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天に救いを求めた末裔#3

タルパ(思念体)
それは大災厄後に、突然未来を奪われた人々の負の念から生み出された。
実体を持たないソレは取り憑いた人や動物の生命力を奪いながら宿主の意識を乗っ取り、破壊行為を繰り返す。
恐怖の感情を依代に増え続けるタルパへの有効な迎撃策を講じるまでに200年を要した。
タルパは生き残った人類の半分を侵蝕した後、一切の出現報告が無いまま現在に至る。

「我々の任務って何なんでしょうね?空を飛んで異変を見つけたら報告すると言っても、曾祖父さんの曾祖父さんより前から人類皆平和にやってるじゃないですか。」
「意味が無いわけではない。世界史で習ったと思うが、アレが発生したら次こそ人は滅ぶ。」
「戦おうとするな、ですもんね。どうやったらアレに打ち勝って現在があるんでしたっけ?」
「真面目な学生でなかった証明としては十分だな。オムレツの亡者よ。」
「うっ、班長ぉ今それ言います?飯テロは空腹を抱えている人間に対してのイジメですよ!」

タルパへの対策として1番有効だったのは、アンドロイドによる掃討作戦であった。
感情を持ち合わせず、モノである彼らを使えば恐怖は伝播せずに済む。
同時に恐怖の概念から教育され直された新人類は憑依対象と成らず、災厄の残火を消す事に成功した。

「アンドロイドと、鶏様様ってな。卵ばかり崇めてないで、機械にも興味を持ってくれ。」
「油まみれになるの嫌です。整備班じゃなくて本当に良かった。」
「何を言う!美人揃いの、男の夢の職場に興味が無いなんて、けしからん。」
「班長は動機が不純ですよ。機械が好きじゃなくて、女子目当てですもん。」

この時MegaCloudの奥底より我々を察知し近づく、招かれざる来客は我々の複葉機を手掛かりに街へといざなわれる。
憑依することさえ叶わないはずのソレは一体何を目的に再び人類を捕捉したのか?
それは破滅の足音か、それとも。

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