【映画の余韻】英国王のスピーチ

※ネタバレしています。

逃げずに向き合う辛さ。
平和の危機に瀕している国家を背負って役割を果たすには、自らの吃音が最大のネック。王権対象者教育を受けていないのに突如王とされてしまった相当のプレッシャーと直らぬ吃音の狭間で、不安と苛立ちに押し潰されそうになりながらも、逃げずにコンプレックスに立ち向かおうとする姿に引き込まれた。コリンファースは、頼りなさげでも骨がある役が似合う。言語系のハードルを克服しようとする役柄は、ラブアクチュアリーとも繋がっていると思った。
ヘレナボダムカーターはアリスインワンダーランドの女王役とは異なり、大胆さと優しさで夫をフォローする、全く違う性格の王妃。夫のために医者でもない平民のセラピストを探し当て、出向いて治療の交渉。絶大な支持を誇るエリザベス2世はこのご両親の血を引いていると思うと感慨深かった。
ウォリスの嫌われようがわからず調べてみると、ただ離婚歴があり浪費家なだけでなく、イギリス王室に避けられたことに目をつけたヒトラーの思惑で言い寄られ、ナチス政権のスパイをしていた可能性もあるらしい。
王室の世間体を気にする風潮から、利き手や足を矯正されたりしているうちに、吃音になってしまったとは皮肉だった。
機嫌を取ってくれるスタッフばかりの中で、身分が違っても対等に率直に接してくれる、ライオネルという心の拠り所があった上での今のイギリスなのね。
史実なのにテーマ性があって楽しめる作品だった。

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