武道館の追憶/3/16
本日は、本日の日記ではなく、以下の日記の続きを書きます。
2020年11月11日・12日に行われたCreepy Nutsワンマンライブ「かつて天才だった俺たちへ」武道館公演。
私は運よく先行販売でチケットを入手し、初日に行くことができたのだった。
普段であれば、ライブやイベントの後には何かしら感想を記録するようにしている。しかし、この武道館ライブについてはそれをしなかった。すぐに言語化してしまうのはなんだかもったいないような、自分の中で大切にしていたいような気がして。
ではなぜこんな題で書き始めたのか。それは来る3月17日に同氏のぴあアリーナ公演に行く予定だから。記憶が上書きされてしまう前に残しておこうという魂胆である。
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尋常ではない緊張に見舞われていた。
フィギュアスケートの試合ならともかく、ライブでこんなに緊張したことなんてない。
10ヵ月ぶりの"現場"だからか。
いいや、やっぱり。
客席を見渡す。
ここが、特別な意味を持つ場所だからだ。
会場内を歩き尽くした私は流れているBGMをshazamによって特定する作業に集中していた。全てが今まで武道館に立った、あるいはこれから武道館に立つHIPHOPアーティストの曲らしい。激アツ。
やっと訪れた開演時間。暗転。客席からはつい声が漏れる。みんなライブは久しぶりで、新しい様式に慣れていないのであろう。仕方ない。
一曲目。
闘志みなぎるイントロとともに、ふたりがステージへとせり上がってきた。
その瞬間、心臓がイカれた。
一曲目スポットライト!?!?!?!?!!!!??!?!!!!!!
聞いてないよ!!!!!!初日なんだから聞いてなくて当たり前だよ!!!!!!!!!!!!!!!
度肝を抜かれた。
これまでは「セトリのネタバレをしてほしくない」という気持ちに共感できなかったけど、今ならわかる。やべえセトリってこういうことだ。
スポットライトを初めて聴いたときも、衝撃を受けたものだ。今までふたりがアイデンティティーにしてきたものを、踏み台にして、乗り越えていく歌。こんな曲を作ってしまったら今後のハードルが上がるのでは!??と要らぬ心配をしていたことを思い出す。本当に要らなかったよ。
その後もライブ終盤かと思うようなハードな曲が続く。高まる緊張を緩和したのが「ヘルレイザー」だ。Rさんが「お前ら~~~!!!」と叫んだ瞬間、あっ最高……って実感した。
次々と代表曲が披露される中、徐々に強ばった身体も解れ、音楽を楽しむことができるようになった。演者側の感想のようだが、初めから私はただ見ているだけである。
なお、この時点ですでに松永さんの涙腺は危うかったようで。いつも楽しいお喋りをしてくれる松永さんが本当に黙っているのでかなりおもしろくて癒された。
そんな私の心臓を再びぶっ壊してくれたのが「サントラ」だ。
私はこの曲、特にこの曲のライブパフォーマンスに思い入れがあった。8月に開催されたオンラインリリースライブ。当時無気力状態だった私を甦らせてくれたのはこの曲だった。
全て好きなのは大前提として、2バース目が終わり松永さんのスクラッチが入りどんどん疾走感が増していくところ、あそこが本当に脳髄と心臓に来るのです…………。
それにしても武道館にぴったりのセットリスト。ほとんど音源でしか聞いたことのなかった曲もあったので、現在のパフォーマンスを見ることで変化を感じることができてエモかった。
最後を飾るのはもちろん、「かつて天才だった俺たちへ」。
曲前のRさんのMCが心の底まで染み入った。
ライブという非日常。少しの間、全てを忘れられる。最強な気持ちになれる。でも、日常に戻ったとしても、外に出ても、俺たちは無敵だって、そう思って生きていこう。
ああ、一人じゃない、と、思った。
「よふかしのうた」で「もれなく社会不適合者」と言われたとき。
「たりないふたり」で「君にも何か足りない」と言われたとき。
アンコールの「Bad Orangez」で「同じ木箱で分け合った痛みなら それを知る俺たちなら皆味方」と言われたとき。
ここにいる人たち、みんな、彼らが好きで、どこかしら、なにかしら、共感して、ここにいるんだよな。
こんなにいるんだ。
たりないわたしは、ひとりではなかった。
ふたりきりでやり遂げたライブ。
華やかな演出は削ぎ落としたシンプルなステージ。
それでも耳だけじゃなく、目にも焼きついている。
アンコールの声に代わる美しい光の海と、その中から現れるへらへらしたふたりの笑顔、高みに登ったDJブース。初披露のルーティン、かっこよかったなあ……。
アンコールのラストはグレートジャーニー。
また絶対にここに戻って来る、戻って来れると確信した。
いつかどこかで読んだ文章。
「ふたりのかっこよくないところに共感してるからこそ、ふたりのようにかっこよくなりたい」
いつ誰が書いたのか、もうわからない。
でも、この文を見た瞬間、衝撃を受けたことを覚えている。
いつからか、この考えを自分のもののように心に据えるようになった。
武道館を噛み締めるごとに。それは、願望ではなく目標へと変わった。
わたしも、ふたりのようにかっこよくなる。
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