見出し画像

『草の葉』 ハイセンス群像劇


ホン・サンス監督『草の葉』(2018)

韓国の映画監督の中でも世界的に評価を受ける一人であるホン・サンス監督の映画。店内、特にとあるクラシック音楽の流れるカフェでの男女の会話劇が繰り広げられて進んでいきます。ほとんどが会話劇に終わり、一般的に言われるような明確な展開、ストーリーのようなものはあまりありません。

モノクロの綺麗なショット、遊び心ある階段の上り下り、音楽の妙な効果など、これぞセンス!とばかり次々飛び出してきて、そして起伏がなくて。本当におしゃれで上手で素敵なフランス映画っぽい感じで、鑑賞後のトークでもエリック・ロメールと似てるとよく言われる、との言及がありました。
驚いたのは撮影期間が3日だったらしいということ!!短い撮影期間といえば『リトル・ショップ・オブ・ホラーズ』は2日だったそうですが、それ並みのスピードでこの洒落っぷり。これは凄い。

まずキム・ミニさんがとにかく素敵!会話を店の中から盗み聞きし、必死にキーボードを打ってるキム・ミニさんが、何か人々から浮いた存在として怪しい魅力を放っています。監督の愛人でもある彼女、人から少し上にいる観測者然としてるのに、厄介な男を避けてガラス越しにそいつへ当て付けのように振る舞ったり、急にブチギレたりとってもキュートです。タバコ吸うシーンなどもキマリまくり。

またそのなんてことない人々の群像の中に自殺と言う言葉が何度も出てきて、特にフォーカスして深堀りされることもない登場人物、世界に奥行きが生まれていました。死を感じさせるのはホン・サンス監督でも少なく、また演者の私生活に関わるエピソードなどがあり入ってきているそうで。『川沿いのホテル』ではより死に傾いているそうで。これは京都シネマで3/18(木)16:15からやるみたいです!

正直に言うと自分は、フランス映画は今のところゴダール(入れてよければブニュエルも)ぐらいしか受け付けられず、ジム・ジャームッシュもウォン・カーウァイも怖くて仕方ないという、洒落から壊滅的にかけ離れた人間でして。自分はホン・サンス監督映画は初めてでしたが、「うわ〜〜眩しい〜〜もうやめて〜〜」ってなってしまいました。
始まってすぐのシューベルトをバックにしてカフェで行われる男女の劇作的な会話、絶叫からしてもう自分にはちょっと…会話中のパンやズームも、ひええっそんなっ、となり。こうして冴えない私は『リトル・ショップ・オブ・ホラーズ』に逃げ込み、ウッヒョ〜とか言っているのでした。

(文:松澤)

参考:

第19回東京フィルメックス https://filmex.jp/2018/

出町座3/15 3/15(日)『草の葉』20:50の回アフタートーク 市山尚三さん イ・ファンミさん

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?