静かなパーティー

現代音楽のプロジェクトでお世話になった作曲科の教授に誘われてクリスマスパーティーへ行ってきた。招待メールがやけに詩的だなあと思っていたら、本文にクリスマスソングがいくつ隠されているかを当てるゲームだったようで、正解発表の後みんなで全部歌った。みんな楽譜も見ずに楽しそうに歌ったり綺麗にハモったりしていたけど、私は今年積極的に取り組んだ現代音楽の影響か、(意図せず)前衛的なハモりを試みては、和声学の教授にチラチラ見られたりした。その後ピアノの即興演奏があったり声楽家の友達が歌ったりして、なんとも音楽家らしいクリスマスパーティー。台所に2種類のスープとパン、たくさんのチーズ、ソーセージ類、ワインやウィスキーが並べられていて、それを好きに取って居間で語らう。人参スープが特に美味しくて何度もおかわりしてしまった。

ある人がふと、「クリスマスといえば、昔は暖炉の前に集まっておしゃべりしたなあ。」と言った。おもむろにテレビをつけた家主がさらりと「あるよ。」と言ってあるチャンネルを選ぶと、画面に炎がゆらゆら揺れる暖炉が現れた。テレビのない生活をしているこの数年で初めて、ちょっとだけテレビ欲しいかもと思った。

暖炉の周りに集まって、ドイツのクリスマスの話を聞いた。子供の頃親に連れられて教会へ行き、懺悔しなければならないのが嫌だったというのが”あるあるネタ”らしく盛り上がっていた。それにしても健全なパーティーだ。撮った写真を後から見返すと、”アットホームなクリスマスパーティー”というよりは”少しくだけた雰囲気の大学講義”に見える。ほとんどがドイツ人だったので、教会の流れから私とシリア人に宗教の話題が投げかけられ、私が「仏教の影響を受けているが基本的に無宗教」シリア人が「いろいろな体験から6年前に神を信じるのをやめた」と話したところでパーティーは最高潮、または最低潮に達し、私はついに「実は現代音楽がそこまで好きじゃない」と懺悔するタイミングを逃した。


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