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第34回星海社FICTIONS新人賞の結果を受けて、画像の書籍を参考資料として妄想してみた

登場人物
おれ:大山哲夫。ワナビの40代。新人賞の応募では惨敗が続いている。
応募作:今回応募したおれの原稿。擬人化してみた。
世間:おれに「常識」とやらを教えてくれる、とってもありがたい人たち。とりあえずこれも擬人化。いや、もともと人なんだけど。

応募作「大山さん」
おれ「何だ」
応募作「第34回星海社FICTIONS新人賞、また惨敗だったらどういうことになりますか?」
おれ「世間様の常識も無視して、ワナビを続けている。それでいて今でも、自作の何がいけないのか、どうすれば直るのかもわからない。今回ダメだったら12連敗だ。もう潮時だろう」
応募作「いいんですか?」
おれ「覚悟してる」
応募作「でも、大山さん。子どものころからの夢をかなえるために、絶対作家になるって」
おれ「そう決めてた……世間様が何と言おうと、自分がやりたいと思ったことを出来るようにしたかった」
応募作「……」
おれ「自分が正しいと思えなければ、人生をかけてワナビなんかできないだろ」
応募作「大山さん言ってました。少年時代から小説を書いてたって。そうか、もう30年以上も書いてきてるんだ。さっぱり芽が出なくても気にせずに」
おれ「(さっぱり芽が出なくても? ひどくね? それに、気にしていないわけではないのだが)」
応募作「なら、大山さん辞めたら駄目だ。辞めたら、何も出来なくなる」
おれ「仕方ない」
応募作「……」
おれ「……負けだ……」

世間「先日発表された第34回星海社FICTIONS新人賞の結果において、大山哲夫の応募作は、やはり例によっていつものように1行コメントで終わった」
(注:星海社FICTIONS新人賞では、編集部による座談会が行われ、あまり評価の高くない作品は短いコメントしかつけてもらえない。それらは「1行コメント」と呼ばれる。ほかの新人賞でいう一次審査落選に相当すると考えていい)
おれ「反論はありません。全ておっしゃる通りです」
世間「応募作くんは?」
応募作「……認めます……」
世間「二人の処分が決定した。応募作くんは、もう新人賞に出されることはない。新人賞受賞作になるのは、あきらめてもらう」
応募作「(微かなショックで)……」
世間「大山くんは、現状維持。以上」
おれ「待ってください! わたしが現状維持で、どうして応募作だけが」
応募作「……」
おれ「わたしにも責任がある。平等に処分してください」
世間「ワナビを続けたいなら勝手に続けたまえ。われわれにとっては興味もないし、どうでもいい」
応募作「あのお」
世間「きみも不満なのか?」
応募作「ぼくは世間様の決定を支持します」
おれ「?」
応募作「だって、そうですよね。ぼくみたいな駄作は他にいくらでもありますもんね。それに、大山さんみたいな社会不適合者に近い人は、矯正するのに何年もかかるし、税金かかりますもんね」
おれ「何!!」
応募作「だって、大山さん、一般社会で働いたら、まるで駄目なんですもん。一緒に働く人の足手まとい。ちっとも使えませんでした。最低」
おれ「足手まといとは何だ」
応募作「何言ってんの。あんたの想像なんか甘いよ、社会できちんと働く人々にとっては」
おれ「ひとりで恰好つけるのはよせ!」
応募作「ちゃんと働いている人と比べてみてわかったよ」
おれ「違う!」
応募作「あんたに何が判る! 一般の人々が、夢をあきらめて、汗を流して、嫌なことも我慢して、家族を食わせるためにお金を稼いでいることの何が判るって言うんだ!」
おれ「判ろうとした!」
応募作「あんたに一般の社会人は務まらない! ワナビでいればいいんだ!」
おれ「そんな言い方するな!」
応募作「あんたはワナビでいろ!」
   応募作、おれを掴む。
応募作「あんたにはあんたのやることがあるんだ……」
世間「やめろ!」
   二人、離れて、
世間「君は作者に対する口のきき方がなってない」
応募作「(笑顔で)すいません、慎んで処分をお受けします」

おれ「きみはこれでいいのか?」
応募作「大山さん……あなたの作品たちはあなたに期待してます」
おれ「(胸に受け)……」
応募作「……お願いします……」
おれ「……」
応募作「……」
おれ「……判った……」
応募作「……それじゃ、失礼します」
おれ「……」
応募作「大丈夫すよ。おれはほら、大山さんがプロになったら、書き直してもらって、何らかの形で出版してもらえるチャンスを待ちますから」
おれ「……」
応募作「……」
おれ「今度うちに来ないか」
応募作「……」
おれ「石狩鍋作るから」
応募作「楽しみにしてます。銀河鉄道で迎えに来て下さいね」

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