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MPS-ABCで禁止されている農薬『カルボスルファン』『カルボフラン』(代謝物)』

MPS-ABC(国際環境認証)では、日本国内で普通に使用されている農薬でも、国際的には安全が認められないとしてMPSでは使用禁止されている農薬(MPSブラックリスト)がありますので紹介しています。

ガルボスルファンについて

 カルボスルファンはカーバメート系の殺虫剤です。かつては水稲や野菜で広く害虫防除に利用されていましたが、農薬残留基準が見直しされて使用できる作物が制限されたため、以前ほど使用されることはなくなっています。


 現在登録のある商品のなかでMPS禁止農薬に該当するのは、 アドバンテージ粒剤、 ガゼット粒剤、ギャング粒剤の3剤で、主に水稲かサトウキビでの使用が中心です。しかし、芝や花き類など非食用作物での使用提案も見かけますので、間違って使用しないよう注意が必要です。


 花き類でカルボスルファンの使用を提案される場面としては、①薬剤抵抗性コナガ対策、②キンケクチブトゾウムシ対策、③ネグサレセンチュウなどの土壌線虫対策、などが考えられます。それぞれについてのMPS-ABC的な対策方法を以下にまとめましたので、心当たりのある方は参考にしてください。

ガルボスルファンの代わりとなる対処法について

コナガ(ストック、ハボタンなど)
・各地で薬剤抵抗性が発達し、防除に苦慮するケースが増えています。
・施設の開口部には防虫ネットを張る、露地ではべたがけ資材の利用を検討するなど、侵入防止に努めることが第一です。
・防除薬剤が多いため同じ系統の殺虫剤を連用してしまうことがあります。
・農薬のボトルにIRACの作用機構分類を書き込むなどしてローテーション防除の実践を心がけてください。
キンケクチブトゾウムシ(シクラメン、プリムラなど)
・山間地などで発生がみられる場合があります。
・生物農薬のスタイナーネマ・カーポカプサエ剤(バイオセーフ)が有効なので利用を検討してみてください。
ネグサレセンチュウ(キクなど)
・連作圃場では市販の化学的な土壌消毒剤を使用されることが多いのですが、これらは環境への影響が大きいためMPS-ABCでは推奨されていません。今後のためにも、蒸気や太陽熱による土壌消毒や対抗植物の作付けなど耕種的防除を検討してください。
・定植前の粒剤施用として有機リン系のネマトリンエース粒剤やネマキック粒剤が利用できますが、まずは耕種的な防除により土壌中の線虫密度を下げることが重要です。

カルボフランについて

 同じカーバーメート系の化学物質カルボフランもMPS禁止農薬に指定されています。日本ではカルボフランが有効成分の農薬は登録されていませんが、カルボスルファンやベンブラカルブが植物体内で代謝されるとカルボフランが生じます。


 ベンフラカルブはオンコル(粒剤・マイクロカプセル)という商品名で販売されており、それ自体はMPS禁止農薬ではありませんが、使用後のサンプル審査による分析で禁止農薬のカルボフランが検出される可能性があります。農薬使用量の登録・報告が適切に行われていないと、使用記録をもとに検出された禁止農薬が代謝物であるという説明ができず、罰則規定の対象になってしまうかも知れません。


 同様のケースはアセフェート剤(オルトラン粒剤・水和剤、ジェイエース粒剤・水溶剤)とその代謝物です。また、MPS禁止農薬であるジクロルボス(DDVP:すでに日本での農薬登録は失効)でも起こり得ます。


上記のベンブラカルブとアセフェート剤は禁止農薬ではありませんが、カルボフランを使用していないことを証明するために、MPS使用量データの登録は正確かつタイムリーに行なっていただくようお願いいたします。

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文:彦田岳士(MPS-ABC コーディネーター)

(MPSニュース 2020年9月号 掲載記事)

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