Review-#016 『宇宙戦艦ティラミスⅡ』

第2期に突入してもやっぱりアホだった。


 「アニメを観たので感想を書く」コーナー第7弾。以前、ショートレビューで取り上げた『宇宙戦艦ティラミス』の続編である『宇宙戦艦ティラミスⅡ』を紹介していきます。「Ⅱ」と書いてツヴァイと読みます。

 まさかのアニメ化を果たしたかと思いきや、それだけじゃなく舞台化が決定し、おまけにアニメ第2期も放映が決まった2018年は、まさに「第二次ティラミスブーム」が発生した年であったと言えます。まさかこの作品がこんなに各メディアで展開されるとは思っていなかった…。
 期間限定で『スーパーロボット大戦X-Ω』に参戦が決定した時は何を血迷ったのかと思いました。…本家の方に出してもいいのよ?

 本作は第1期と地続きであり、この記事で新たに書くこともそんなに多くないので短めの文章になっています。「『宇宙戦艦ティラミス』って何? 『ヤマト』みたいなやつ?」と、作品のことをよく知らない方は先にこちらの記事に目を通しておくと良いかもしれません。それではスタート。

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<今回紹介する2018年秋アニメ一覧>
SSSS.GRIDMAN
青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない
やがて君になる
となりの吸血鬼さん
うちのメイドがウザすぎる!
抱かれたい男1位に脅されています。
宇宙戦艦ティラミスⅡ ←いまここ
ゾンビランドサガ
--------------------------------------------------------------------------------------宇宙戦艦ティラミスⅡ (2018年10月-12月)

アニメーション制作:GONZO
監督:博史池畠
シリーズ構成:佐藤裕

<TVアニメプロモーション映像>

<☟原作コミックの最新刊はこちら>
宇宙戦艦ティラミス (くらげバンチ連載[既刊7巻]・2015年10月~)

原作:宮川サトシ
漫画:伊藤亰

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【作品紹介】"相変わらず"で安心する

 第1期の最終回で、宇宙戦艦ティラミスのエースパイロット、スバル・イチノセは自身の専用機「デュランダル」を失ってしまう。
 共に地球に降り立った因縁の兄、イスズ・イチノセから「鉄クズ」扱いされたことに激昂するが……。


 ギャグアニメとしては重い引きとなった第1期の最終回終了後に第2期の放送が決定しましたね。ショートレビューでは「2期放送決定までがギャグ」なんて書きましたが、この流れならばそれまでしょーもないギャグを飛ばしていた『宇宙戦艦ティラミス』も方向を切り替えて、戦場に生きる人間たちの熱いドラマが展開される――

 わけがなかった。

 元々引きこもり体質だったスバルは「コクピット依存症」を患っていたのです。そして今回デュランダルを失ったことにより禁断症状が発生し、意識も呼吸も無くただ両手をグーパーしている「なんか変な感じ」になってしまいました。もうシリアスが崩壊した! 1分ぐらいしか持たなかった!

 試しにイスズが持っていたスニッカーズをスバルに握らせてみるとあら不思議、意識を取り戻したではないか。しかしそれだけでは足りないのか、スバルは本能の赴くままにコクピット感のある空間へと向かうのでした。
 …原作コミック未読者で、第2期がシリアスまっしぐらなストーリーに向かうことを不安視していた人がどれだけいるのかは分かりませんが、ね? 安心したでしょう??
 相変わらずイスズは優しいお兄ちゃんであり、第2期でもそんなに兄弟喧嘩はしていません。微笑ましい光景です。

 第1期では活躍の場が少なかったメトゥスの民の出番が増えただけではなく、新キャラも登場します。スバルとイスズの父、ソウイチロウ・イチノセや高いユニヴァース感覚と戦闘力を秘めた女性、フェイ・キャラウェイ…そしてメトゥスの民の最高司令官であるエスカレド・キャデラック。
 一癖二癖ありそうなこの人たちも、当然ながらしょーもないギャグの洗礼を受けることになります。ちょっと不穏な引き、緊張感漂う登場の仕方をしても、直ぐにそのシリアスをぶっ壊すのがティラミスクオリティなのです。


 制作スタッフは前期と同じ。2期だからって予算がアップしているかと言われると…声優さんの顔ぶれ的には上がったと思います。
 相変わらず豪華な声優陣のティラミスですが、新キャラも当然ながら有名なお方ばかりです。
 一番わかりやすいのだとエスカレド・キャデラックでしょうか。cvが池田秀一さん。何を演じていたのかは、説明するまでもないでしょう。アレです。通常の3倍の人です。

 まぁ確かに池田さん、ギャグもやるけど。でも最高司令官ポジのキャラでこの人って、どう考えてもあの仮面の人を意識させようとしてるよね…しかしイメージにピッタリなのも事実であり。そうですね、「ぽっぴん!」位のテンションの池田さんを拝めるかと思います。
 ちなみにキャデラックさんには妻がいますよ。でも潘恵子さんではないです、浅野真澄さんです。その代わりと言ってはなんですが、キャラウェイを演じるのは潘恵子さんの実娘である潘めぐみさんだったりして。

 相変わらずの10分アニメなのでサクサクと観れます。ちょっと変わった点と言うと、OPとEDでしょうか。
 OPは第2話から新テーマ「Gravity Heart」に変更されています。まるでロボットアニメで流れているみたいなカッコイイ曲です。ただ「ティラミス」をどっかに入れて欲しかったな。
 EDは第1期と同じ曲ですが、何故か原作者の宮川サトシ氏によるショートドラマが挿入されています。例に漏れずしょーもない会話が15秒繰り広げられます。


 どうやら第2期でアニメは終了する模様ですね。ちょっと寂しい気もするけれど、そういうことで終盤では宮川氏監修のオリジナルストーリーが展開されます。
 綺麗に終わったし、相変わらずのしょーもなさではあるんだけれど…。やはり原作のノリを再現するのは難しいのでしょうか、『ティラミス』のギャグとは方向性がちょっと違うかな? と思いました。もっと何か…こう! 言葉で説明すると陳腐になってしまうけれど、小市民感溢れるギャグなのがこの作品の特徴だと思います。改めて原作における一貫性の高さが窺えるエピソードでもありました。
 あ、でもマイバッハの「ユニバァァァス!!」は好き。杉田さん…。

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【総括】1期の『ティラミス』がお気に召したらおかわり、いかがです?

 評価はGREATですね。ほぼほぼ前作から変わらなかった要素の方が多いので、評価も大体同じという結果に。

 前期がティラミスクルーを中心に展開されるストーリーだとしたら、今期はメトゥスの民側の日常を主に描いたストーリーだと言えるでしょう。だからティラミスクルーの出番は『Ⅱ』だと減ったかな。前作と合わせて、ちょうどいいバランスになったとも考えられます。

 何はともあれ第1期のノリが肌に合えば、この『宇宙戦艦ティラミスⅡ』もきっと楽しめるはず。舞台設定はかなり大真面目だけれど、そこで繰り広げられるのは小市民的ギャグのオンパレード。1話あたりの尺も短いため、ちょっとした時間で肩の力を抜きたい時にはおすすめの一作です。

 余談ですが、ティラミスの語源は「元気づける」です。アルファベットで書くと"tiramisu"ですが、"tira"は「引っ張る」を意味する"tirare"の命令形、"mi"は「私」、"su"は「上に」のイタリア語です。「私を上に引っ張って」、つまり「私を元気にさせて」という意味になるんですね。昔『トリビアの泉』で紹介されていたこともあったっけ…。
 強壮剤由来の名前なので意味深に感じちゃう方もいるかもしれませんが、食べると元気になるデザートであることには違いありません。私はあんまり食べたことないんだけど。

 まぁそんなわけで、『宇宙戦艦ティラミス』も観れば元気になれると思いますよ。しょーもないギャグではありますが、大いに笑って疲れを吹っ飛ばしてみてはいかがでしょうか。


〈了〉

©宮川サトシ 伊藤亰・新潮社/「宇宙戦艦ティラミス」製作委員会