を活かして最終ラインでリスクを負ったビルドアップ→都倉に縦パスを当てる事を合図に一気にスピードアップして逆サイドに展開→ハットが最後のディフェンダーを引き付けて毎熊にパス、冷静に一対一を制してゴールネットを揺らした。この一連の攻撃はいわゆる「擬似カウンター」と呼ばれる形で、実際には長崎側がボールを保持しているからカウンターではないが、相手を自陣に誘い込んで盤面をひっくり返す様子がカウンターのような形になる事からこう呼ばれている(はず)。
完璧な形から得点を挙げた長崎、あとは追加点を伺いながら逃げ切るだけという事になるが、この日は後一点が遠かった。都倉がエリア内での決定機を枠外に吹かすなど惜しい場面もあったが、次第に(ボールが行ったり来たりする)オープンな展開になっていった。大宮が選手交代で攻勢に出て、長崎は交代を我慢して守勢に回ったことで徐々にサンドバック状態になっていき左右からクロスを何本も上げられた。最後には左から上げられたクロスを黒川に決められて失点、逃げ切り失敗で勝点2を失う結果となった。
③長崎が得た4つ目の武器
[4-4-2]のゾーンディフェンスを軸に簡単には失点しない土台を確立した長崎。この枠組みを維持しながら90分の中で2点を取るために武器を磨き、増やしているのが今のフェーズになる。
ここまで長崎が得てきた得点の手段は主に3つ、エジガル都倉の筋肉系コンビネーション、カイオの圧倒的推進力、そして加藤聖の高速クロス。松田監督が就任してからの10点はこの3つの武器を中心に取ってきた。そして今節「擬似カウンター」という4つ目の武器を手に入れた。GKがビルドアップに参加するようになった近年、リーグ全体でも増えてきた形で、去年昇格した徳島が散々見せていた形でもある。松田長崎よりボール保持にこだわった手倉森長崎でもここまで綺麗な擬似カウンターはついぞ決まらなかった、個人的にはかなり歴史的で重要なゴールだったと思う。このカウンターが決まりだすと圧力を強める相手に対する牽制になり、ゲームコントロールという意味でも相当効果を発揮することになる。擬似カウンターにおける徳島のキープレーヤーがGK上福元であったように、長崎のキープレーヤーはGK富澤になる。ゴールマウスを背負って相手の圧力を受ける、些細なミスが失点に直結するというストレスの中で確実なショートパスやロブパスを一本繋げることで景色を一変させることが出来る。DF陣も怖がらずにボールを引き取りに来る必要があり、全員が正しくリスクを背負う事が求められる。
次節の後に訪れる中断期間で長崎が一番取り組むべきなのはこの「擬似カウンター」の精度向上だと、個人的には考えている。固い[4-4-2]ゾーンディフェンスを軸にカウンターを打てるようになると、これは勝ちパターンの確立にも繋がるかもしれない。
④手倉森長崎と“似て非なる”課題
ここまで松田監督のチーム作りは順調といえるだろう。就任11試合で「簡単に失点しない(平均失点0.36)」「90分で1点取る(平均得点1.27)」という段階は達成できている。11試合中8試合は無失点を維持しながら先制点を挙げており、次の課題はリードした状態でいかに追加点を取るか?という事になるが、現状は先制された相手が圧力を強めるとボールを握り返せないというケースが多い。例えば今節大宮戦や相模原戦、松本戦が該当する。同点に追いつきたい相手が圧力を強めるとボールを簡単に手放してしまう、0-0の時はGK富澤がビルドアップに参加して丁寧にプレス外しをしていたはずなのに安全第一でクリアしてしまう……この現象は一度や二度ではなく、繰り返し現れている。
守備構築に定評のある松田監督は1-0での勝利が多い印象だが、理想にしているのは2点差での勝利のようだ。追加点を取って2点差をキープしていないと試合終盤には何が起きるか分からない、というのが根本にあるようだ。大宮戦でも「交代が遅すぎたのではないか?」という意見が長崎サポーターから結構出たが、松田監督からするとギリギリまでベストメンバーで追加点を狙いたかったという事なのだろう。加えていえば天皇杯ではBチームで結果を出したものの、リードされた磐田戦では交代する毎に相手ゴールから遠のいた、という苦い経験も脳裏にあったかもしれない。
「リードした後の振る舞い」というのは、実は手倉森長崎も抱えていた問題だった。ただ「盤石の守り」からチームを構築している松田長崎と「ボール保持しながら時には割り切った守備」という手倉森長崎は仕組みが全く違うため、課題としては似ているようだが対処は全く別になる。手倉森長崎の場合は、特に勝点を失えなかったシーズン終盤に守りきるための5バックも導入していった。松田長崎の場合は基本的に[4-4-2]で守れるのだから相手の圧力に屈せず、リスクを最小限にしながらボールを握り返して隙あらば追加点を狙う、という方向に成長の余地がある。この”リスクを最小限にしながら”というのが難しく、今のところは安易なクリアを選択している状態だろう。先に挙げた「擬似カウンター」を含める縦に早い攻撃は効果絶大になる可能性が高く、大宮戦でも都倉に当ててスピードアップする形は明らかに狙って出していた節があり、チームとしても課題解決に取り組んでいる気がする。
⑤おわりに
長崎にはもう一つ「毎熊とハットの縦関係」という活かしたい武器があるが、これもまだ発展途上にある。擬似カウンターと並んで磨くべき武器で、中断期間に期待したい部分になる。
ゾーンディフェンスが苦手にしているのはサイドチェンジとダイレクトプレーと松田監督は著書で語っているが、北九州はまさに苦手な部類に入るだろう。それでも前回対戦時とは見違えるようなチームになっているはずなので、理想は高く「無失点」「複数得点」を目指してもらいたい。
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