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*strebʰ- [strap/Streptococcus]

病名はギリシャ語なので覚えられない、の話の続き。

最近流行が懸念される「溶連菌」。初めて「ヨウレイキン」と聞いたとき漢字が分からなかったが、溶血性連鎖球菌の略のようだ。菌の名前ではなく、症状の名前を言うと「劇症型溶血性連鎖球菌感染症」と長い。英語ニュースでは Streptococcal Toxic Shock Syndrome (STSS) あるいは Severe Invasive Streptococcal Infection というらしい。Streptococcus が レンサ球菌 ということらしい。

strepto-
← ギリシャ語 στρεπτός (streptós) "twisted"
←  στρέφω (stréphō) "I twist") +‎ -τος (-tos) "able to"
←  印欧祖語 *strebʰ- "to twist"
英語の strap と同語源。

catastrophe の -strophe の部分がこれだ!cata-は「下に・完全に・逆戻り」というニュアンスのギリシャ語の接頭辞。catastropheはもともと「大どんでん返し」みたいな意味から最後の方の劇的な展開部分のことで、「大団円」だったらしいが、後に負の意味になり「突然の大惨事」と意味するようになった。

apostrophe (') も同語源。文字が省略された場所を示す記号だが、ギリシャ語の ἀποστρέφω (apostréphō) "turn away" 「避ける、背を向ける」から由来し apó ("put away") + stréphō (to turn) と、ここにも strepto- "turn, twist" が関連している。

-coccus
← ラテン語 coccum
← ギリシャ語 κόκκος (kókkos) "grain, seed"
← 語源不詳

Streptococcus は ねじれたストラップ(連鎖)状の粒々(球菌) ということで 連鎖球菌 となるようだ。なぜ「連鎖」と漢字ではなくカタカナで「レンサ」と書くのかは謎。ブドウ球菌を「葡萄球菌」とは書かないのと同じらしい。この辺りの命名方法の規則性を追うのも面白そうだ。

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