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路上生活少女は、したたか。映画「ブランカとギター弾き」

公  開:2015年
監  督: 長谷井 宏紀
上映時間:75分
ジャンル:ヒューマン/ドラマ
見どころ:飛べない鶏

鶏もヤギもきっと、飛べるメ~

「なんか、リアルな迫力があって目が離せない

そんな魅力のある映画っていうのは、たびたびあるわけですが、「ブランカとギター弾き」もまた、そんな映画の一つです。

親がおらず、路上生活を余儀なくされている子供たちの、過酷ながらも、力強く、時にずる賢く生きる姿を描いたものとなっており、現地にて、監督が2か月かかりでイメージに合う男の子を探したというセバスチャン役の少年には、演技以上のものを感じられます。

タイトルにも載っているギター弾きの老人、ピーターは、本人も実際に盲目であり、ストリートミュージシャンとして放浪している人物となっており、キャスティングの時点で、ほかで真似できないやり方をしているも特徴です。

イタリア映画で、フィリピンが舞台。

ほとんどの出演者が、現地採用となっておりまして、映画とそれほど変わらない厳しい生活をしている人たちに出演料を渡すと、どんどん着ている服が良くなっていく、なんていうエピソードは、是非、映画を見た後で調べてみて欲しい事実だったりします。

「母親、買います」

という張り紙をして、3万ペソを稼ごうとする少女が、盲目のギター弾きピーターをお金稼ぎに利用すると思いつくものの、彼女の求めていたものが、母親ではない、というのは、見ているうちにわかってきます。

家族の繋がりは、必ずしも血のつながりだけではない、というテーマでいえば、2018年に公開された是枝裕和監督「万引き家族」を思い出すところです。

お金を拠り所にしていたブランカが、お金以外のものに価値を感じていく姿は、よくある話の筋かもしれませんが、納得できるところです。

また、現地のごちゃついた感じであるとか、リアルな雰囲気というのは、現地のことを知っている監督だからこそできるものといえます。

現地採用の俳優を演出するのが劇的にうまい監督といえば、「ノマドランド」でアカデミー賞もとったクロエ・ジャオ監督が思い出されるところですが、「ブランカとギター弾き」の監督は、日本人の長谷井宏紀監督です。てっきり、ドキュメンタリー系出身の海外の監督が撮影したものなのかと思いながら見ていたので一人で驚いていました。

映画において、役者の演技が作品に与える影響は巨大ですが、現地の人たちの力強さを汲み取ることができる作品という点で、見逃せない一作品となっています。


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