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professional feeについて思う

 小さいバーが好きだ。新居に移転すると必ずバーを探すし、出張先でも行き当たりで立ち寄ったりする。カウンターでウイスキーをのんで適当に話をする。2度、3度と立ち寄るまでは自分の話はあまりしない。バーテンダーや他のお客さんの話を聞いて頷いている。自分の知らない世界をみるチャンスだと思っている。先日、ある町で面白いバーに入った。その後、考えたことについて述べる。

 6帖くらいの小さなバーで、ハットにヒゲの初老マスターの店だった。行きつけの居酒屋がしまっていて、帰ろうかと思った時にふと目に入ったので立ち寄った。いつも通りウイスキー、なぜかアイラ、スペイサイドがなかったので、タリスカーを注文してマスターの話に聞き入った。他のお客さんはいない。聞くところによると、マスターは若かりし頃、ニューヨークでストリートマジシャンをしていたらしい。そのチップで生計をたてていたとのこと。これぞバーの醍醐味、話を聞き入った。そのマジックを見せて欲しいと思った。昔の僕なら頼んでいただろうし、その方が盛り上がったかもしれない。でも、頼まなかった。そして、その日はそのまま終わった。ベイクドボテトサラダが自分では真似できない美味しさだった。
 
 職業柄、健康に関する質問を良く受ける。どこどこが痛い、あの健康法は正しいのか?などなど。昔から知っている人と久しぶりに会って聞く分には全く問題ない。大抵の場合、特に話題がないとか、僕をある程度認めてくれていて、前から思っていることを聞いてみようなどといった動機だと分かるからである。そのような人からは僕が小さい頃から存分に可愛がってもらっているし(ほとんどの場合は食べ物でかわいがってもらって、その詳細は別に譲る)、その懐かしさから出てくる話と捉えている。問題はお酒の席で居合わせた、たまたまの人からの話である。話の流れで僕自身の話をすると、矢継ぎ早に聞いてくる場合がある。本当に困っている内容であれば病院に行けばいいし、そんな時は真摯に対応させて頂くつもりである。しかしながら、ほとんどの場合、「ついで」の話題、要するに本気の話ではない。それが分かっていながらも、自分としては、いい加減な対応はできないジレンマに陥る。プライベートでウイスキーを楽しんでいる場が台無しになる。

 feeとは専門職に対する謝礼と習ったが、別に謝礼を求める訳ではない。本気で困っているか?が問題である。本気では本気で対応する。その気持ちのやり取りをprofessional feeないしはadvanced professional feeと位置付けたいと思っている。professionalismを語るには僕には程遠いとは思うが、その領域に土足で上がり込むことは、全体としての品位を下げることになる。 

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