わたしは大人になった
いやな記憶が次々と溢れてくる。
そんな数日間を過ごしている。
あーあ 少し前までは楽しかったのに。
ポジティブな期間がすごく長かったのに。
そんなことを思いながら遅延している電車に乗った。
フリルやリボンがこれでもかというくらいあしらわれたワンピースを着てみたかった。
耳より高い位置のツインテールをしてみたかった。
諦めている自分がいた。諦めないといけないと自分に言い聞かせていた。
何にでもなれると思っていた頃の自分は気がつけばとても遠い場所にいて、今、ただ、ぽつんと広い空間に立っているだけのようだ。
大人になっていた。
大人の定義がわからない。
18歳から?20歳から?大学を卒業してから?一人暮らしを始めてから?
まだ子どもでいると思っていた。そう思っていたかった。
「まだ若いからなんでもできるよ!」
呪いの言葉のようだった。
なにができる?こんなわたしが?なにもかも投げ出して、逃げ出したわたしにも?
アイドルの募集要項にある年齢制限を見るたびに苦しくなる。
気がつけばこんなにも時間は流れていたんだ。
これまでの罪滅ぼしのように人の顔色を伺っては頭を下げる。
もっと、ちゃんと、うまく生きていればよかったね。
笑っちゃう。
とはいえ、
今だからこそやりたいことも増えたのは事実で。
あのときできなかったことも今ならできる気がして。
もちろんできないことも増えた。
それでも動かないとまた時間が過ぎてしまう。
失うのはもうごめんだ。あんな気持ちにはもうこりごり。
わたしは大人になった。
そう言い聞かせた。