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小指の話

先月の25.26日は記憶に残る変な日だった。そのひとつが次男と夫が同じ部位に小さなけがをしたことだった。
私の仕事場の引っ越しで、次男と夫にかわりばんこに手伝ってもらっていた。
次男がピクチャーレールのワイヤーを外そうとして椅子から転げ落ちて、したたか胸と腰を打った。
しばらくしてから、右手の小指の先の皮がそこそこ削りとられているのに気づいて見せてくれた。
次の日夫がやっぱり引っ越しを手伝ってくれているとき階段で滑って、右手小指の爪をどこかに引っかけて痛がっていた。

この小さなできごとの重なりに、右手の小指ってどんな意味かなあ、と私は考えてしまった。
まず、指切りの指だなあと思った。
なんだかわかるような気がした。次男は33歳なのだけれど、昨年、「誕生日から就活するから」といって、週4日通っていたバイトを辞めてきた。夫はとてもとても喜んだ。
あれから一年だ。次男は何もしないまま。夫は怒りを抱えている。

象徴事典をペラペラしていたら「西洋手相術では小指は水星」とあった。
二人はコミュニケーションが足りないなあと思う。夫は、長男とは気持ちが通じるしたまにいっしょに釣りに行ったりもするが、次男とはそれがない。どちらかというと次男が行きたがらない。
夫はずっと我慢している。最近は屈託の度合いが激しくなってきた。頭の中が次男でいっぱい。そしてだんだん過激になる。「出ていってもらおう」などという。

そんな中、オファーがあって、なぜか夫のほうが先に再就職してしまった。

私はべつに、次男に対して就職してほしいと一途に思い詰めるようなことはない。ある日「旅行に行くからお金貸して」でかまわない。もちろん何か学ぶでもいい。ほかのなんでもいい。やりたいことがあるなら。いや、この生活がしたいならしたいと、いってくれたら私はそれでいい。

だけど、今のままでは、きっと次男は生きている意味は感じにくいだろうなあと思う。動けないのは33年間の積み重ねだし、小さかったときのことがたくさん影響しているし、からだの反応だと思うけど、自分がそれをどう思っているかを周りの人に見せることができたら、だいぶ違うだろうと思う。 

「この4人であと何年暮らせるかなあ」なんて、次男二十歳の誕生日に浅草は電気ブランで祝いながら私はつぶやいた。あれから13年。なんだか時が止まっているようで、それならそれでもいいじゃない、なんて思えてくる。

終わりが見つからないまま了。

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