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死体の花嫁は踊る「ティム・バートンのコープスブライド」

公  開:2005年
監  督:ティム・バートン
上映時間:76分
ジャンル:ミュージカル/ストップモーションアニメ
見どころ:オープニング

骨になっても愛犬は可愛いメ~

婚姻の誓いを宣言し、近くにあった木に指輪を入れると、それは、死体だった

結婚できないまま殺されてしまった美女は、その誓いを受け入れ、その青年と結婚しようとする。

ティム・バートン監督による「ティム・バートンのコープスブライド」は、その見た目の異様さと、ストップモーションアニメという非常に手間のかかる方法によって作られている作品です。

物語そのものは単純なものとなっていまして、成り上がりの一家が、没落貴族と婚姻関係を結ぶことによって、お互いの家をよくするために、子供たちを犠牲にする、というところから始まります。

顔も見たことない婚約者と会うわけですが、二人ともまんざらでもない。

主人公のヴィクターは、結婚式のリハーサルがうまくいかず、誰もいないところで一人練習したりするのですが、たんに気持ちの整理がついていない若者です。

成り上がりの両親とは違って、蝶を観察して絵をかいたりする、ナイーブな主人公となっています。

一方で、没落貴族の娘であるヴィクトリアも、両親とは違って優しい娘であり、ピアノが弾けるヴィクターに対して好意を持ち、本来であれば、何事もなく進む縁談だったわけですが、そこに、死体の花嫁であるエミリーが登場することによって、ドタバタが始まるのです。

主人公がヴィクターという冴えない男の成長物語なのかと思いきや、実際は、エミリーという結婚できずに死んでしまった女性の精神的な成長を描いているところがポイントです。

自分の幸せの為に偶然とはいえ、結婚指輪をはめてくれた男を、顔や身体の一部が腐ってしまっているエミリーが、なんとかしてものにしようと頑張ります。

結果として、死者の世界と、生者が描かれます。

面白いのは、死者の世界の方が色鮮やかで、楽しそうっていうことです。

現実の方が薄暗く、くすんでいます。

「みんないつか死ぬけど、そう悪いものじゃない。隠れても祈っても、最後に残るのは骨だけさ」

家族よりも、亡霊たちのほうが人情深いし、自由に生きている。

家というものに縛られたヴィクターと、ヴィクトリアは、それぞれ自分の意志で行動するようになっていきます。

そして、本当の主役である死体の花嫁ことエミリーは、かつて生きていたころに縛られていたものから解き放たれて、自由を手に入れます。

ストップモーションアニメとしては長いですが、映画としては76分という短い本作です。

ですが、人形たちの愛嬌といい、作品の美しさも含めて、一度は見ておきたい作品となっています。

死者の世界を描くアニメ作品としては、「リメンバー・ミー」を思い出す人もいると思います。

いずれにしても、死が暗くて怖いものという考えではなく、そう悪いものではない、と思わせてくれるのです。

ストップモーションアニメが気に入った方は、「コララインとボタンの魔女」も参考にみてもらいたいところだったりします。
こちらも、現実とは違う世界が描かれた作品です。


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