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#77. 七面鳥は英語で turkeyーではトルコ語では?

シチメンチョウ英語turkey と言います。アメリカ大陸に生息しているシチメンチョウがなぜ "トルコ" と呼ばれているのでしょうか。それは、もともと、トルコ経由で伝わったアフリカ原産のホロホロチョウのことを指していたからです。ホロホロチョウと似た鳥のシチメンチョウをアメリカ大陸で見た時に、同じ名前の turkey と呼びました。

では、トルコ語でシチメンチョウは何と言う?―答えは hindi です。これにも誤解が絡んでいて、アメリカ大陸をインド大陸と勘違いしたことにより、ネイティブアメリカンのことをインディアンと呼ぶように、アメリカ大陸のあの鳥を「インドの」という意味の hindi と呼ぶようになったようです。黒海周りの諸国も同様に、ロシア語などでも индейка (indéjka) と呼びます。

では、 ヒンディー語でシチメンチョウは何と言う?―英語の影響で टर्की (turkey) と言いますが、古くは पेरू (perū) とも言いました。また国名?!大航海時代の西洋諸国のうち最初にインドに来たのがポルトガル人ですが、ポルトガル語では新大陸から来たと言うことでシチメンチョウのことを peru と言います。北米原産なのに南米の地名という誤解がまた…!

では、ペルーで話されているスペイン語でシチメンチョウは何と言う?―答えは pavo。ようやく普通の名前に行きついたと思いきや、いやいや、pavo はもともとラテン語クジャクの意味だったのです。クジャクも含めあの形の大きな鳥のことを全て含んで pavo と言うので、クジャクを指すときには pavo real 「真の pavo」と言わなければいけません。ちなみに英語の peacock, peafowl の pea はこのラテン語 pavo から来ています。

では、黒海周りついでに中東のアラビア語ではどうかというと  ديك رومي (dīk rūmiyy) 「ビザンチン(ローマの)ニワトリ」となっていて、おやおや、さらに混迷を極めそうです。英語の借用語で、ヨーロッパに紹介された東方の物産名はアラビア語を一旦経由しているものも多いです。地中海沿岸をイスラム王朝が支配していたり、アフリカ東岸から東南アジアにかけての航路はアラビア商人が押さえていたということもあるのでしょう。例えば、果物の「オレンジ」の名前はインドからペルシャ・アラビアを経由してヨーロッパに広まりました。逆にアラビア語では「オレンジ」のことをギリシャ語から入って来た影響で برتقال  (burtuqāl)「ポルトガル」というようで、もう訳が分かりません。ギリシャ語では πορτοκάλι(portokáli)。

このように、大航海時代以降にヨーロッパに紹介された物品や動物の名前の語源をよく紐解いて見てみると、どの時代にどの国がどの地域に派遣を握っていたかの歴史を垣間見ることができます。英語に入っているアジア(特にインド方面)からの借用語は、古くは、ギリシャ語・ラテン語を経由して多くの場合直接的にはフランス語から入って来ていました。

その後、1600 年代前後の大航海時代には、インド航路を押さえたポルトガル語経由のものが(ポルトガル語にはアラビア語を経由して入ったものも)多くなります。そして、1700 年代以降、東インド会社を設立し、自ら海外へ進出し、他国を押しのけて現地文化と直接接触するようになると、他の言語を介さず直接現地語から英語に借用語が入って来るようになります。そして、今では世界各国語への借用語の中継地としての役割を、英語は果たすようになります。(例えば、ジャングル、チーター、パジャマ、シャンプー、ラッカー、カーキ等は英語を通して日本語に入って来たヒンディー語)

何はともあれ、今シチメンチョウと呼ばれる鳥が日本に紹介されたとき、どの地名も使わずにその姿から「七面鳥」と名付けられたことに感謝…。
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