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花き物流の「今」を知る!花き業界物流最前線

本記事は、2021年8月27日(金)に開催しましたMPSオンラインサロンでの講演内容を記事として編集したものです。

(ご講演者:三和陸運株式会社 井上博保 氏)

まずは運送会社というのが、これまで正直コンプライアンス度外視でも動いてきた業界だったのが、このご時世、どうしてもコンプライアンス重視で動かないといけなくなってきたこともあり、今まで通りはやりづらくなってきているということをまずはご理解していただいと思います。

1.運送会社が守らなければならない法令

まずは運送会社が守らないといけない法令について説明させていただきたいと思います。

運送会社に対してどんどん厳しくなっている1番の理由というのが「交通事故」です。

交通事故というのも、営業用トラックの事故率は非常に低いですが、1度、事故起こしてしますと、かなり大きな重大事故に発展するため、どうしても事故そのものを防ぐ為に、厳しい法令がなされています。

【飲酒運転】

・道路交通法では、呼気1ℓ中0.15mg以下であれば問題ありませんが、営業用トラック乗務員は0.15mg以下でも検知されれば乗務出来ない。(0.15mg以上で酒気帯び運転、0.25mg以上で飲酒運転)

まずは、飲酒運転。道路交通法上では 呼気中1リットル当たり0.15ミリグラム以下のアルコールであればOKだとなっているが、営業用トラックはこの呼気中のアルコールがゼロにならないと乗れないというほど厳しく管理されおり、それを管理するために どこの運送会社もだいたい24時間、人を配置して出発するドライバーにアルコールのチェックをして送り出すという感じになっています。そのため、以前から比べると、コストがかかるような運行管理の状態になっている現状です

【過労運転】

・道路交通法では、過労運転は飲酒運転同様の厳しい処罰がなされます。従って、乗務員の休憩・睡眠が充分に確認されてからでないとトラックには乗務出来ない。

次に、飲酒運転と同様に「過労運転」も問題になっています。例えば 運転してる途中で、心筋梗塞で倒れて、そのまま車だけが暴走したという事故もありますが、運送会社側は、ドライバーの健康管理(定期的な健康診断)について責任を負わされています。また、知られていないと思いますが、過労運転は飲酒運転と同様の厳しい処罰がなされ、最悪の場合免許取り消しとなります。(業務用トラックドライバーだけでなく)普通の一般のドライバーの方も同様に過労で事故を起こすと免許取り消しになるということも知っておいた方が良いと思います。

【労働時間管理】

・2024年4月より残業時間規制が更に厳しくなり、年間360時間(30時間/月)以上の残業は認められない為、1日9時間以内で仕事が完結出来る仕組み作りが必要。(現状の残業時間は年間960時間以内)
・改善基準告示により、4時間運転で30分の休憩、業務と業務の間の休息は連続8時間もしくは分割10時間以上必要となる。

また、この過労運転に繋がることで、「労働時間の管理」というのは非常に厳しくなってきています。そして、我々運送業界では「2024年問題」が議論されています。これは、2024年から残業時間が、年間360時間(1ヶ月当たり30時間)までとなるという厳しい規制になってきます。現在では、年間960時間(1ヶ月当たり80時間)ですが、この80時間ですら正直なところほとんどの運送会社も守れていない状況。これからさらに月30時間となると非常に厳しい状態になります。これでは今までのような輸送ができなくなるというのが、2024年に降りかかってくるのではと考えています。

花き業界は、生産地と消費地とが距離が離れていますので、長距離輸送になるので輸送だけで何時間もかかってしまいます。さらに、ほとんどの運送会社は自分でバラバラに棚積みをしたり、積み上げて積んだりしていますので、積み下ろしの時間にも非常に時間がかかります。この作業を月30時間の残業でこなせるかっていうと到底無理な話になってきます。

2024年になると急に規制が厳しくなるなかで、一気にいろんな運送会社が値上げをせざるをえなくなってくると考えられます。 私も一生懸命計算していますが今のままでいくと運賃を2倍もらっても、正直なところ採算取れない状況なっています。こういう悲しい状況だけは避けたいと考えていますので、市場や生産者の方にご協力していただかないといけない部分が出てくるのではと考えています。

2.運送業界の景況感

【儲かるのは10年に1回だけ】
まず「トラック運送業界の景況感の推移」(全日本トラック協会 調べ)というグラフを元に、説明させていただきます。

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このトラック運送業界の景況感を表すグラフは、全日本トラック協会の指標で、経営者の肌感覚的な部分になります。周りの方からよく言われるのが、「運送会社って儲かるのは10年に1回だよ」と言われていますが、この表を見ても、平成26年だけしか儲かってないというのも分かります。ただ、実際にこれが利益かどうかというと違うところもありまして、赤色のラインというのが その本当の会社の損益分岐のラインになります。

どちらを見ても、やはり赤字の時期が半分ぐらいあるというのが、このグラフから見て取ることができます。では、なぜ平成26年にこんなに利益が出たかというと、単純に軽油がとても安くなったのが理由です。それに増して、働き方改革が今のように言われる前で、労働時間はそこまでうるさく言われてなかった頃で、どこの運送会社も利益を出せたという時代背景があります。

ちなみに、ここ最近の軽油の価格は、かなり軽油代が上がってきていますので、そろそろ運賃の交渉をする時期ではないかと言われています。

【運賃が安くなる条件とは 〜受益者側の協力が必要〜】
運賃の推移について、一般宅配と宅配貨物とでの推移が以下のグラフ(全日本トラック協会 調べ)のとおりです。

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運送会社は、単純に荷物量が増えると運賃を上げ、荷物が減ってくると荷物が欲しいから運賃を下げて運ぶ。そのため、荷物量と運賃がほぼ同じように推移していくというのが、今までの流れです。

お花の輸送は、いろんな農家さんから集めてきて、いろんな市場に配達するって言う意味で、一般貨物(1カ所で積んで一カ所で下ろす)というより、宅配貨物(いろんなところから集めてきて、いろんなところに配達する)と似たような運び方をするので、「宅配貨物」の推移を見るほうが参考になると思います。

先ほど言ったように荷物の量と運賃が比例していくという話をしましたが、ところがその平成29年から全く逆の動きをしています。具体的には、平成29年、宅配貨物のグラフを見ると、荷物量は令和2年までにどんどん下がってきています(赤丸部分)が、運賃料金水準を見ると荷物量が減っているのに運賃ステージがどんどん上がってきています。

何が起きたのか?これは、テレビでも報道されましたが、働き方改革や人手不足分の問題が起こり、運送会社もどんどん強気に運賃を上げていったという経緯があります。

そして、令和2年、ちょうどコロナの時期になりますが、コロナの巣ごもり需要でいきなり荷物量は 増えてきます。これだけ荷物が増えると運賃を下げても良いのではと思うのですが、それでもなかなか運賃が下がりません。

令和3年になると荷物量が落ちついてきて、運賃が下がってきている状況ですが、この令和2年から3年にかけての運賃が下がってきている理由は、荷物量が減ったからではなく、実は消費者側の協力があったからです。具体的には、宅配ボックスや不在時でも荷物を置いてって良いというような協力を得られることです。そこまで協力をいただけるのなら運賃を下げて還元していったという形です。

ここが1つのポイントになります。消費者(受益者側)が運送会社に協力していただければ、運賃を安くするという動きとなります。運賃を安くして欲しいということであれば、それが1つ解決の条件でなってくるのではと、私は運送業者の立場として思っています。

3.2024年問題

2024年問題は、運送会社にとっては本当に死活問題で、シビアに動いていくのではと感じています。

よくいろんな方々から、ドライバー不足でしょと言われます。確かに、去年まではいくら色んな所で求人をかけても、電話すらかかってこない状況でしたが、今年に入って、この8ヶ月で弊社では15人ぐらいドライバーが増えています。これは、コロナの影響で人員整理が行われたり、元々は別の運送会社で働いていたが荷物が減り、仕事がないのでうちに転職してきたりというところがあり、今は比較的ドライバーを集めやすい状況になっています。

コロナ禍の影響もあり、輸送荷物量の減少で各運送会社は荷物確保に動く(→実はコロナ以前よりこの傾向になっている)

多くの運送会社さんは、コロナの影響で荷物がなくなったっておっしゃっていますが、実は(コロナより前の)令和元年の夏ごろから荷物量が減ってきています。僕らも、ちょうど令和元年の年末に車両を探そうとした時に、簡単に見つかったので、おかしいなと思ったことがあります。実は、令和元年の夏から荷物量減ってきていたのです。そして、コロナになって、さらに荷物量が減ったというのが今現状です。

花き輸送も、冷蔵車であれば対応出来るので、食品等を輸送している業者の参入が増え、しばらくは輸送にはそれ程困らない。ドライバーも他の職種でリストラが進んでいる事もあり、比較的確保し易い状況。

こういう状況があるが故に、特に食品を運んでいる方のトラックは冷蔵付きなので花の輸送もすぐにできる。そして、何か荷物を運ばないといけないということで、今まで敬遠されてきたお花の輸送に、いろんな運送会社が参入してきている状況です。去年の今ぐらいまでは色んなところから「何とか荷物運んでくれないか」と相談が来ていましたのが、最近そういう相談が落ち着いているのは、こういう状況(新規参入の運送業者が増えている)があるのではと考えます。

ただ、2024年問題となると、労働時間が問題となると、今の輸送の状態は続ける事は難しいので 2024年にそれまで運んでいた運送会社がやはり運ばなくなる危険性が非常に高いように思います。

花き輸送は、徐々に景気回復と共に飲食店に活気が戻ってくると、元々食品輸送をしていた業者は、そちらへと戻っていく。
・運送会社にとって年間平均的に物量がある荷主が一番取引したい荷主。
・食品輸送は台車・パレット輸送。乗務員にとっては積卸作業の負担が少ない。
・輸送時間帯は、9~17時なので、夜間の業務が少ない。

結局のところ、仕事があるとドライバーが喜ぶ仕事、運賃が高い仕事、そしてまずはあのコンプライアンスがしっかり守れる仕事に運送会社として流れてきますので、せっかく花を運ぼうと言ってきた運送業者が(花き業界の)環境が整わないが故に、また元の別の所に逃げていくことがあります。

ここは、花き業界全体と運送業者とがお互いで協力し合うような、そういう取り組みをする必要が2024年に向けて必要ではと思っています。

輸送業者の減少により、徐々に輸送に対する問題が再発してくる。そして、2024年4月を迎え、ドライバーの残業規制が強化される為、1ヶ月の一人当たりの労働時間が25%カットされる事になり、ドライバー不足問題が再発する。
・運送会社がやりたがらない仕事から順に、運賃高騰及び輸送困難地域の発生がみられてくる。
・花の輸送は、季節性が高く繁閑期の差が激しい。荷卸しが手積・手卸である。待機時間が長い。等の理由で、コンプライアンス遵守する為にには、問題が多すぎる。
・運送会社は国土交通省からの通達により、荷主の都合で30分以上の待機した場合、その記録を残す様に指示されています。
・今後、待機時間を荷主に請求する事になってくるので、繁忙期に市場で待機した分の請求がなされる可能性があります。

「輸送業者の減少により、徐々に輸送に対する問題が再発してくる」 ということの本質とは、ドライバーの数が足りないのではなく、働く時間がカットされてしまうが故に、今まで3人でやっていた仕事が今後は5人かけないといけなくなるため同じ仕事やっていると人が足りなくなる。ドライバー不足の本質はそこにあります。

「労働時間」が一番のネックなので、労働時間を短縮するための協力を花き業界でやっていただくことが、一番運賃を安くする為のポイントになってくるのです。

具体的には、今うちのドライバーは、休憩時間も含めて会社を出て帰ってくるのに12〜13時間はかかっています。 そのうち6時間くらいが(手作業での)荷物を積み下ろしと待機時間、3時間が休憩、残りの3時間が走っているというのが基本的なドライバーの時間帯になります。このうち、1番長い積み下ろしと待機時間の6時間を、例えば(手作業ではなく)台車で積んで下ろしてだけのやり方を変えるだけで、一気に30分に短縮できます。

このように形を変えるだけで、今の輸送体系と運賃体系をこのまま続けていけます。この部分を今後業界が団結してやっていこうとしない限りは、今の運賃を2倍にしても運べないという時期が間違いなく来ますので、皆で検討していく必要があるのではと思います。

4.花き業界で目指すべき方向


【運賃アップの要因となる花き業界の諸事情】
・繁忙期と閑散期の荷物量の差が極端である。
・1件でトラックを満車にする事が少ない
 →満車にする為に何件も集荷する事になる
・労働時間を考慮すると、集荷と配達を分業するしかない。
・車両保有台数の多い会社でないと対応が出来ない

「鮮度良く、安く、早く届けてもらえる物流網が欲しい」というのが、花き業界の皆の要望だと思います。ところが、これは仕方がないことですが、お花の配送は繁忙期と閑散期の荷物量の差が極端なので、非常に運びづらい部分があります。

具体的には、産地から「明日100ケースお願いね」と言われると、100ケースだとトラック4トン車のトランクだと3分の1くらいなのでで、別の産地を次の集荷ルートに組みます。ところが、実際に集荷に行ってみると、300ケースになっていて、最初の1軒で満載になってしまうことに。そうすると次の産地には、別のところからトラックをまわすことになるので集荷に行く時間が遅れてしまいます。遅れると遅れた側の産地の方は 「なんで今頃来ているんだ!」って怒られてしまいます。

荷物量の増減は仕方ないのですが、集荷依頼時になるべく正確性をもった依頼をしてもらえれば、こういう悪循環になくなり、ロスも減ります。こういうロスが減れば、運賃を安くするという方向に向かっていくということを理解してもらいたいと思います。

トラック1台で、1つの農家や農協で、トラックがいっぱいになることがなかなか少ないので、何件も集荷にしてトラックを満載にするようになっています。そのため、出荷時間の遅れが、1軒目ででてしまうと、2軒目、3軒目ご迷惑をかけるって言う形になってしまいます。そのまま続けていくと最終的に労働時間の問題が発生してくるので、集荷する人と配達する人は別の人でやっていくってなります。この結果、単純に人件費が倍に掛かってしまい、運賃に跳ね返ってきてしまいます。

車両保有台数が多い企業程、監督官庁の監視が厳しい為、コンプライアンスを重視する。本当はやりたいけども、花き輸送は出来ない環境になっている。

荷物の閑散期と繁忙期があるなかで、たくさんのトラックが必要になる繁忙期に対応するためには、どうしてもトラックの保有台数が多いところでないと対応しづらいところがあります。例えば5台だけの(保有台数の少ない)運送会社であると、5台しかないがゆえに1人が退職しましたってなると補充がきかないので輸送ができなくなりましたとなる。こういう理由からも 大きい運送会社でないと最終的には花の輸送には対応できないということです。そして、大きな運送業者は監督官庁の監視が厳しいこともあり、コンプライアンスを重視した輸送でないと、なかなか対応できないという形になってきます。

・白ナンバー(自家用トラック)であったり、小規模な会社が違法な状態で輸送を行う。
・ドライバーの高齢化が進んでいたり、退職者が出た後の人材確保の面を考えると、先の事が不安になる。
・台数が少ないと、繁忙期の対応が困難である。

営業の許可を取ってない方(白ナンバー)であれば勝手に輸送することができるという意見もありますが、そもそもその運賃をお客さんからもらって運ぶという仕事は緑ナンバーの営業のトラックでないとはやってはいけないこと。(白ナンバーを使ってしまうと)あそこの農協は白ナンバーを使っていると国土交通省に通報され、輸送ができなくなるリスクもあるので、ちゃんとした輸送ルートで輸送されるのをおすすめします。


・花輸送で宅急便の仕組みが必要(ハブ&スポーク)
・宅急便の2020年度の年間取扱量は45億3000万ケース、花きの市場での取扱い量は2018年度で約7500万ケース。
・宅配便は大手3社が9割以上を占めているのに、花き輸送は1/60の取扱量しかないのに、多数の業者が輸送に係わっている。
 →花き輸送はの運賃を安く運ぶには、1つにまとまって効率良く運ぶしか方法はない。

そういったなかで、花の輸送というのは、宅配便の仕組み(ハブ&スポーク)を真似するのが1番良いかと思います。 宅配便の2020年度の年間の取り扱い数は45億3000万ケースあります。これが、お花市場の取扱量は、コロナ前の2018年度で7500万ケースです。これは宅配便に比べると60分の1しかないのです。

宅配便は大手のヤマト運輸、佐川急便、日本郵便の3社が、45億3000万ケースのうち90%を運んでいます。この大手3社は、関東関西は良いとして、地方では共同の輸送をかけています。45億もの数を取り扱っていても、それで協力しているのにも関わらず、これが花き輸送となると、物量は60分の1しかないのにも関わらず、輸送業者だけでもこれだけの事業者数があり、その分、本当に非効率的な運送しかやっていない状況です。そして運賃も高くなってしまいますので、やはり花き業界を1つにまとめて効率良く運ぶしか、運賃を安くする方法がありません。2024年問題では、運賃を計算してみても倍どころか、3倍、4倍しないとあわないほどの基準になってしまいます。物流の崩壊が起きてしまうような危機がありますので、ここで皆でこの問題を共有していきたいと考えています。

5.継続可能な輸送体系の構築(地域輸送と拠点間輸送)

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そういったなかで、私なりに考えているのが、まずは宅配便の物流である「ハブ&スポーク」(大きな物流拠点を大都市に作り、その拠点間をトレーラーや10トン車といった大きなトラックで運び、その拠点から小さい車で細かく配達していく)を、花の物流でもやっていく方が良いと思っています。

東京を中心に考えると、関東中心に半径300キロの円を描くと、名古屋、仙台をカバーすることができます。東京から西に約8時間走ったらちょうど大阪になります。また大阪を中心に半径300キロの円を描くと名古屋と広島をカバーできます。また大阪を中心に大阪から西へ8時間走るとちょうど福岡になり、福岡を中心に半径300キロを書くと広島から九州全域をカバーすることができます。

本当は東北の方にももう一つ拠点が欲しいと思うのですが、海があるなど実際には難しい。 東京、大阪、福岡に大きな物流拠点を作って、物流をうまく流していくというふうになると、非常にスムーズに流れるのではと思いますし、コンプライアンス労働時間の問題でもクリアできます。

東京・大阪間や大阪・福岡間の輸送を「幹線輸送」といいますが、単純に一カ所で積んで、1カ所で下ろすというのは、普通の一般の車両で、冷蔵車であれば運ぶことができます。参入業者が多くなるので、その分運賃を安く抑えることに繋がります。

黄色の線の部分になりますが、今年の7月から福岡・東京間にフェリーが就航しました(東京九州フェリー)。もともと福岡・東京間は、フェリーは出ていましたが、例えば今日の夕方出発した船は明後日の朝東京に着いていました。これでは、どうしても我々の輸送感覚と間に合わなかった。しかし、この7月からできた「東京九州フェリー」は北九州の門司港を夜の12時に出発して当日の夜9時に横須賀港に到着するようなフェリーです。例えば今日集荷して回って、福岡の拠点で荷物を積み替えて、北九州の門司港に夜の11時(出発の12時の1時間前に入っておく必要あり)に北九州となると、時間的に我々も可能な時間になってきます。夜9時に横須賀港に着くと2時間後の夜10〜11時ぐらいに都内市場に到着することができます。今後、このフェリーを労働時間の問題からもどんどん使っていくようになると思います。

一部の転送市場(別の地方の市場に荷物を転送する市場)からすると、遅いじゃないかとお叱りを受ける可能性はありますが、どうしてもそのコンプライアンスの面から考えると、この輸送に切り替えざるを得ないと思います。まずはコンプライアンスを守った輸送をするって形を作っていかない限りは 将来的に安定した輸送を継続できないと考えています。

6.物流拠点のメリット

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この物流拠点を作る産地側のメリットとしては、例えば四国の方であれば大阪の物流拠点に作ったもの全部持っていくことによって、全国の花市場さんに届けることができる物流網に繋がっていきます。そういう意味では非常にコストが抑えることができます。また、四国の地元の運送会社も大阪まで持って行くと、大阪から四国まで荷物を積んで帰るという荷物がたくさんありますので物流としては非常に良い形ができると考えています
運送会社からすると、何軒も市場に下ろして回ることなく、一カ所の荷下ろしで、全部の市場の荷下ろしが終わるということは、非常に助かる話になります。当然、運送業者の参入業者が増えてくれば運賃の競争が当然発生しますので、安く運び続けることが可能になります。

次に市場の方から見ると、市場到着時間が遅くなるという面のご指摘があると思います。しかし、市場に持ってくるトラックが、いろんな方面から持ってくるとなると、10台とか20台というふうに車両が入ってくるところ、それが物流拠点にまとめることで、荷物を1台の車両で持ってくるということとなるので、入庫の作業が非常に簡素化され場内物流費用がかなり抑えることができると考えています。

種苗業者にとっても、今は宅配便で送っているような生産者への種苗の荷物をこの物流拠点に運ぶことで集荷に行く時に一緒に持っていってもらうことが可能になり、輸送品質や輸送単価を抑えることができてきます。このように、いろんな業界の方が使えるメリットが出てくると考えていますで、利用する価値はあると思っています。

そういったなかで、さらにもっと運賃を安く抑えるための方法として、「統一箱」があります。今後は、台車で運ぶっていうのが前提で進んでいくかと思いますが、台車にあった箱であれば綺麗に隙間がなくすことができます。隙間があるとどうしても箱が潰れたり、箱が動いて商品が頭突きが発生するという危険性がありますが、箱が動かなければ そういう荷物事故の危険性が減ってきます。これは運賃を抑えることに加えて、商品の輸送品質を上げると言う意味でもやっていく必要があると考えています。

よくこの統一箱の話をするときにAmazonの話をするのですが、大きな箱に小さな商品しか入ってないと馬鹿にしておっしゃる方がいます。箱で一番強い場所は箱の角になります。箱が統一されているということは、角がきっちり揃っているで、それなりの加重がかかっても潰れない。ところが、箱がちょっと大きい、ちょっと小さいっていうのを、どんどんどん積み重ねていくことで、箱が潰れるという現象が起きてしまいます。


そういう意味で、絶対統一していかないと輸送品質があがっていきませんので、ここは皆で協力して取り組むべきところだと思います。花き業界自体で統一した箱のサイズってなっていくと、やっぱり段ボール箱を作るメーカーロットが全然違いますから、箱の値段が安くなるという相乗効果が生まれます。

7.まとめ

【花き業界が一つにまとまる】
2024年を今後迎えるに当たって、我々は本当は市場や農家のためにやってあげたいとは思うのですが、どうしても労働時間をカットしていかないといけないという前提だと、やれることがかなり絞られてきます。

【輸送容器(段ボール箱・バケット等)の統一】
2024年問題を解決するために、業界が1つにまとまってやっていくのが大前提にあります。そのなかで、ダンボールやバケットなどの輸送容器の統一が必要です。

【ファーストワンマイル輸送の協力】
少し前にラストワンマイル(最後の営業所から各個人宅に配達していく部分)が、再配達の問題や件数が多くあるが故に労働時間が延びていることが、宅配便のなかで問題になっていました。

花き物流の場合は、先ほどの物流拠点をうまく利用することでラストワンマイルの問題を解決します。しかし、その前に産地から物流センターまで集荷してくる部分(ファーストワンマイル)が問題になっています。例えば農協だと 農協に所属している10~20軒の方が持ってきているため農協に集荷に行くという事は、10〜20軒を集荷していることと同じことになります。20軒を個別に集荷するとどんなに隣近所だとしても5〜6時間かかるところ、1カ所で集荷することによって30分で終わることになります。

どうしても農協さんと個人の方って別々だっておっしゃるのも分かりますが、そうであれば、(個撰の方は)近くの倉庫があるからそこにみんなで持ち寄っていただくか、バスの運行のように何時に道の駅に行くので皆さん持ってきてくださいっていうような形で皆さんが集荷の軒数を減らす協力をしていただくことで、ドライバーの労働時間短縮できます。こういう輸送の仕方が今後花き物流を継続していくためには必要だと思っておりますので ぜひ協力の方お願いしたいと考えています。

【株式会社FLSと「ゲートウェイ構想」について】
最後に、「鮮度良く、安く、早」届けるということを英語で言うと、「フレッシュ・ローコスト・スピード」ですが、その頭文字をとった株式会社FLSを日本フローラルマーケティング協会(JFMA)の協力のもと立ち上げて、この問題に取り組んでやっていこうと考え、「ゲートウェイ構想」と言う形で皆さんにご説明させていただいているところです。個人的に説明して欲しいというお話があれば、どこでも行って説明させていただきます。

私のから以上で終わらせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。

(以上)



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