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アンナチュラル

1話から10話まで各話ごとに考察しました。「アンナチュラル」とは結局私たちにどんなメッセージを送りたかったのか考えたいと思います。

まず、このドラマでは不条理な死がミコトの敵であることが1話で示される。
不条理な死とは、7話で考察したように、「生存者の罪悪感」が残る死のこと。生き残った自分と死んだ人は何によって区別されたのか、死んだ人が生きている時に何か出来なかったのかと悩まされ、生き残された人が未来に向かって歩き始めることのできない状態にさせる死のことである。
そしてこのドラマで描かれるのは、生きている人達が不条理な死にどのように立ち向かい、死に対してどのように考えるべきなのかということだ。

「三澄ミコト」
ミコトは子供の頃に不条理な死に巻き込まれ絶望を負ったことがある人物。また、1度「生存者の罪悪感」を感じたことのある人物である。しかし、「生きる」ことで絶望から脱し、不条理な死に飲み込まれないようにしている。また、彼女は「生存者の罪悪感」に囚われている人が前を向いて未来に生きていけるように法医学を通して「不条理な死」に立ち向かっている。
だから、「未来のために、、」という発言や彼女の食事シーンは意図的に描かれる。

「食事」
「食事」は「生きる」ことの象徴として描かれていると考えていいだろう。「食事」という行為は死者には行うことができない。生きている人だけが「生きるため」することができる行為である。実際、1話では

「そんな気分じゃないから。食べるんです。」

と絶望の中にいる被害者の彼女にパンをすすめたり、2話では

「絶望してる暇あるなら、うまい物食べて寝るかな。」

と発言したりしていたミコトが、最終話で「不条理な死」「生きる」ことでなく「不条理」な方法で対抗せざる得ない状況に追い込まれた時、「今日ごはんは、いらないや。」という言葉が出ている。
他の作品ではどのように食事のシーンが使われているか調べてみた。

【カルテット】
泣きながらかつ丼を食べるシーン。

「泣きながら、ごはんを食べたことがある人は生きていけます。」

というセリフ。どんなに悲しくて、絶望している状況の中でも「生きる」象徴である「食べる」ことを疎かにせず、その行為をすることができる人間は強く生きていけるという意味だ。

【Nのために】『演出家がアンナチュラルと同じ』
主人公の榮倉奈々演じる杉下は高校時代、父に家から追い出され母弟と三人で月10万の生活を強いられる。しかし母は精神病になり、仕送りの10万を装飾品につぎ込んでしまう。
それ以降杉下は食事を作って、保管用のパックに入れ、冷蔵庫が満帆の状態でないと安心できなくなる。またちょうど、その時期から

「下は見ない。上を向いて生きていく。」

と生きることに貪欲になる。
これに関しては高校時代の経験がトラウマとなっているのも、冷蔵庫にご飯を詰め込み始めた原因であるといえる。

「中堂系」
中堂は彼女を殺され犯人が捕まらないという不条理な死を経験し、「生存者の罪悪感」を感じたことがある人間。そして、彼はミコトと逆の考え方をする人物として描かれている。5話であったように、彼は「生存者の罪悪感」から抜け出せておらず、不条理な死に対して「死」という不条理な方法で立ち向かおうとしている。だから中堂には食事シーンが少ない。UDIのメンバーでBBQをしている時も彼だけ参加していないし、ミコトのご飯の誘いを断るシーンも何度かある。仲間と共に食事をするシーンが他のキャラに比べて少ない。これは意図的と考えていいだろう。
他にもミコトと中堂を対比させる演出はよくあった。5話で考察をした雪と血の対比などが挙げられる。

「ドラマアンナチュラル」
各話にテーマはあったがアンナチュラルが全話通して伝えたかったことをここにまとめたい。不幸な経験や「不条理な死」が生きている人間を絶望に追い込み、罪悪感を感じさせる。それが原因で彼らが不条理なことを起こすような人生に進んでしまうことはあってはいけない。10話の考察であったように「不条理」なことをされたからといって「不条理」なことをしていい理由にならない。
「不条理」に飲み込まれず、「未来に向かって必死に生きる」ことが私たちにとって1番大切であるというメッセージに感じられた。       アンナチュラルでは、ミコトがそれを具現化したキャラとして描かれている。
また、対照的な考え方を持つ人間として中堂という人物も描かれる。
現実的に考えると中堂の方がある意味感情的で人間らしい。不条理に巻き込まれ不条理なことをしてしまう。不条理なことに押しつぶされない人間の方が少ない。
そう考えるとミコトの考え方は実際の社会で生きている人間にとっては難しい。理想的にすぎない。あくまで綺麗ごとなのである。だから、ミコトだけの物語では現実味を感じないし、面白くない。中堂というキャラがいて初めてミコトの考え方が際立ち、その考え方に視聴者が共感するのだ。 
ちなみに、この構図はよく私の大好きな少年ジャンプの漫画で使われる。  


ミコトは子供の頃に不条理な死に巻き込まれ絶望を負ったことがある人物。また、1度「生存者の罪悪感」を感じたことのある人物である。しかし、「生きる」ことで絶望から脱し、不条理な死に飲み込まれないようにしている。また、彼女は「生存者の罪悪感」に囚われている人が前を向いて未来に生きていけるように法医学を通して「不条理な死」に立ち向かっている。
だから、「未来のために、、」という発言や彼女の食事シーンは意図的に描かれる。

アンナチュラル関係図

私はアンナチュラルに出会えて本当に良かったと思っています。演出や演技、脚本、音楽全てが最高でした!!!


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