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この生活の先にある恐怖「レベル16 服従の少女たち」感想紹介

公  開:2018年
監  督:ダニシュカ・エスターハジー
上映時間:102分
ジャンル:SF/スリラー
見どころ:カードキーのまさかの使い方

一定の年齢の人たちが集められて共同生活を送る。

学校という制度はえてしてそういうものですが、これが、生まれてからずっと、地下で生活をさせられ、規則正しい生活をしながらも、その目的はよくわからない

自由はないかもしれないけれど、外界からは守られているディストピア

映画「レベル16 服従の少女たち」は、年頃の少女が、レベル16という呼ばれる段階になると、養子にでて、素晴らしい家族に囲まれて過ごす、と信じながら、地下で暮らす状況を描いた作品です。

本作品は、そんな地下で暮らす生活に何一つ疑問を抱いていない少女たちと、毎日飲まされるビタミン剤を飲まなかった結果、地下の暮らしの異常さが浮き彫りになっていくホラーテイストで進んでいく物語となっています。

「レベル16」に限らず、檻の中で生きる人間がどのような行動を起こすのか、という作品は、その理由がわからないところに面白さがある為、まるっきり情報を入れないで見たい人は、ぜひ、ご覧になってからと思いますが、物語の方向性を知りながら、内容によっては、見てみたいという人に向けて、軽く紹介してみたいと思います。


ディストピア

さて、謎の団体によって運営させられている寄宿舎学校のような場所で暮らす子供たちを描き、その後も含めて描かれた漫画作品といえば「約束のネバーランド」が有名ではないでしょうか。

正直言いますと、「レベル16」という設定に面白さを感じた人は、ぜひ「約束のネバーランド」をみてもらいたいと思います。

優秀な子供たちが生活する寄宿舎学校。

最高学年になった主人公は、いつ養子にだされるともわからない状況ではあったものの、偶然養子に出た子供たちの行先を知ってしまいます。

これはネタバレでもなんでもないので書きますと、子供たちが生活していた場所は、人間を育てる為の牧場のようなところであり、鬼と呼ばれるものに差し出す人間を生育させる場所だったのだ、というところが明らかになります。

そこからは、優秀な子供たちが、管理側に気づかれないように、いろいろな手を使って、脱出方法を考えていく、という内容になります。

「レベル16」もまた、何かがおかしいということに気づいた主人公たちが、どうにかして脱出しようとする内容となっています。

憧れと恐怖

さらに一歩ネタバレに近づいた内容を書きます。

もし、「レベル16」の動機となる部分が面白いと感じた方は、「ゲット・アウト」をお勧めしたいところです。

「ゲット・アウト」は、白人女性が、ボーイフレンドの黒人男性を実家に連れていくところから始まります。

親切な人たちですが、何かがおかしい。

彼らの目的は果たして何か。

人間というのは、いつまでも全盛期の肉体を維持できるわけではありません。
ですが、それを、何等かの裏技でどうにかしようと思うのは、物語世界においては、お金もちが多いものです。

その思想の根底には、お金があれば、何でもできる、という幻想に基づいているのですが、物語においては、その異形の願いが、物語の最大の動機になったりします。

世界から抜け出せ

限られた空間で、限られた教育を受けた人間はどのようになってしまうのか。

従順のその世界で生活する一方で、主人公となる人物の自然な考えとして、その不自由な空間から抜け出して、外に出たい、と思うが人間というものでしょう。

そんな衝動をより感じたいという方は、ギリシャ映画である「籠の中の乙女」をお勧めいたします。

「レベル16」でも、作中において映画はでてきますが、映画の使い方と、主人公が外に出ようとする動機がマッチしている「籠の中の乙女」は、一歩抜きんでているところです。

家族だけで暮らす一家を描いており、家族の中での異常な関係を描きます。

ただ、長女である主人公は、外の世界への憧れを抱くのです。

それは、外部の人間が見せてくれた映画。
ロッキーを見てみたりして、外にでる反骨心を養うのです。

映画というのは、映画の中のキャラクターの動機付けにもなっているという点で、物語が誰かを救う原動力になることを教えてくれる作品ともなっています。

生きる力

ちょっと雰囲気は変わりますがが、「ルーム」という映画は、7年間監禁された女性と、監禁された最中に生まれてしまった子供が描かれます。

社会から隔絶されていた女性は、外という世界に恐怖しますが、何もしらない息子は、余りにまぶしい外の世界を受け入れるのです。

外の世界はどうなっているのかを知らされずに生きる、という点においては、映画「アンダーグラウンド」は傑作です。

第二次世界大戦の最中、地下に避難した人たちを助ける主人公。しかし、戦争が終わったあとも、彼らにそのことを伝えず、長い年月が過ぎていて、という話ですが、人間賛歌に溢れた素晴らしい作品です。

物語も、様々な描き方がありますが、「レベル16 服従の少女たち」は、時間も短く、そういった映画のエッセンスは入っている作品となっていますので、ぜひ、この作品から様々な作品への興味を広げてもらえればと思います。


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