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思い出のFC版ドラゴンクエストⅡ 第3回 そして勇者たちは行く

 さてさて、『ドラゴンクエストⅡ 悪霊の神々』について、王子たちご一行の旅路のお話は今回でラストだ。
 長々とごめんね。でも今回も長いんだ。
 それでは、参りましょう。

ドラクエ界最高のトラウマメイカー! ロンダルキアへの挑戦!!

 数々の苦難を越えてきた勇者たちに、容赦なく新たな試練が襲いかかる。それこそが、ドラクエ界における「もう二度と行きたくないダンジョン」というアンケートでぶっちぎりで第1位に輝く、ロンダルキアへの洞窟である!
 ああ、いかん。この名前を聞くだけであの恐怖がよみがえる……。
 全国のファミコン少年たちにトラウマを植えつけた、残虐非道のダンジョンである。ここへ入るには、あのアイテムが必要だ。ある場所で前述の「邪神の像」を使うことで、洞窟の入り口を開くことができるのだ。
 さてこの難関ダンジョン、何がそんなに恐ろしいのかというと。
・最低一度は撤退することが前提である
 以前にも書いたけど、この洞窟に「命の紋章」がある。このつらい洞窟の中で入手しなければならない。そして、これを得たら一度戻らなければならないのだ。「ルビスのまもり」が必要なので、それを得てから、再度この洞窟に戻るべし。一回で洞窟を踏破してしまおうなんて、甘いのである。
 ちなみにこの洞窟、「稲妻の剣」「ロトの鎧」といった超重要アイテムが入手できるので、何としても見つけたいところだ。たしか、稲妻の剣は、落とし穴(後述)に落ちないと見つけられないはず。しかもこれを見つけたら、入り口まで戻らなければいけなくなる。このときも撤退して、回復してから再挑戦必須ですな。
・いたるところに落とし穴
 この洞窟、階を上がっていくという珍しい構造だ。ロンダルキアは高地にあるらしい。ところが洞窟内を進んでいると、突然落とし穴が開いて、妙な効果音とともに、ローレたちは下の階に落とされてしまう。気がついたら下の階にいる。一瞬、何が起こったのかわからない。
 落とし穴は洞窟内のあちこちに設定されている。ただし決まった場所にあるので、研究を重ねれば避けることは不可能ではない。落とし穴の存在する場所には法則があり、それを知っていればかなり楽になる。また、一部に、右手伝いに進むと落とし穴を回避できるところもあるらしい。そういう抜け道が用意されているので、堀井雄二氏はこの洞窟をあまり難関だと認識していないとか。……いや、それはあんたが法則を知っているからだろうが! 全国の何も知らない子どもたちの身にもなってみてくれよ!
・無限ループまであるぜ
 正規ルートと違う道を行けば、何度も何度も元に戻されてしまう。このころのゲームには、ときどきあったんだよ。『スーパーマリオブラザーズ』にもあったし、『トランスフォーマー コンボイの謎』でも見られた。そしてドラクエにもご登場というわけだ。当然、正規ルートはノーヒント。手探りで進んでいくことこそ、冒険なのだよ。
 これほど、子どもたちの心を本気で折ろうとしてくるダンジョンで、無限ループまであるのだから、伝説級の難関だと知られているのだろう。
 ファミコンソフトの攻略本が売れるわけですね。
・もちろん出てくる強敵の数々
 最も悲劇的なのは、登場する敵がとにかく強いこと。開発時のテストプレイでは、かなり上のレベルでこのダンジョンに挑むだろうと想定されていたんだとさ。
 どんな敵が出るかというと、ここでは2種類に絞ろう。まずはキラーマシーン。後のシリーズでは「キラーマシン」とちょっとだけ改名されるこのロボット(に見える魔物)。こいつらは守備力が異常に高い。はぐれメタルに次ぐくらい。そして攻撃力も高く、痛恨の一撃を放たれたらダメージは3桁に上ることもある。それでいて1ターンに2回攻撃をしてくる。攻撃呪文も通じない。開発スタッフは何かこのキラーマシーンに特別な思い入れでもあるのか、というくらいの高スペックぶりである。
 次にドラゴン。前作と同じ姿(だと思う)で登場。前作ではローラ姫を助けるために倒さなければならない、中ボス的な役割も担っていた(もちろんエンカウントモンスターとしても登場する)此奴は、今作では集団で登場。次々と炎を吐いて、ローレたちを焼死させる。此奴ら4匹で現れたら、本当に脅威ですよ。みんな、こんがりと焼き殺されたんだから。さらに、回避率が高く、物理攻撃をある程度かわしてくる。攻撃呪文も完全耐性ではないが効果が薄い。前作のようなキースドラゴンとかダースドラゴンとかいう上位種が登場しないのがせめてもの救いか。
 ……以上、このダンジョンのヤバさが少しでも伝わっただろうか。まあ言ってしまえば、強敵に関しては、レベルさえ上げれば何とかなる。ドラゴン4匹は脅威だけど、いい経験値を稼ぐことができる。ダンジョン内をさまよっているうちにレベルがどんどん上がっていくということもあるので、決して攻略不可能ではない。あきらめずに戦ってほしい。時間はかかるけど。
 苦難に苦難を重ね、ラスボスのいるロンダルキアへと到達。そこは大雪原。もう、すんげえ感動するから! 長い旅を締めくくる、異国の地へ来たんだという感慨が胸にあふれてくる。
 この感動に水を差すようで本当に恐縮なのだが、きみは、このゲームが終盤になって、ずーっとこんな気持ちに浸らせ続けてくれると思うかね?

国境の長い洞窟を抜けると、雪国という名の新たな地獄!!

 多大な時間と苦労と涙を消費して、ロンダルキア台地に到着した勇者たち。
 彼らを待っていたのは、また地獄だった。
 そこは雪国。マップ上、通常なら緑色の草原部分が白になっている。感動するのはいいとしても、どこへ進めばいいのかわからない。あちこち探し回るしかない。しかし、探し回るにはあまりにも危険な土地なのだ。
 苦難の洞窟を抜け、こちとら一刻も早く、復活の呪文を聞きたい。洞窟で激しく消耗した勇者たちには休息が必要なのだ。そんな、傷つき疲労した彼らのロンダルキア到達を祝福するように、容赦なく最高クラスの強敵たちが全力でおもてなしをしてくれるぞ!
 攻撃力とHPがバカ高く、痛恨の一撃を繰り出してくる巨人、ギガンテス。
 ベギラマや甘い息のほか、メガンテを使ってこちらを強制的に全滅させる悪魔、デビルロード。
 隙のないほどの高スペックかつ、2回攻撃・炎・イオナズンと多彩かつ強烈な攻撃手段を持つ最強のエンカウントモンスター、アークデーモン。
 そして何より、アークデーモンよりスペックは低いだろうに、コントローラーを握る純粋でいたいけな子どもたちを最も涙させ、最も憎まれたのは、ブリザードであろう。彼奴らはもう、ルカナンとザラキを唱えてくるばっかりだ。ルカナンはいい。しかしザラキを連発してくるのは本当に勘弁してほしい。なにせ、どんなにレベルが上がっても、このゲームに有効なザラキ対策はない。完全に運なのだ。彼奴らが集団で現れて全員がザラキを唱えまくった日にゃあ、阿鼻叫喚の地獄絵図ですぜ。
 せっかくドラクエ界でも最難関といわれるダンジョンを抜けてきて、こんな連中と戦っていたら、身が持たない。復活の呪文を聞く前に全滅してしまったら、ダンジョンに入る前からやり直しになる。これは、むごすぎる。
 ローレたちは洞窟を出て北東に進み、息絶え絶え、命からがら、どうにかロンダルキアのほこらにたどり着く。ここで念願の復活の呪文を聞けるだけでなく、HPとMPの全快、さらに死亡した仲間がいれば蘇生させてくれる。このゲームの、最後の拠点となる場所である。
 元の世界に何か用があれば、旅の扉で帰ることができる。ただし一方通行であり、この旅の扉でロンダルキアには戻れない。ロンダルキアへは、ルーラで戻ることになる。ただし、ここにシステム上の罠がある。ルーラで行き先を選ぼうなんて、何を寝言を言っていらっしゃるんですか、旦那。本作のルーラは、「最後に復活の呪文を聞いた場所」に行くように設定されておるのですぞ。元の世界でうっかり復活の呪文を聞いたりしたら、ルーラの行き先はロンダルキアではなくなってしまうのですぞ。ロンダルキアへ行くには、またあのトラウマダンジョンを突破するしかなくなる。こりゃ悲劇ですぜ。
 あと、第1回で書いたように、本作の復活の呪文は長いし、画面上の文字は判別しにくいので、注意が必要だ。死ぬ思いでロンダルキアに到達、ザラキもメガンテもくぐり抜けて復活の呪文を聞くところまで行ったのに、「じゅもんがちがいます」となってしまえば、やっぱり難関ダンジョンをやり直しだ。この絶望。泣くに泣けない。気をつけるんだよ。

ハーゴンの神殿の幻想を打ち破れ!

 数々の困難を乗り越えて、やっと敵の本拠地へ! ロンダルキアの強敵たちを退け、退け、いよいよラストダンジョン、ハーゴンの神殿へ!
 ロンダルキアのほこらからちょっと距離があるので、ここまで来るのもたいへんではあるが、最後の根性を振り絞って戦うのだ。
 神殿内に突入! ……あれっ、どうしたことだ? 夢でも見ているのか?
 そこに広がる光景は、懐かしのローレシアの城ではないか!
 ああ、帰ってきたんだ……。長く苦しかった戦いも、これで終わる……。
 サマル、ムーン、疲れたろう。ぼくも疲れたんだ。なんだか、とても眠いんだ(BGMは、シューベルトの「アヴェ・マリア」)。
 ……いかん、真っ白に燃え尽きている場合ではない! 普通に考えろ。おかしいだろ。なんでこんなところにローレシアの城があるんだよ。これはハーゴンによる幻想だ! この幻想を打ち破るためのアイテムこそ、ルビスのまもりなのである。
 幻想が破れた後、ハーゴンの神殿がその真の姿を現す。ここでは、バリアーが途切れ途切れに配置されていたり(そのたびにトラマナを唱えなければならない)、鍵を使って扉を開けなければならないのに、その扉が隠れて見えなかったりと、いろいろたいへんである。しかし最も困るのが、先へ進む方法がわからないことである。
 答えを言ってしまうと、この神殿の中には大きな十字架が描かれている部分があり、そこの中央に立って、「邪神の像」を使えばいいのだ。答えを知っていれば難しいことはない。
 答えを知っていればね。
 ところがこれ、何のヒントもないのだ。思いつかねえよ、こんなの。だいたい、邪神の像はすでに使ったアイテムである。もう一度使うなんて予想できねえよな。ラストダンジョンまで来て、こんな罠が。これ以上先に進めず、ここまで来てゲームをあきらめた子もいただろうなあ。後になって「あのとき、クリアできていれば」なんて悔んだりしなかっただろうか。……悔やむくらいに思い入れのある人は、リメイク版でその悔いを晴らしただろうけどね。

現れる3幹部! そして、破壊の神シドー!!

 ハーゴンの城は構造が単純だ。ほぼ一本道。強敵こそ出てくるけれど、ここまで来られるようなローレたちなら、どうということはない。
 ラストダンジョンが単純ですぐに先に進めるというのは、ドラゴンクエストの歴史の中でもかなり珍しい。
 階を上がっていき、4階では敵とエンカウントしなくなる。不気味だ。何かおかしいと思っているうちに、階段を発見。しかしその直前に現れるのが、鬼のような姿の巨人、アトラスだ。ギガンテスの上位種である。打撃一辺倒の単純な奴だが、とんでもない攻撃力を誇り、しかもパーティーの誰か1人に集中攻撃をかけてくる。ここに来て新たな強敵が出てくるというのは、ゲームを随分と盛り上げてくれるものだ。
 この死闘を越え、5階へとたどり着く。しかしここでも、階段の前で猿にも似た悪魔、バズズの出現だ。デビルロードの上位種である。アトラスとは対照的に、魔法で攻めてくるタイプだ。ザラキやイオナズンそしてベホマなど、勘弁してほしい呪文のオンパレードだ。さらに、メガンテまで使ってくることもある恐ろしいボスキャラである。運が悪いと多少レベルが高くても負けることもある。
 バズズをも退け、6階に到着。階段の前で、ローレたちを待っていたのは、最高幹部ともいうべきモンスター、ベリアルだ。アークデーモンの上位種である。イオナズン、炎、スクルト、ベホマなど、やはり多彩な行動をとり、どう考えてもハーゴンより強い。
 これら3体のモンスターは、終盤に次々と現れるボスキャラである。3幹部と呼ぶ人もいる。戦闘BGMこそザコ敵と同じだけど、攻撃すると3幹部の体が光り、効果音も独特のものになるなど、ボスキャラという主張をしてくれている。次作『ドラゴンクエストⅢ』でもラスボス直前にキングヒドラ、バラモスブロス、バラモスゾンビといったボスキャラと連戦となる。『ドラゴンクエストⅣ』では終盤で四天王みたいなのと戦ったりするよな。後のシリーズでは、中ボスは冒険の節目節目に現れるようになっていくけど。
 ドラクエⅡの少し後に放送された『仮面ライダーBLACK』では、同じように終盤に3人の大幹部をばたばた倒していく展開となる。それまでの仮面ライダーシリーズでは、3か月くらいの周期で大幹部が倒され、次の幹部が現れる入れ替えシステムだったのにね。ドラクエの影響を受けたのかなあ、なんてわたしは思ったりもするのだが(たぶん、ただの偶然だ)。
 さて、3幹部との戦闘を終え、最上階にたどり着くと、そこに何やら祈りを捧げている魔物がいる。こいつこそが、われわれが討伐せんと探し求めていた邪教の大神官ハーゴンである!
 とうとう出会った宿敵との決戦! 打撃もイオナズンも甘い息もベホマも使うオールラウンダー。さすがは宿敵……と思ったのだが。
 敢えて言おう。強力な3幹部を倒してきたわれわれの相手をするには、ハーゴンは役者不足と言わざるを得ない。決して弱くはないが、それほど強くもない。戦闘BGMもザコ敵と同じだし。前作の竜王第1形態と似た印象。こんなんでゲームを締めくくっていいのだろうかと心配してしまう。
 倒れたハーゴンは「くちおしや」とか言いながら、最後の力を振り絞って破壊の神シドーを呼んで息絶える。
 そして、脱出しようとしたローレたちの前に現れる魔物こそが、本作のラスボス・シドーなのである!
 やはり前作の「これがラスボス? 弱くないか?」という感覚の再来だった。もっと強いラスボスが待っていたのだ。前作も「正体を現した竜王」というとんでもなく強い真のラスボスと戦ったではないか。
 シドーがまた、衝撃的に強い。攻撃力・守備力・HPともに、ゲームで設定できる最高の値が与えられている。守備力はあのはぐれメタルと同値だ。そのうえ、炎は吐くし、打撃では一定確率で眠らされる。そしてよく語られるのが、ラスボスのくせにベホマを使うことだ。終盤の魔物、ベホマ標準装備だな。この辺がドラクエⅡのシビアなところである。
 どうも、このゲームではモンスターのHPを255だったかな、そこまでしか設定できなかったようで、ベホマを使わないとすぐに戦闘が終わってしまうんだ。実際、運よくシドーがベホマを使わなかった場合、割と簡単に倒せてしまうこともあるらしい。
 とにかく、そういうラッキーな事態はそんなに起こらないので、ベホマを唱えないことを祈りつつ戦う。呪文攻撃が通じないので、ムーンがルカナンをかけ、ローレが打撃。サマルは回復役という役割分担だろう。あまりベホマを連発されなければ、どうにか倒せるはずだ。
 破壊の神シドーは、知能が低いのか、破壊本能だけで暴れる魔物らしい。ゲーム内でも「判断力」という数値が最低に設定されており、対してダメージを受けていなくてもベホマを唱えるらしい。逆に、大きなダメージを受けていてもベホマを唱えないこともあるんじゃないかな(適当)。そこにつけ入る隙があるのではないか。
 ドラクエⅡのシビアさの一部は、割と運ゲー要素が強めだということだな。当時のゲームはこんな感じだったかもしれないけど。
 シドーを倒せば、エピローグとエンディングだ。エンディングテーマ曲「この道わが旅」は、ゲーム史に残る至高の名曲である。これだけ厳しい旅を終えて聞くこの曲は、全国の子どもたちの涙の堤防を破壊し、みんなの心に深く刻まれていることであろう。後でつけられたのか元々あったのかは知らないけど、この曲には歌詞があり、団時朗氏らが歌っているようだ。CDをゲットしたいところである。団時朗氏の歌唱バージョンを聞いたら泣くだろうな。

 以上、長々と語ってきたけど、ドラゴンクエストⅡに関する思い出の数々でした。少年時代にこのゲームに出会えたことを、わたしは感謝したい。これからの人生、つらいことがあっても、「ローレならどうする? サマルなら何と言う? ムーンならどう考える?」と心中で問えば、打開策が見つかり、乗り越えられるように思う。
 改めて言おう。
 ドラクエⅡよ、ありがとう。
 これからも、われわれの心の中で輝いていてくれ。

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