【映画の余韻】アリー スター誕生

思いやりに満ちた恋愛ゆえに大泣き
※ネタバレしています

IMAXで鑑賞した事もあり、歌唱シーンの音質や臨場感はもちろん、ブラッドリークーパーの微細な表情の演技に心を揺さぶられ、悲しくて悲しくて大泣きしました。

ストーリー構成ではなく、気持ちに寄り添う作品です。

レディーガガも言わずもがなとにかく歌がうまくて、ビジュアルやスタイル抜群ではないところが、この作品での素人のアリーからの変化の過程を演じるのにピッタリ。アリーとジャック2人の大切な曲shallowは少しポーカーフェイスっぽい旋律もあり。

どん底でもダメ女でもない、標準的な生活を送る普通の子が、千載一遇のチャンスを得て、でも成功と引き換えに犠牲を払ったのが恋人であり夫であるジャックとの時間。

元々好きなブラッドリークーパーが監督初!しかも主演!ところが、面影を残さないほどむさくるしいジャック姿で、ほんとにブラッドリークーパー?!と思うほど。しかし、顔の大半が髭に覆われていても、ジャックの感情がひしひしと伝わってくる演技力。そのため、殆どジャックの気持ちでどっぷりと感情移入しながら観ました。

愛していて大好きで、だからこそ、相手の夢を応援したい。大切で最愛の人の夢が叶っていくのを見ているのはとても喜ばしく心から応援したい一方で、夢が叶うのと引き換えに、相手との間に、時間、地理、人、多くが挟まってきて、近くにいたくも遠くになっていく。
相手の幸せを願うからこそ、寂しいから駆け上がり中のスターダムを捨てて側にいてくれ、と引き止めるのは容易くなく、生い立ちから抱えてきた孤独がより深まりお酒やドラッグに溺れることで心の痛みを癒そうとする。

ジャックは小手先の売り方に足を踏み入れさせられたアリーに賛同できない部分もあっても、常に褒める言葉を優先してアリーにかけ、見守り、常にアリーを真剣に応援していた。
たまたま下火になりつつある時期と、自らが見つけた逸材アリーの上昇期がすれ違っただけで、本人同士はずっと本質を見ていたし、気持ちまで商業的な音楽感に流される事なく、真剣に愛し合っていて。

だからこそ、とても悲しい。

アリーも、心にもない事を言われない限りは、いつもジャックに寄り添う寛大な態度と優しい言葉選び。
アルコールが抜けても自分を好きなのかなと不安な気持ちはよくわかるし、傷つけようとして発したわけでない。むしろ、相手が自分を好きでないのに縛ってはいけないという優しさ。
そして、ツアーをキャンセルしてまで、ジャックとの時間を取ろうとした矢先の出来事。嘘といっても、ツアーをキャンセルする理由が、ジャックとステージに上がれないからと言うか、新しいアルバム制作のためと言うかの違い。

それなのに!お互いを必要としているのに!
お互いを大切に思うからこそ、こうなってしまった。
悲しくて堪らない結末。

音楽やアリーを商品のように扱うマネージャーの、タイミングがあまりにも悪い一言も引き金になったとは思う。だが、ジャックは常に、身を引く愛情表現をしていて、グラミー賞での失態前に既に一曲しまいこんで、アリーにいつか見つけてもらえるかもと思っていたり、一時仲違いした兄に憧れを打ち明けた事からも、しばらく消える選択の画策はしていたのだと思う。

音楽は魂を掘り起こさないと、長持ちしない。すぐに飽きられるという、ジャックが大好きなアリーを本当に案じて発した言葉。
アリーは、ジャックが亡くなることで、魂を掘り起こした歌を再び歌う。

悲しいけれど、思いやりに満ちた綺麗な恋愛で、心を揺さぶられた。ラブシーンが多いにも関わらず綺麗な印象を受ける。
最後に、サントラ買って!と言うが如く、曲の復習をさせられるけれど、ラストまで見てから聴くと更に曲が沁みてきて、また泣いてしまう。

ある人の命を失ってまでしたい事ってこの世にはほとんどないのに。ましてそれが最愛の人の命なら尚更。
でも、なかなかそれが、孤独に迷い込んだ人には届いてなかったりする。
耳が聞こえなくなろうと酒浸りでドラッグ依存であろうと、何もできなかろうと、無条件に愛してくれるアリーや兄の存在は確かにあったのに、複雑な生い立ち故に、ジャックは無条件の愛を信じる力が育まれず、心の拠り所を自分以外のどこかにいつも探して、そこに依存してしまうんだと思う。

ブラッドリークーパー、監督としても当たってよかった!!

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