魔法騎士

 アーサーは馬に乗ること自体は下手ではない。むしろうまかった。しかし当たり前だが移動のために馬を駆ることと戦闘に用いることの間には大きな差がある。デルムッドには剣のことしかわからないし、アーサーが馬上で剣を、用いるかといえばそんなことはなく、ほとんどと場合、魔法を行使するのだ。だから正直なところ、デルムッドとしてはアーサーに教えることなどほとんど何もなかった。
 アーサーが教えを乞うべき人は自分ではない。しかしアーサーがそれをよしとするかはわからないとデルムッドは思った。
 リーフと共にトラキアで戦った面々の中には元フリージの将兵も多い。優れたマージナイトもいるのから、そこに教えてもらうのが一番いいのだと思う。しかし、離反したとはいえフリージの将である。そこをアーサーがどう思うかはよく分からなかったし、デルムッドとしてもその将(
名前はオルエンという)と親しいわけではない。だからどうしようもないのだ。
 どうしようもないのだ、と、思っていた。
 しかしそれは彼の考えすぎであった。気づけばアーサーはオルエンを捕まえて馬上魔法の先生と決めてしまっていた。
 こうなるのが一番だと思ってはいたけど、大丈夫なのか。
 二人の教練を遠巻きに見ながらデルムッドが言うと、「そうですね、オルエンはあまり教えるのが得意じゃないようで」と、隣にいたティニーが言った。心配しているところがデルムッドと違うのだった。