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ヒーローソングとは

日付の上では2日前の話になるが、時間に都合がついたので、仕事の合間に、ラジオで追悼特別番組「水木一郎 不滅のヒーローソングス」を聞くことができた。
マジンガーZよりもコン・バトラーVが好きらしい声優の鈴村健一氏がパーソナリティーを務めていた。彼の趣味なのか、番組内では水木氏の歌の中でも「ハカイダーの歌」「オー!!大鉄人ワンセブン」「はるかなる愛にかけて」など、やや渋めの特撮ソングが多く流れていたように思う。
始まりは「マジンガーZ」だったけど。また、ラストはゲキレンジャーの「道(タオ)」だった。

この番組を聞いているうちに泣けてきた。
幼少期から親しんできたアニメ・特撮の主題歌を多数歌ってくれていた水木氏は、まさに、わたしという人間の根本を作ってくれた人のうちの一人だ。今は喪失感というのか、惜しい人を亡くしたという思いが強い。
今年は三遊亭円楽師匠の追悼番組でも涙してしまった。
水木氏も円楽師匠も、先年亡くなられた歌丸師匠もそうだったが、病気でかなりしんどい状態だっただろうに、それでもお客さんの前に立とうとする。そういうところに、たまらないほどの壮絶さとかっこよさを感じたものだった。

水木一郎氏といえば、ご本人が「ゼェーット!」と、ポーズをつけながら言っていたこともあり、どうもマジンガーZのイメージが強い。マジンガーの主題歌の印税で家を建てたとかで、「マジンガー御殿」と呼ばれているとか。

マジンガーZのすごさについて、前回大事なことを書き忘れたが、「人が乗り込んで戦う巨大ロボット」というのは、それまでなかったんじゃないだろうか。鉄人28号とかジャイアントロボとか、外部から操縦するものはあった。でも、人が乗り込んで操縦するというのは、少なくとも珍しかっただろう。
それも、主人公はまずホバーパイルダーという小型メカに乗り、このメカがマジンガーZとドッキングすることでコクピットとなる。特撮ヒーロー全盛の時代にこういうメカニックな設定は、どれほど新しかったのだろう。
武器も、光子力ビームやブレストファイヤーなら、ウルトラマンでもがんばれば撃てそうだ(実際、ウルトラマンゼロがブレストファイヤーによく似た光線技を持っている)。だが、ロケットパンチは、どうがんばってもウルトラマンには無理だ。肘から下が飛んでいくのだから。
生身のヒーローには絶対に無理なことが、ロボットのマジンガーZには設定されていたわけだ。きちんとロボットらしい設定があって、特撮ヒーローとは差別化が図られていたのである。
そういえば、キン肉マンがギャグ時代にロケットパンチのようなものを発射していたような。生身系のヒーローでも、探せばほかにもあるかもしれないな。

ちなみにわたしが水木氏の歌の中で最も好きなのは、『快傑ズバット』のエンディングテーマ「男はひとり道をゆく」である。なんとも昭和の男性観にあふれていそうなタイトルだが、まあたしかにそんな感じはある。
でも、「男なら根性」「男なら泣くな」「男ならマッチョであれ」といったメッセージはない。ひとり旅にロマンを感じるような歌詞は昭和っぽいと言えばそうかもしれないが、孤独が好きなわたしには、心に響く歌なのである。
今の若者は、昔の若者よりも孤独が好きなんじゃないの? 勝手なイメージだけどさ。人付き合いよりも自分のペースで生きることが好きそうだし。そういう意味では、若い人の心にも刺さるんじゃないかなあ。

前出のラジオ番組では、水木氏の生前の声も流れた。彼はヒーローソングを歌うことについて、次のようなことを述べていた。正確な引用ではなく、だいたいこんなようなことを言っていた、というものです。
「ヒーローになりきって歌わないとだめ。そうしないとみんな同じになる。ヒーローの性格や気持ちを考えて歌うのが大事」
鈴村健一氏も「宇宙海賊キャプテンハーロックの主題歌はハーロック自身が歌っているものと思っていた」と発言したほど、水木氏はヒーローになりきっていたのだ。
だから、われわれの心に水木氏の歌が力強く残っているのだろう。

無理に小説に結びつけようっていうのじゃないけど、わたしなどは自作の中の登場人物の性格や気持ちをあまり考えていないから、みんな同じになって、誰が誰だか区別がつかなくなるのだろう。
大きな反省点だ。

『宇宙海賊キャプテンハーロック』の主題歌は、個人的には水木氏の歌の中で2番目に好きな歌だ。悲壮な戦いに臨むかっこよさの中にも、なんというか、好きで戦いに身を投じるような、ロマンも感じられる。たしかにハーロック自身が歌っているかのような雰囲気がある。
ヒーローだけじゃなく悪役の歌も、数は多くないらしいが歌っている水木氏である。ハカイダーの歌もそうだが、『キン肉マン』の悪魔将軍のキャラソンも歌っている。「キング・オブ・デビル(悪魔将軍のテーマ)」である。
これは悪役らしい悪い感じの歌というよりは、小悪党ではない「悪魔超人軍団のボス」という悪魔将軍の貫禄と怖さを十分に表した歌である。もちろん悪役の歌には違いないから、ダークな雰囲気に満ち満ちているのだけれども。

ネットで聞いたところでは、「水木一郎追悼カラオケ」に行っている人が多いようだ。わたしも時間を見つけて、行ってこようと思う。

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