旅の途中

これまでの人生において、旅の終わりは、いつも寂しさを伴った。友人と別れた後、別々の改札へと消えて行ったその背中を思い返しながら、一人地下鉄に揺られている。家に帰り、パソコンの電源をつける。今日を終わらせないように抗うが、戻らない時間を知る。そうやって旅は終わる。

一泊ニ日の旅程が終わり、浅草に降り、そのまま二人で夕食を取った。明日からまた普通の生活が始まるから、帰りに牛乳と食パンを買っていく必要があると気づく。地下鉄に乗って、自宅の最寄りへと向かう。撮った写真を見せ合い、気がつくとあと二駅になっている。

二日しか離れていなかったのに、改札を出た後の景色がどうも久しぶりに思えた。駅前のコンビニを通り過ぎ、少し先のドラッグストアで必要なものをカゴに入れてゆく。けれどもなぜか食パンがなかったから、牛乳やその他のものを買い、僕たちはコンビニへ戻ることにした。

コンビニへ着くと、僕たちは食パンと、そしてなんとなく目についた旅行雑誌を買った。次に行く場所を、明日からまた探そうと思った。

帰り道を歩きながら、次はどこへ行こうかとか、次は何が食べたいかとか、そんなことを話し合っていた。また一泊二日でもいいし、遠くへ行くなら、三泊くらいしてもいい。僕は沖縄や九州に行きたいと思っていると言った。楽しかったねと、次はどこへ行こうかが、何度も繰り返された。旅は終わっている。旅は終わっているが、寂しさはなかった。

もうじき部屋に着く。そうしたらあとは荷物を片付けたり、シャワーを浴びたりして、仕事の準備をし、眠るだけだ。旅は終わっている。あるいは今、終わってゆく。そして今日が終わる。人生が終わってゆくことを、こういう時にこそよく理解できる。けれども、楽しかったと思う心を、布団まで持ち帰ることもできる。疲れもあるから、きっと僕たちはぐっすりと眠るだろう。それで良いと思った。そう思えることに僕は驚いていた。

部屋に着き、リュックサックを床に下ろした。先にシャワーを浴びさせ、待っている間、僕は荷物を整理している。帰って来たんだなぁと思うけれども、一人にならなくて済むことが何よりも嬉しかった。

何かが終わっても、終わらないでいてくれる人生があることを、続いていてくれる生活があることを、ありがたいと思った。

そして久々に文章を書こうと思い、タイトルだけを書いた。少しして、交代の声がかかり、僕もスマホを置いてシャワーを浴びに行く。旅の途中、人生と、ありがとうのこと。

備忘録
2023年7月23日から24日の間、栃木県へ旅行に行きました。暑い二日間でしたが、天気がとても良く、鬼怒川のライン下りは水飛沫や風が涼しくて、とても楽しかったです。

2023.07.27 靄篠

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