見出し画像

さいたまスーパーアリーナに移住したい(全日本フィギュアスケート選手権2021)

2021年12月23・24・26・27日と、さいたまスーパーアリーナで全日本フィギュアスケート選手権大会およびメダリスト・オン・アイスを観戦しました。その記憶の記録。

なお、現地観戦の叶わなかった25日のフリーダンス・女子フリーに関してはまだ一部しか演技を見ることができていないのですが、年が明けてしまいそうなので現時点の感想を書くことにします。。。。しのびない。

まずはペアの柚木心結・市橋翔哉組。今年はペアカテゴリーが開催できる!!という時点でありがたみMAXだったのにこんなに素敵な演技を見せてくれて拝むしかない。特にFSのエクソジェネシスは二人の同調性が曲と調和していてよかった。どうか長く続いてほしい。

続いてアイスダンス。
今季結成の高浪歩未・西山真瑚組のリズムダンスにハートを撃ち抜かれた。キラキラって目に見えるんだ。西山真瑚くんはシングルの演技も素晴らしいがやはりアイスダンサーである。あれだけ溌剌としたパフォーマンス力を持ちながらも決して俺俺俺!にはならないのが西山くんの凄さ。この先も期待しかない。

しかしやはりリズムダンスといえば村元哉中・髙橋大輔組のソーラン節/琴。私このプログラムが大好きなんですよ。今季一どころかリズムダンスという枠組みが創設されて以来、ダントツで一番好き。ストリート音楽のテーマにソーラン節を選んだ時点でもう大天才なのに、それを稀代のダンサーふたりがスタイリッシュに舞い踊るだなんて、しかもその滑りが超絶パワーアップしてるだなんて。大好き。五輪で多くの人に見てもらいたかったプログラムだったけれど、今大会では本来の滑りが見せられなかったかな。。。。でも四大陸と世界選手権であと2回見られるのは嬉しい。楽しみ!

アイスダンス、とりわけ世界トップレベルの芸術性の高い演技を見ていると、つい競技ということを忘れてしまいがちだ。しかし、今大会における村元・髙橋組の緊張感や、小松原美里・尊組のFDでの燃えるような意志の強さは、アイスダンスがスポーツであることを痛いほどに思い知らせてくれた。

生で見て初めてわかるものはたくさんある。今大会特に生で見て衝撃が大きかったのは住吉りをん選手と千葉百音選手。
まずは住吉さんの成熟した表現。私はジュニア選手に背伸びは必要ないと考えているのだが、住吉さんのそれは背伸びではない。巨大な等身大なのだ。そもそもジュニアデビュー時から音楽の機微を表現することには長けていた選手だが、そこに感情が乗ったらもう、もうね。指先ひとつに意思が宿った表現から目が離せなかった。

千葉百音さんについて、恥ずかしながら彼女の演技を見たことがほとんどなかったのだが、SPを見て度肝を抜かれた。ディープエッジなのに力みがなく、なめらかに深いカーブを描いていく。なんというスケーティング。将来的にカオリサカモト並のスケーティング強者になることを期待しています。

そんなカオリサカモトさんはまた一歩、後続を突き放して先へと進んだ印象。圧倒的なスケーティングと本番での強さは勿論だが、24日、女子フリーの公式練習での姿が記憶に残っている。曲かけ練習、他の選手は部分的に確認をしていくなか(それが一般的なのだが)坂本選手は全要素ぶっ通しで滑りジャンプオールクリーン着氷。おそらく普段から数えきれないほど通し練習をしているのだろう。人が次元を違えていく道程を目の当たりにした気がした。

熾烈を極めた女子シングルの代表争い。私の心を掴んだのは、やはりと言うべきだろう、樋口新葉さんである。
ショートプログラムはステップシークエンスの始まりがよく見える席だったのだが、あまりにもいい表情で滑り出す彼女の姿を見て涙が出てきた。フリーはリアルタイムで見ることが叶わなかったが、あのライオンキングは結果を知ったうえで見ても魂が震え、嗚咽を抑えられなかった。樋口新葉のスケートは凄い。スポーツや芸術の域を超えた、もっと原始的で、根源的な何か。生命の祝福。命の根っこを揺さぶるパワーを持つ、唯一無二のスケーターだ。
最近気付いたこと。私の中で、極めて純粋に"この人のスケートが好き"という気持ちだけを煮詰めたとき、そこには樋口新葉と宇野昌磨とネイサンチェンが残る。この3人は全く違うスタイルを持つものの、洗練された演技の中にどこかプリミティブなものを感じるという点では共通している。

層の厚い日本女子。これからも様々なスケートを見せてほしい。競技はもちろん、メダリストオンアイスでもそう思わせる演技がたくさんあった。宮原知子選手のリラ・アンジェリカ。彼女が長い長い時間をかけて磨き上げてきた音楽性と多様な音楽とのハーモニーをこれからも見たい。三原舞依選手のNever Enough。このエキシビションとSPのI Dreamed A Dreamでは、彼女のこれまでにない力強い一面が垣間見れた気がする。もとよりオリハルコン並みに硬い意志の持ち主だと思うので、そういう強さをもっと見てみたい。松生理乃選手のSay Something。一時期流行りまくったSay Somethingだが、音楽をまっすぐに捉えた彼女の演技はかえって新鮮だった。彼女が所属するチームはあまりこういうポップスを競技に選ばなそうなイメージがあるが、是非もっともっと色々なジャンルの表現を見せてほしい。

しかし、メダリストオンアイスというのは様々な意味で残酷なアイスショーである。

結果を出した人間しか出演できないアイスショー。しかし、競技の結果とアイスショーでのパフォーマンスの評価は必ずしも比例しない。怒濤の全日本を経て疲れきった観客を楽しませるのは簡単ではない。

そんな中で一際輝いていたのは、浪速のエンターテイナー・友野一希さん。たとえお互い声が出せなくても、観客と共鳴して盛り上がれる、そんな随一のパフォーマー。まだまだ現役の世界で輝いてくれると思うけど、彼は引退後もショースケーターとして欠かせない存在になるんじゃないかな。

男子でひときわ印象に残っているのが、三宅星南選手の大躍進だ。星南選手は昨年の全日本でもひとつ殻を破った素敵な演技を見せてくれたのだが、今年はさらに一殻二殻ぶち壊す演技で心を鷲掴みにされた。ジュニア時代の彼は少々荒削りながらも真に迫った表現が持ち味だったのだが、いいところはそのままに荒さが美しさへと変貌。そしてジャンプも、特にトリプルアクセルが明らかに変わった。GOEもりもりしたくなる幅と高さそして安定感。苦手だったスピンも安定してきたし。昨シーズンのロミオとジュリエット(aimer)が素晴らしすぎてもうこれ以上ないんじゃないかと思っていたけれど今シーズンのUnchained Melodyと白鳥の湖もまた素晴らしいプログラム。青さを孕む刹那的な美しさ。

いやあ~~三宅星南くんがシニアのチャンピオンシップ代表、オリンピック補欠ですよ。岡山三銃士(三宅星南、島田高志郎、木科雄登)推しとして感慨しかない。 
このお三方の共通点は、情熱的ながらも気品があるという点だと思う。島田高志郎さんはステファン・ランビエール氏の元で気品の部分をぐんぐんと伸ばしていらっしゃるが、私は彼の情熱的な部分が大好きなので、今大会の演技でもそれが見れて嬉しかった。今の彼が外部の振付師のプログラムを滑るところを見てみたいという気持ちがやはりある。同門の年上の後輩U氏は(元々ボツになる予定だったプロとはいえ)宮本賢二さんに振り付けてもらっているし、どうにかできませんかね……?
木科雄登くんは今回怪我を押しての出場となり本来のスケートを見ることは叶わなかった。彼の音楽の捉え方、音に対する感受性と、キャシーリードさん振付との相乗作用は本当に素晴らしいのだが。どうかゆっくり休んで少しでもよくなってほしい。

キャシーリードさん振付との相性といえば、本田ルーカス剛史選手。FSのブルースメドレーが心のドンズバど真ん中にぶっ刺さりました。彼は感情を前面に出すタイプではなく、ごくごく自然に、しかし繊細に音楽を表現することができる選手。その感性に惚れてます。

さて、国際レベルで活躍する選手はもちろんのこと、学生スケーターの集大成が見れるのも全日本の醍醐味。男子フリースケーティングの日、最初に泣かされたのは石塚玲雄選手の演技。最初で最後の全日本フリースケーティング。楽しく終わりたいと選んだ雨に唄えば。広い広い会場、天まで届けと歌うような喜びのステップが、400レベル14列までしっかり届きました。あの瞬間きっと忘れない。

前述の通り、フィギュアスケートを生で見てわかることは多い。たとえば須本光希選手のスケーティング。つるつるとなんの力もかからず滑っていくスケーティングは流水を思わせる。あるいは、長谷川一輝選手の構成の素晴らしさ。欲しい場所に欲しい動きを見せてくれると想像以上にテンション上がる。FSのコレオシークエンスなんて最高。そして、鍵山優真選手と佐藤駿選手のジャンプのクオリティ。本番もさることながら、公式練習での鍵山選手の4S、佐藤選手の4Lzのお手本ジャンプっぷりには目を見張った。

何よりも会場だからこそ実感できたのは、宇野昌磨選手と羽生結弦選手の、圧倒的空間支配力。こればかりは理論では説明できない、存在感の大きさ。氷上に一人立った瞬間、音楽が流れた瞬間、全ての視線を集め、静けさを支配する力。瞬きどころか呼吸すら忘れてしまうような時間。

宇野昌磨さんは足の状態のこともありかなり心配な気持ちでいたのだが、彼の強さを忘れていた。宇野昌磨さんはこういう時いつにも増して冷たく鋭く、迂闊には近づけないような、体温を全て奪われるような、そんな演技を見せるのだ。私は自分を恥じた。そうだ。宇野昌磨さんは強いんだ。とにかくしばし休んで治せるといいな。

最後に書かずには終われないのは勿論、羽生結弦さんのこと。

2年ぶりに羽生結弦の実体に触れて感じたこと。

言葉にしたいけど言葉にならないできないこと全て簡単にまとめてしまうとすれば、私は、羽生結弦のことが好きだ。

どうしようもなく好きなのだ。

それは原初で、永遠で、絶対で。他の何も信じられなくても、いくら信じられることが増えても、変わらないこと。出会えた運命、生まれてきたこと、それだけで奇跡だと思えて、この生命の理由になる存在。

羽生結弦さんは、フリーの演技中、これまでの道のりを振り返り、あと何度この景色を見られるのだろう、と考えていたという。

その言葉を聞いたとき、驚いた。私も同じことを思っていたから。ひとつジャンプを降りるたび、このジャンプをこの目で見ること最後かもしれないと思って。これまでの軌跡が浮かび上がっていく。コレオシークエンスで涙が溢れてきて、止められなくて、それでも絶対に目に焼き付けたくて。もしも5年前なら、あんな凄い演技を見たら笑ってしまっていただろう。凄すぎて。あの表情は、5年前と何も変わらなくて。これから先、もしかして、変わらないようで何もかも変わったこの道、少しだけでも続きを見せてくれるのかな。そう思ったらまた涙が出てきて。その目に映る美しい景色のほんの一部にでもなれていたらきっとそれだけで生まれてきた意味がある。何があっても、何もなくても。

あ、あと序奏とロンド・カプリチオーソはめちゃめちゃヤバいですね。あれを世界で初めて見てしまった。公式練習の4A<<dfもこの目で見てしまった。大丈夫?またまた歴史の重要参考人になっちゃったね??暗殺されない??


しかしまあ、さいたまスーパーアリーナがどんどん聖なる地となっていく。

思えば初めて競技会を見たのもたまアリ。今まで現地観戦した中でもっとも記憶に残っているのもたまアリ。2014年と2019年の世界選手権。

たまアリは良い。バカでかい。広い。どの席でも見やすい。2023さいたまワールドもきっと神大会になるでしょう。

と、その前に、来年はいよいよ2022年。
4年間、それ以上、生きる時間の全てを懸けてきた選手たちの思いが実りますように。どうか皆様健康で。

最後にこれだけ言わせてください。

北京行きたかった!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!ファッキンコーーーーーーヴィッド!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

よいお年を。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?