子供の心を知る人よ 映画「カモン カモン」
公 開:2022年
監 督:マイク・ミルズ
上映時間:108分
ジャンル:ヒューマン/ドキュメンタリー
子供っていうのは、時に大人が、はっとさせられるような、真実をついたことを言ってきたりします。
時には、それがたんなるワガママに見えるときもあれば、複雑にからまってしまった人間関係を修復するきっかけになったりと、その存在の影響は様々でもあります。
「ジョーカー」で凄まじいまでの演技をみせたホアキン・フェニックスが演じる「カモン カモン」。
こちらは、「ジョーカー」とは別の意味で、真実をついた作品となっています。
大人と子供
ホアキン・フェニックス演じるジョニーは、子供にインタビューを行うラジオ局のジャーナリストです。
「スーパーパワーが手に入るとしたら?」
質問を重ねていって、子供たちに、考えていることを教えてもらう、というものです。
そのインタビューは、ドキュメンタリー的に撮影されており、実際のものと思われますが、汚れ切った大人からすると、耳に痛いぐらいいい言葉ばかりなのです。
本作品においては、子供も大人も勿論いるんですが、お互いがきちんと対等に話をしようとすることによって、お互いが成長していく物語となっていて、地味ではありますが、非常によい作品となっています。
子供は小さな大人
「孤児だとしたら」
ウディ・ノーマン演じるジェシー少年は、物語の前半は、気難しくも、生意気な子供にしか思えません。
ですが、その本質を突いた問いかけに、主人公は時に黙り、時に、感情を露わにするのです。
子供だからといっても、彼らは大人のことをよく見ています。
ストレスをためた母親がどうやって、ストレスを解消しているのか、とか、大人たちがどうして、ちゃんと話し合いをしないでいるのか、とか。
大人は辛いよ
ホアキン・フェニックス演じるジョニーは、妹との関係が、微妙にこじれています。
介護していた母親が亡くなったあたりから、彼らの関係は怪しくなっていたわけですが、それだけではなかったりもします。
「なんで、話しをしないの」
と、ジェシーは言います。
電話ではジョニーも、ヴィヴも話はしているのですが、関係を複雑にしていることに対して、話し合うことができないでいたのです。
自分のココロの中ものぞく
「カモンカモン」は、特別なことがおきる映画ではありません。
基本的な構造としては、妹と兄のこじれた関係が、甥と伯父と過ごす数日間によって改善されていく物語であり、よくある物語の関係性でもあります。
事件が起きるわけでもなんでもありませんが、見ていて飽きるようなこともありません。
ウディ・ノーマンと、ホアキン・フェニックス演じる二人の、良くも悪くも心地よいやり取りがあるのが一番の要因でしょう。
子供に対してもキチンと謝る。
大人だから、とか、子供だから、といった垣根がとれていき、最後には、二人が年の離れた友達、になっていくのが心地よい作品となっています。
こんな伯父さんがいたらよかったのに、とか思ったりもするかもしれません。
あるいは、子供を相手にするのはホント、疲れるんだな、と思ったりもするかもしれません。
精魂尽きた、というのは、共感する人も多いのではないでしょうか。
自分を知る為にも他人が必要だったりするので、そういった意味では、この映画は、モノクロの中に、自分自身の心の中も逆説的に覗かれるような、そんな作品になっているところもまた、魅力なのです。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?