冴えない男女はお好き? 映画「リード・マイ・リップス」
公 開:2001年
監 督:ジャック・オーディアール
上映時間:115分
ジャンル:スリラー/クライム
見どころ:序盤の社会人あるある
映画といえば、美男美女がでてきて、常人では考え付かないような緻密な計画を、度胸と機転で乗り越える。
そんな物語が当たり前だと思っていないでしょうか。
「リード・マイ・リップス」は、いわゆる美男美女ではなく、冴えない男と、冴えない女が、大金を手に入れようとする物語となっています。
ぼさぼさ髪の独身女性カルラが、机の上にコーヒーを机にぶちまけられ、社長に呼ばれているのにスカートは汚れ、雑用ばかりやっていて手が回らない中、「助手雇っていいよ」と言われるところから始まります。
募集に来たのは、ヴァンサン・カッセル演じる刑務所からでてきたばかりの男ポールです。
カルラは、だめんずに弱いらしく、明らかに雇っちゃいけないタイプの人間なのにもかかわらず、ポールを雇い、色々世話をしてあげます。
あまりに良くしてくれるので、勘違いしたポールは、身体でお礼をしようとしてしまうほどです。
物語の前半は、そんなカルラの捻じれた自意識と、社会人デビューできなかった彼女が、だめんずではあるものの特別な異性(男性)がいる、という精神的な優位性によって、同僚や友達に対して、マウントをとって優越感に浸るということをやっています。
また、カルラは聴覚に障害があるのですが、その結果、読唇術を身に着けています。
その特技に目を付けたポールは、マフィアのお金を横取りする計画に使おうと考えます。
「プラダを着た悪魔」とかだと顕著なのですが、主人公のアンディが、自信や能力を身に着けるにしたがって、観客の目からみてもすごく綺麗になっていくのがわかります。
「リード・マイ・リップス」の主人公であるカルラも、たしかにキレイにはなるんですが、どこか垢ぬけません。
むしろ、背伸びしている感じがひしひしと伝わってきます。
お金の強奪計画も、どこか場当たり的だったりする素人くささもあって、映画でありながら、現実くささが漂ってくるところがポイントとなっています。
冴えない主人公が、同僚や友達、果ては常識まで吹き飛ばして、だめんずと一緒にどこへ向かっていくのか。
でもね、ずっと男女関係を我慢していた人間にとって、パートナーが現れたら、多少の困難があっても飛び込んでいくものです。
物語ラストでは、彼女がずっと抑圧していたものが解放されます。
唇を読める彼女の映画「リード・マイ・リップス」は、誰の唇を読んで欲しいのか。肉欲の海におぼれる、というセリフが2回はでてくるのもポイントです。
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