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*dʰeh₁(y)- [fertile/fawn/doe/दही]

fecundから遡って〜ariさんのNote記事からのインスピレーション〜

ariさんのWDでfecundが出ていた。印欧祖語*dʰ→ イタリック祖語*θ→ ラテン語f のパターンがまたここに!と興奮した。ということはインド語派でdha-かdah-の語彙があるはず。探すと、दही (dahī)が該当!意味は凝乳つまりヨーグルト。dahiが英単語に取り入れられているのも驚きだった。

*dʰeh₁(y)-/*dhe(i)- から出た他の語彙は、インド語派では धेनु (dhenu)、意味は “a milch cow” 乳牛。ゲルマン語派では doe 雌鹿、イタリック経由では fawn 子鹿。sucklingから乳を飲む・飲ませる動物に異なる語派でも派生しているのは面白い。

「おめでとう」の “¡Feliz!”も関係している。人名にもなっているラテン語 felix は suckling からさらに意味が fertile→prosperous→happyと発展しているからだ。

ゲルマン語派の p→f は慣れて来たが、イタリック語派の *dʰ→ *θ→ f はまだピンと来ないことが多い。似たような仲間を集めてみる楽しみがありそうだ。印欧祖語の*dʰがどう変化するか、それぞれの語派でクセがあるようだ。法則の名前はあるのかないのか...。

*dʰ → /θ/ → /f/ Italic
*dʰ → /θ, t/   Hellenic
*dʰ → /d, t/ Germanic
*dʰ → /dh, deh/ Indic

*dʰegʷʰ- ("to burn")
It: fever
H: τέφρα (tephra) "ash"
G: day, dawn
In: दहकना (dahaknā) "burn"

*dʰewh₂- ("smoke")
It: fume
H: τύφω (typho) "to smoke"
G: dust
In: धूम (dhūm) "smoke"

*dʰeh₁(y)- ("suckle")
It: fetus, fertile, felicity, fawn
H: θηλή (thēlḗ) "nipple"
G: doe, tit, teat
Ind: दही (dahī) "yogurt"

英語の f には グリムの法則で pからf化 したものと、イタリック経由で dhからf化したものとがあるという気づき。試しに 英語でf、ヒンディー語で ध (dh) に当たるものがないか他に探してみたら、firm と throne と धर्म (dhárma) の関係がヒットした。

*dʰer- (“to hold, to support”)
It: firm
H: θρόνος (thrónos) "throne"
G: dree
In: धर्म (dhárma) "law, virtue"

धर्म (dhárma) は「仏法僧」の 「法」に当たる言葉で、「だるまさん」の「ダルマ」の語源でもある。*dʰer- から来た、日常語で他に धरती (dhartī) "earth" も同語源だ。ペルシャ語人名 Darius ダリウス(ダレイオス) も この語根に関わりがあるようだ。

firm / throne / dharma

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